2019年09月

すずなりブロッコリー

さあてと、土の準備は整ったし何を植えましょうか。
野菜苗売り場を物色していたら「すずなりブロッコリー」なるものを発見。これだ!となりまして、他にワケギとジャンボエンドウを購入しました。



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パパッと植え付け完了。



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今年の冬はいつもの冬より料理のレパートリーが広がる気がして。



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穏やかな陽射しが続き、花たちも元気いっぱい秋の庭。


というわけで、今朝の出囃子は意気揚々とこの曲で。




アマテラスの御加護に感謝しつつ調子に乗って、いい気になっている庭の猿田彦。
Come Together!ここらで一発やろうじゃないか、俺と一緒に。




 

庭の法則

憧れに紛れ込めば整う。



ハツユキソウに紛れるモンシロチョウ。

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リッチを目指すならサロンへ行き、健全さを保ちたいなら健やかな人と付き合い、美しくありたいなら住まいを美しくし、幸福を望むなら花咲く庭へ紛れて擬態せよ。さすればそのうち違和なく周囲の仲間入り。
意識せずとも周辺環境に馴染んでゆくこの不思議な現象は、細胞が持つ性質なり。無個性で出現した細胞は、周囲が脳なら脳細胞に、神経であれば神経細胞に、皮膚なら皮膚の細胞として機能し始めるそうな。
であれば口を閉じて、自らの足で理想の世界に近寄り入ってゆくことが理想実現の早道なのであります。
あなたが思う理想の庭への道案内なら、猿田彦いわふちにおまかせあれ。







 

徐々に秋

里山は徐々に秋の色。



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エノコログサ



アマテラスよ、里の民も動植物も、そして不肖私めも、道を違わぬよう日々あなた様の御沙汰である季節の移ろいを感じ取りながら、懸命に、真面目に働いておりますゆえ、遅い潮風台風は何卒ご容赦のほどを。



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サクラ



昨年のような仕打ちはこりごりです。



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イネ



千葉の家屋被害はあったものの、令和元年は、春、梅雨、夏と、季節ごとに概ね穏やかな空模様。
どうかこのまま色濃く秋が深まりますように。次の設計も感動的に仕上がりますように。いや、それよりも、山梨の少女を無事にお返し下さいアマテラス、お願いですから。



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ハナミズキ



祈ること、願うことは、無力な猿に唯一与えられた造物主への伝言板。実際、窮地に立ったら他に何もできないですからね。
昨日ご来店のお客様が「邪気を祓い運気を上げるために、塩を肌身離さず持ち歩いてください」と。あのお方は唐突に、なぜそのようなことをぼくに告げたのでしょう。あ、いや、変な人じゃないんですよ、とてもいい感じの、清らかな笑顔の、日々庭を楽しんで暮らしている方でしたから。
もしやアマテラスが遣わしメッセンジャーか。きっとそうだ、そうに違いないと確信し、少女の無事を願ってさっそくそのように致しました。



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クリ



日中の小春日和にマツムシが盛り返してきたにぎやかな庭にて、畏れ多くも注文の多いサピエンス。南無天照大御神、何卒何卒。今日も季節を感じ取りながら、懸命に働きますゆえ。





 

庭を楽しむ

昨日ご来店の奥様、曰く「庭が雑草だらけでどうしたらいいかしら」。最初は芝生の庭だったのが、仕事と子育てを頑張って、ようやくお孫さんが遊びに来る年代になって、ふと気づいたら芝生は見当たらず、そこは雑草のジャングルに成り果てていたとのこと。・・・よくあることです。



人生楽しんだ者勝ち。
花から花へと飛び回るホバーリング名人
オオスカシバの姿を追っていると、
人間どもよ、何でわざわざそんなあったりまえのことを言っておるのだ、
と鼻で笑われそうな気がします。
生物は快楽を動機に動くシステムで生存し共生しているわけですから、
ヒトもそれに従い楽しんで暮らすことが自然体。

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まずは雑草対策の選択肢、コンクリート、人工芝、砂利、タイル、レンガなどを提案しましたが、どうも納得いかないご様子。そうか、やっぱりね、「雑草をどうにかしたい」というのは相談の取っ掛かりで、実はそこを楽しい庭にしたいのだと(具体的ではなく無意識レベルではありますが)、これもまたよくあることなので提案の方針を変え、「過ごす庭」「野菜づくり」「庭で朝食」「お孫さんと遊ぶ」「庭を書斎にする」などのプラス方向へイメージが広がる話をしたところ、「 えー、びっくり!庭を楽しむなんて考えたこともなかった。庭を楽しむ、なあるほどねえ」と半ば悲鳴のような歓喜の反応。



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困りごとの相談といった表情で来店された奥様の目からウロコがハラハラと、そしてワクワク顔へ。ふふふ、ご新造さんへ、女将さんへ、お富さんへ、いやさお客様、これで今夜も美味しいビールがいただけまする〜〜〜。



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奥様は感心しきりで、「そっかあ、庭を楽しむねえ。ははは、おっかしい、庭を楽しむって何で気がつかなかったんでしょう。庭を楽しむかあ、庭を楽しむ、庭を楽しむ」と繰り返しながら、スキップを踏まんばかりの足取りで帰って行かれました。



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庭を楽しむ、ぼくとしては仕事の大前提であり当然至極の事柄なれど、一般的にはそんなふうに捉えたことがない人が多いのかなあ。何だか不思議な気がしつつ、もしもそうであるならもっと一般に近づいて、「意外に思われるかもしれませんが、庭って楽しむ場所なんですよ」というようなアプローチも必要なのかもしれませんねえ。



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苦痛から遠ざかり楽しさへ動く、神が創りしこの快楽動機システムに従って組み立てれば、ずべての庭は楽園になります。




 

ガーデンセラピー

夢中で食らう

野生の本能である生存の技術、フェイト or フライト(闘争か逃走か)。
闘争するすべを持たない蝶は常にフライトを選択するのです。



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一体何があったのか、あるいは老いの病なのか、傷ついた翼の蝶が夢中で蜜を吸っていました。



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その姿を感傷的に鑑賞するのはぼくらホモ・サピエンスの悪いくせ。当人は過去の恐怖も未来の不安もなく、アマテラスが用意してくれた甘露に歓喜して、嬉々として花から花へ。



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散歩道に降ってきた神託は、「夢中で食らいつけ」なり。



Flight!

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木曽路はすべて山の中とは島崎藤村。夢中になれば夢の中、夢の中へ、夢の中へ。負のトルネードスパイラルに巻かれて落ちてしまわぬように。


相も変わらず、愛も変わらず目の前には仕事の山。とでもこれも仕上がりが楽しみなものばかりなれど、丁寧に、丹念に、順番に、目の前の庭に Fight を持って夢中で取り組んでおりますゆえ、お待ちの皆様におかれましては首を長くしつつも気長に長い目で、今しばらくのご辛抱&ご容赦を。



 

庭の休日

晴天、葉を揺らす江ノ島からの風、ちらほらとバラが咲き、メドウセージはボリュームを増し、犬はよろこび庭かけまわる。



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今日は芝生の雑草見当たらず、刈るのは来週といった伸び具合なので、さて、では、買っておいた野菜の苗を植えましょうか。



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シーツの洗濯が終わったらフェンスに干して、それが済んだら庭で靴磨き、包丁研ぎ、散歩道で拾ってきた銀杏の処理。



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早朝のビールから始まる極上の休日。
ここがプロヴァンスか、ウブドか、もう少し手近に勝浦の別荘だと妄想するのはいとも簡単なこと。



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今更ながら、庭。





 



 

ハナニラ?

散歩道にハナニラを発見。
ん、まてよ、ハナニラは確か桜吹雪の中で咲いていた気が・・・「まあいっか、きっと四季咲きタイプなのだろう」と結論を出して撮影していたら、通りがかりの、横浜ではついぞ見かけない深く腰の曲がったおばあさんが「今年も玉すだれが咲いたねえ。誰も世話していないのに、お彼岸になると毎年ここに出てくる。すっかり顔なじみですよ」と声をかけてきて、ぼくが言葉を返す間も無くそのまま前のめりに歩いて行かれました。



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ほほう、タマスダレって言うのか。帰宅して調べてみたらやはりタマスダレで、ハナニラとそっくりなため、ぼくと同じく「秋にも咲くんだ」と思っている人が多いとのこと。



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ヒガンバナ科の球根草(多年草)。葉や茎にリコリンというアルカロイド成分を含み、食べると嘔吐や痙攣を起こす。ノビルと間違えやすいので要注意。



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物騒な性質に似合わず、花言葉は「汚れなき愛」「期待」「便りがある」などロマンティークな恋の予感。あ、やっぱり物騒か。



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タマスダレと聞いて瞬時に南京玉すだれの口上が浮かぶのは、きっとぼくと同年輩が最後ですよね。




 

花劇場で観劇し感激す

出勤途中、曇りのち雨の予報に反して朝日が眩しかったので、回り道して水辺の散歩コースへ。
カレンダー通りに始まっていましたヒガンバナ。
5日前に来た時には気配もなかったのに、毎度のことながらのニョキニョキぶりに驚かされます。



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主役の登場に、他の花たちも活気付いている様子。



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朝から華やかな花劇場を歩き、気分は上々となりました。



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ふと思いついた寄り道にて感動のひと時を味わい、なにごとのおわしますかは知らねども、かたじけなきことでござ候。

体調や天気の具合や周辺の出来事などで気分がすぐれない日ってありますよね。上昇下降を繰り返すバイオリズムは我々脳が肥大化してしまった猿に特有の症状であると言えます。その揺らぎをいかにして小さくするか、ことに落ち込みを浅くし早めに平均値(平常心)へと引っ張りあげるには自然を感じることが何より有効。なぜなら自然にはバイオリズムなどというものはなく、雄大に水平を保ちなが流れる大河のごときもので、その岸辺に行けば、自ずと乱れた脳波がその大きな流れが発する波動に同調し、健全な状態へとリカバリーされるからです。
庭は大河の岸辺、自然の端っこ。だから日々庭を楽しむ人の心はいつも穏やかで、表情は柔らか。庭ですよ庭、いい庭があれば日々是好日なり。






家族の庭のつくり方 76

よその庭を楽しむ

散歩中や旅先ですてきな庭を見つけたら、立ち止まってその魅力の理由を探し出してください。



石井邸

石井邸


瀧本邸

滝本邸


中川邸

中川邸



美しさには訳がある。



門馬邸

門馬邸


中山邸

中山邸


後藤邸

後藤邸



植物、仕立て方、楽しみ方、庭の魅力は千差万別。
よその庭を楽しむことは、自宅の庭を活気付かせる何よりの刺激になります。





ジョバンニの庭

今日9月21日は宮沢賢治の命日なので、オマージュとして、以前このブログに書いた『ジョバンニの庭』をもう一度なぞってみようと思います。
誰にも評価されないまま傍目には不遇であった37年の人生なれど、わりとご本人の心は幸福であったのではないかと。不遇がゆえの幸福は最上級の幸福、という意味も含めてですが。
賢治は森に住む小動物のように、何度も雨に負け、風に負け、暗い洞穴で嵐が去るまで震えて過ごし、安住のイーハトーブへはとうとうたどり着けないままに、最後はよだかとなって舞い上がり、天空の星になりましたとさ。


『ジョバンニの庭』

前編

ではみなさんは、そういうふうに川だと言われたり。乳が流れた跡だと言われたりしていたこの白いものが、本当は何かご存知ですか。



宮沢賢治の物語には頻繁に鳥や小動物が出てきます。
ことに鳥は、70種類以上登場しているそうです。
彼の暮らしぶりや自然への視線が感じられますよね。
ではそういうことが当時の人たちの
スタンダードだったのかといえば、さにあらず。
当時は当時でみなさん暮らしに忙しく、
鳥に興味を持つことなど、世間から称された
木偶の坊に典型的な行為だったわけです。
ぼくはといえば、やはり同じく木偶の坊の類いなのでしょう、
森をてくてく、水辺をてくてく歩いては人心地をつく日々。
どうしたものか、仕事は溜まりっぱなしなのに、
そのてくてくを抜きにしたら設計が進まないという
ポンコツ頭のお粗末。
その最中、バートウォッチングというわけではなく、
なんとなく見つけるとパシャパシャッと撮影しています。
今年出会った野鳥は以下の通りです。

メジロ

メジロ



カンパネルラが手を上げました。それから数名も上げました。ジョバンニも手を上げようとして、急いでそのままやめました。たしかにあれがみんな星だといつか雑誌で読んだのでしたが、この頃はジョバンニはまるで毎日教室でも眠く、なんだかどんなことも、よくわからないという気持ちがするのでした。



カルガモ

カルガモ



先生は星図を指しました。

このぼんやり白い銀河を大きないい望遠鏡で見ますと、もうたくさんの小さな星に見えるのです。ですからもしもこの天の川が本当に川だと考えるなら、その一つ一つの小さな星はみんなその川の底の砂や砂利の粒にあたるわけです。またこれを大きな乳の流れと考えるなら、もっと天の川とよく似ています。つまりその星はみな、乳の中にまるで細かに浮かんでいる脂油の球にもあたるのです。
そんなら何がその川の水に当たるかといいますと、それは真空という光をある速さで伝えるもので、太陽や地球もやっぱりその中に浮かんでいるのです。つまり私供も天の川の中に棲んでいるわけです。そしてその天の川の水の中から四方を見ると、ちょうど水が深いほど青く見えるように、天の川の底の深く遠いところほど星がたくさん集まって見え、従って白くぼんやり見えるのです。
はい、では今日はここまでにして、続きは次の理科の時間にお話しします。今日は銀河のお祭りですから、みなさんは外へ出て、よく空をごらんなさい。



キジバト

キジバト



ジョバンニは銀河祭りにはいかず、いつもの植木屋に立ち寄って畑に並ぶ庭木の形を整える手伝いをしました。少しお金がもらえたし、将来は庭をつくる職人になりたかったのです。
作業を終えたジョバンニは走って家へ帰り、具合が悪くて長く寝込んでいるお母さんのために、今度は牛乳屋へとお使いに出かけます。他の子たちがはしゃいで駆け回っているのを横目で見ながら祭りの場所を通り過ぎ、少し汗をかいたので、丘の上の草むらに寝転がって天の川を見上げました。

なぜみんながぼくをからかうんだろうか。遠くの海に漁に出ているお父さんのことを刑務所に入れられているんだと言うし、お父さんが買ってきてくれるって約束したラッコの上着のことも、みんなが囃し立てる。いじめっ子のナゼリなんか、走る時はネズミみたいなくせして、みんなの前ではいつもぼくをばかにする。でもカンパネルラは違う。みんなには何もそういうことを言わないけれど、ぼくをからかったりいじめたりはしない、カンパネルラだけは。



コサギ

コサギ



ジョバンニは先生の話を思い出して、こんなことを考えていました。

天の川の星々も、太陽も月もぼくらの星も、真空の中に浮かんでいる。ぼくたち人間は小さな球の上で眠って、起きて、そして働いて、ときどき火星に仲間を欲しがったりする。火星人は小さな球の上で何をしているのかぼくは知らない。でもときどき地球に仲間を欲しがったりする。万有引力とは引き合う孤独の力なんだと思う。宇宙は歪んでいるから、みんなは求め合う。みんな不安だから、ひとりではいたくないんだ。

二十億光年の孤独に、ジョバンニは思わずくしゃみをしました。

お父さんもきっと孤独なんだと思う。お母さんも、カンパネルラも、真空の中で孤独だから孤独なぼくによくしてくれるんだ。きっとそうだ。



シジュウカラ

シジュウカラ



遠くの空で汽笛が鳴りました。銀河祭りの空から汽車がみるみる近づいてきて、ジョバンニの前で停車しました。一瞬、家で待っているお母さんのことを思いましたが、とても不思議な引力のような力に引っ張られて乗り込みました。
車内は空いていて、黒い別珍の座席に腰掛けると、同じ車両にカンパネルラの姿を見つけたのです。ジョバンニはほっとして、うれしくなって、二人が夢中で話している間にまた汽笛が鳴り、車掌が吹く笛の音を合図に汽車は銀河に向かって動き出しました。



ツグミ

ツグミ



とても長いような、短いような、時間のことがよくわからない汽車の旅で、不思議な鳥捕りの人や船で遭難した人たちに出会い、いろんな人生と、その終わりのことも知りました。そしてジョバンニは、本当の幸いってなんだろうかとそのことばかりを考えるようになり、この夢の中にいるような出来事を、それを探す旅にしようと決めたのです。
決心をとなりに座っているカンパネルラに打ち明けました。

カンパネルラ、ぼくはみんなの、お父さん、お母さん、友だち、いじめっ子のナゼリ、そしてぼくたち、みんなの本当の幸いを探しに行こうと思う。

それはいいことだね。

よかった、カンパネルラがそう言ってくれるなら勇気が出る。カンパネルラ、ぼくと一緒に白鳥座もさそり座もわし座も越えて、どこまでもどこまでも一緒に行ってくれるかい。

もちろん。


カンパネルラは約束してくれました。



ヒヨドリ

ヒヨドリ



孤独と孤独が引き合って、孤独な星から孤独な真空の空へのこの旅は、いったいどこへと向かうのでしょう。はい、では今日はここまでにして、続きは次の理科の時間にお話しします。今日は銀河のお祭りですからみなさんは外へ出て、よく空をごらんなさい。



カワセミ

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厚い雲に蓋をされている夜の庭で、晴れていても横浜では見ることができない天の川の方向を見上げて、二十億光年の孤独に、ぼくは思わずくしゃみをした。
あ、遠くの空で汽笛が鳴ったような。



後編

空の穴だよ。

カンパネルラは天の川のひと所を指差しました。ジョバンニはそっちを見てギクッとしてしまいました。そこには大きな真っ暗な穴が口を開けていたのです。



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ぼく、もう、あんな大きな闇の中だって怖くない。きっとみんなの本当の幸いを探しに行く。
カンパネルラ、どこまでもどこまでも、ぼくたち、一緒に行こうね。

きっと行くよ。
あ、あそこの野原を見て、なんてきれいなんだろう。みんな集まっているよ「ハルレヤ、ハルレヤ」って。きっとあそこが本当の天上なんだ。ほらほら見て、母さんもいるよ。


ジョバンニはそっちを見ましたが、うすぼんやり白く煙っているだけで、カンパネルラが言ったよに思われませんでした。なんとも言えず不安なようなさびしい気持がして、しばらくそっちをぼんやり見ていましたが、再び決心を言葉にしました。



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カンパネルラ、ぼくたち、どこまでも一緒に行こうね。

振り返って見ると、もうそこにはカンパネルラの姿はありませんでした。

カンパネルラ!

ジョバンニは、まるで鉄砲玉のように立ち上がりました。何が起こったのかを悟り、誰にも聞こえないように窓の外へ身を乗り出して、力いっぱい激しく名前を叫びながら、もう喉いっぱいに泣きました。そうしてから一人きりになった黒い別珍の腰掛けにへたり込んで、泣き続けました。

ひっ、くくっ・・・



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何を泣いているんだい。

その時そばに、黒い帽子をかぶった車掌がやさしく笑っていました。

わかるよ、友だちがどこかへいなくなったんだろう。あの人はね、遠くへ行ってしまったんだ。だからもういくら泣いたって無駄なんだよ。

でも、ぼく、カンパネルラとどこまでも一緒に行こうって約束したんです。

そうか、誰でもそう考えるだろうけども、でも誰も一緒には行けないんだ。
いいかい、よく聞いて。みんながカンパネルラだ。だからきみはさっき考えたように、あらゆる人の一番の幸いを探し出して、そこへ行きなさい。そこでならカンパネルラと、いつまでも一緒だよ。




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ああ、ああ、そうなんだね。なら、ぼくはきっとそうします。
でもそれを見つけるには、あらゆる人の一番の幸いを見つめるにはどうしたらいいんでしょう。


きみはきみの切符をしっかりと持ちなさい。そうして一心に励まなければならない。
たしか庭師になりたいって言ってただろ。きみは、庭が人々を幸せにする場所だって知っているよね。きみはそれを疑わない。何度も何度も見てきたように、本当にそうなんだから。けれども多くの人はそんなふうには思っていなくて、たくさんの庭が未だ息を潜めたままだ。


外にグレシオスの鎖が見えました。

今みんなが、自分の家の庭こそ本当の庭だと言うだろう。こんなもんだよと、これでいいんだよと。けど、もしもきみが懸命に仕事をして、本当の考えと嘘の考えを分けることができたら、そのことを人々に示すことができたら、きみのその庭への思いはもうごく当たり前のことになる。その鎖を解くのは簡単ではないだろう。だがそれをやり遂げることが、きみが持っている、特別なチケットの意味なんだ。



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その時、真っ暗な地平線の向こうからサウザンクロスに向かって青白い狼煙が打ち上がり、汽車の中がぱあっと明るくなりました。

あっ、あれは大マゼラン雲だ。なんて美しいんだろう。

さ、切符を持っておいで。この夢の鉄道は、やがて本当の世界の線路につながる。きみはどこまでもその気持ちのままで進むのだよ。

はい。ぼくはきっとぼくのために、お母さんのために、カンパネルラのために、ザネリのためにも、本当の、本当の幸いをさがします。




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ジョバンニは唇を少し噛んで、清々しい顔で立ち上がりました。
いつも頭の中に思い描いてきた、胸の内に抱きしめていた、そこにゆけばどんなことも叶うという、しかしまだはるかな先に光っているM78星雲の方角を見つめて。



ぼくは賢治よりも随分と長生きをしています。
宮沢賢治 37歳、太宰治 38歳、芥川龍之介 35歳、石川啄木 26歳、金子みすず 26歳、小林多喜二 29歳、樋口一葉 24歳、中原中也 30歳・・・教科書に出てくる文豪という印象とは裏腹に、実際はなかなか実らぬ未熟さの苦悩の中にあって、それでもひと夏に情熱を燃え上がらせた、陽炎のような生涯でした。
夜の庭にて、時々は悩み多き若者たちが命を賭して時代に残した引っかき傷のかさぶたを、そおっと剥がしてみるのです。








 

そろそろ曼珠沙華

盛大に蜜を供給したトラノオが、ゆっくりとフェードアウトしてゆきます。



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次の主役は曼珠沙華。



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平年並みなら来週、台風一過のフェードイン。





 
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