2021年11月

ソクラテスと木偶の坊

古代ギリシャに由来する三段論法の代表的な言い回しです。

1(大前提)ソクラテスは人間である。
2(小前提)全ての人間は必ず死ぬ。
3(結論)ゆえにソクラテスは必ず死ぬ。

これを使って庭の有用性を論証しようと、昨晩庭の書斎にて1時間ほどを費やしました。ダメでした。そもそも大前提が立てられない。庭は〇〇である、と言い切ることができないのであります。これが家(建物)だったら、大前提「家は安全な暮らしに不可欠な場所である」と言い切れる。次に小前提「安全とは幸福の基本である」と来て、結論は「ゆえに幸福の基本は家である」と、家の有用性をアピールすコマーシャルが出来上がるのですが。
庭は〇〇である。〇〇は「幸福な暮らしに欠かせない場所」なのか・・・そう断言できるようなことではないし、「無いと不自由する場所」でもないし、「園芸を楽しむ場所」でも「昼寝をする場所」でもない。ただしこれらはあっさりとひっくり返すこともできる。ある人には無くてはならない場所だったり、園芸を楽しむ場所だったり、昼寝をする場所だったりもする。やれやれ、へなちょこ頭には限界があるのです。



秋から冬へ、富嶽四景。
今年の仕事は実質あと3週間。
かれこれ60回、毎度のことながら・・・
焦ってもしょうがないので今日を着実に、設計設計また設計。

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いかにすれば、この概念が曖昧で、現実的にも曖昧な世界を意義ある場所として定め、庭ってどうしたらいいの?と思っている人たちにアピールできるのか。こんな風に、庭で、ある人にとってはどうでもいいことを考えて時を過ごしていること自体、庭の有用性を揺るがすのかもしれない。ただし、これまたひっくり返すことができる。どうでもいいことを考えるのに最適な場所は、リビングよりも庭なのです。次はトイレ。ひとりきりであることと、そこにいること自体が目的化しているため、すでにニッチを得て今現在の生存意義を果たしている安堵感で思考に空白が生まれ、故にリラックスできている。おまけにトイレではなく庭ならば環境は開放的だし。上空に広がっている空は軽井沢にもハワイのノースショアにもつながっていて、雲がなければそこは紛れもなく宇宙空間でもあるのだ。おお何ということか、空気の流れは地球を隅々まで何万回も巡ってきた風で、それを全身で感じている自分は奇跡に次ぐ奇跡によって存在している奇跡の命だ。



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いいぞいいぞ、思考が行き詰まっても庭にいればレジリエンス、アホはアホなりに立派なアホとして復活する。何だろう、この大いなる自己肯定感は。ははは、いいんです勘違いでも。だいたいのことは勘違いであり、ことに苦悩の多くは「悩みたがり」の勘違い癖。その証拠に、もうコロナ報道によって気が滅入る人など皆無だし、庭の捉え方に至ってはさらに顕著なる勘違いの世界です。世の中には庭を楽しむ人と楽しまない人がいるわけで、庭を持っていない人の多くが庭のある暮らしに憧れているのに、庭を有する者の多くは、庭がまるで親の仇の如きストレスの源になってたりする。庭さえあればもっと幸福に暮らせるのに vs 庭さえなければもっと楽に暮らせるのに。故に苦悩は勘違い、ああ勘違い、何でそうなるの?by 萩本欽一。
では逆に、幸福に勘違いはあるでしょうか。あるかもしれないけど、ない、としておいた方がお得ですからそのように定義してしまいます。苦悩はたいがい癖か設定ミスから来る勘違いだが、幸福感は真実なのであると、繰り返しますけどその方がお得ですから。



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と、ギリシャ時代におけるイデアへと至る弁証法へのアプローチにヘナチョコにも挫折したアンポンタンがすっくと立ち直ったところで、さらに夜風を楽しみながら時間を使って、違う方法を試みることに。う〜さぶ!今宵の庭の冷え具合は今季最高。おかげで頭が冴え渡ってきた。そうか、論証の仕方が適切じゃなかったのだ。三段論法ではなくパラダイムシフト法で行ってみよう!欽ちゃんのドーンと行ってみよう!パラダイムシフト法、世界が一変する発想で。

「眺める庭」から「過ごす庭」へ。

「植物のための庭」から「人のための庭」へ。

「手入れが楽な庭」から「手入れが楽しい庭」へ。

いいぞいいぞ、これならいくらでも出てくる。

「荒れた庭」から「美しい庭」へ。

「人工芝の庭」から「花いっぱいの庭」へ。

「平面的な庭」から「立体的な庭」へ。

「ストレスの庭」から「癒しの庭」へ。

「休日だけの庭」から「毎夜の庭」へ。

やめられない止まらない。こうなったら庭から離れて日常生活全般をひっくり返してみます。

「否定」から「肯定」へ。

「求める」から「与える」へ。

「義務」から「快楽」へ。

「しかめっ面」から「ほのぼの」へ。

「生真面目」から「木偶の坊」へ。

出てくる出てくる。サラサラと溢れ出してくるこれらはつまり、期せずしてですけど、右側がぼくの自己理想像なんでしょうね。肯定的で、与えていて、快楽主義で、いつもほのぼのしている木偶の坊。いいじゃないですか、そういう人。ことにかの宮沢賢治が世に定義した『木偶の坊』という概念は、これまで何度も悩みたがりな自分を救ってくれました。ああ、清らかに凍った夜風が、この上なく・・・木偶の坊にふさわしき夜。あなたもやってみませんか、これ。あ、木偶の坊じゃなくて「〇〇」から「〇〇」へ。



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面白いなあ、ついさっきまで「ソクラテスは人間である」に相当する庭の大前提さえ掴まえられずに唸っていたのに手法を変えたら次々と。要するにですね、これが庭の有用性なのです。


ジョンは神だった。
秀才ポールはやがて神になる。
リンゴはリンゴのままで、さてジョージは?
ひとことで言うなら天使である。
肯定的で、与えていて、快楽主義で、いつもほのぼのしている木偶の坊。
明日11月29日は大天使ジョージ・ハリスンの命日です。










ロマン主義

そらみたことか、だから言わんこっちゃない。そらみたことか、そらみたことか。
そらみたことか、空見た事か、空見た事とか、空見た子とか。武田鉄矢の娘さんだったかなあ、たしか、空見子、空を見る子でクミコさんだったように記憶しています。
今朝の空は劇的でした。ターナーが描く遠景のようで、冷えた空気に気合一発!庭で過ごした30分がドラマティックな今日いち日を予見するようで。早朝からすでに今日がいい具合に仕上がったようで。
空見た子とか、空見た大人もいいスタートを切ったことでしょう。今日は設計の合間に磯子区氷取沢へ打ち合わせに行くので、静かな谷戸の住宅地から見上げる、今が盛りのコウテイダリアを撮影しようと思います。コウテイダリア、皇帝ダリア、校庭ダリア、工程ダリア、肯定ダリア。校庭で少年を見上げさせるダリアの花は、肯定的な人生の工程を予見させ、やがて少年は皇帝へと成長する、かも。
見上げる。見上げると背筋が伸びて血流が良くなり、瞳が開いて光が入り、喉も開いて空気が取り込まれ、意識は上昇するのです。
そうそう、ターナーはロマン派の画家。この場合のロマンとはラブロマンではなく「個人的な心象風景」という意味。個人的な言葉遊び、朝の空に動いたささやかな思考もロマン主義なり。


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ホモ・サピエンスの得意技

ここ半年、お客様に明らかなひとつの傾向が見えてきました。第五派のグラフが下降に転じたあたりから「庭をリニューアルしたい」、「ペンキ塗りや剪定でリフレッシュさせて、ガーデニングに夢中だった頃の暮らしを取り戻したい」という依頼が立て続いているのです。それ以前はもっと現実的というか即物的に、雑草取りを楽にするために人工芝を敷きたい、物置の設置、物干場の増設などの注文が怒濤のように寄せられて仕事的には大混乱。ようやくそれが収まって一息ついていたら、今度はもっと内面的な欲求による、物じゃなくて事、庭を楽しみたい人たちが動き出したのです。



春限定のはずのピエールが一輪、見事に咲きました。
狂い咲き?いやいや、きっと正常に気候を感じ取って花開いたのでしょう。
狂っているのは気候の方なのかもしれません。
他のバラも秋冬らしくぽつりぽつりと。
花いっぱいの年末年始をイメージして、そろそろ追肥をせねば。


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我が意を得たり。ようやくコロナ報道にストレス耐性がついたのか、あるいは苦悩の末に悟りを開いた賢者の思考でしょうか、多くの人が守るべきは家族の笑顔であり、やるべきは着実に今日を充実させる暮らし方であるという意識にまで到達したんですよね。理屈では理解していても、やはりある程度のキツさの末にしか辿り着けない幸せの玉座に、さあここらが椅子取りゲームです。とは言うものの、このゲームに敗者はいないのでご安心を。参加しさえすれば全員が座れる椅子が用意されている。問題はゲームの開催に気づくか否かだけ。



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スピリチュアル傾向のある女房殿によれば、「土の時代」が終わって「風の時代」に入ったそうです。これまでの生産重視、効率重視、権威主義から、次なる課題は真逆で、庭でのんびりと風の歌に耳を澄まし、いい風が来たら逃さず帆を張る、あるいは心の翼を広げる。昭和時代なら木偶の坊とか、レールから少々外れたヒッピーかアウトサイダーと思われたかもしれないフリーなハートの中に、本当に大切なものがあるのだと、ディランが歌っていたように、答えは風に舞っているからそれを捕まえよと、そんな時代に入ったとのこと。



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それを庭で実現するために一番大切なことは「庭は生活空間である」という認識。庭のある暮らしに憧れ、借りられるだけのローンを組んで手に入れた庭付き一戸建て。引っ越しが済んで、段ボールが片付いて新生活が動き出す。さてさて庭をどうしましょう。とりあえず雑草押さえに防草シートと人工芝で庭っぽくしておこうという若いご夫婦に、何度この話をしたことか。いいんですよ、スタートがそれでも。それはいいんだけど、よくないのはそこで一件落着してしまって、最初に抱いていた庭のある暮らしへのトキメキが消え去っているという点。何年経っても楽しんだ形跡などないままにビニール製の草が色褪せてゆく悲しさよ。



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ご近所をご覧ください、人工芝の庭に面した掃き出し窓のカーテンは必ずと言っていいほど閉まっています。せっかく思い描いていた庭を楽しむ暮らしのことなど建物の打ち合わせをしている間に消滅して、設定として「雑草が生えない庭」が理想なんだと、勘違いか、庭を厄介な場所だとしか捉えていない人たちが発信する情報によってそう思いこまされてしまう。またその話かよって言うなかれ、雑草取りが楽しい庭が理想型であるなどと言い張っているのはぼくくらいのものですけど、でもこれは譲れない。庭はもっと高度で、複雑で、建物と同等かそれ以上に、子育てや介護や、夫婦仲良く旅してゆくために有効な、生きる上で重要な意味を持つ場所なのです。



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もう(ぼくの周りに、ですが)妙に気持ちが落ちたり沈んだり、途方に暮れている者は見当たりません。テレワークが身に付き、マスク姿も板につき、庭を整え、花を育て、家族で集い、夜にはひとりの庭時間を楽しんでいる。大きくそっち方向へ、庭を楽しむ暮らしへと意識が向いて舵が切られた感じです。ヨーソロー、もう大丈夫、ひとり残らず花丸のハンコを押して差し上げる。いやほんとによく頑張りました。っていうか、もうすでに、何がキツかったのかも実感を伴っては思い起こせないことでしょう。でしょ?それでいいんです。この忘却こそがホモ・サピエンスお得意の進化方法なのですよ。悲しさも、腹立たしさも、明日への不安も、実感は風と共に去りぬ。



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さ、あとは気軽な気持ちで玉座に腰掛けるだけ。1、カーテンを開けて暮らせるようにする。2、庭との段差を解消する。3、部屋からの景色を整える。4、庭を間取りして立体的に組み立てる。5、夜の庭を楽しむ。6、、、、続きはアーカイブ『家族の庭のつくり方』へどうぞ。庭ですよ庭、庭の整備が手っ取り早いコロナからの復興なり。大切なことはいつでも庭を行く風に舞っている。そいつを捕まえておけば、第六波が来たとしてもそんなのはどこ吹く風。ちなみに、風の時代は今後250年ほど続くそうです。








月食

日食は太陽と地球の間に月が入り、月そのものが太陽を隠してしまう現象で、それに対して月食は、月と太陽の間に入った地球の影が月に落ちるものです。つまり月面からは、地球が太陽を隠す日食が見られるわけで、想像すると『ツァラトゥストラはかく語りき』が聞こえてきそうですよね。

昨夜はほぼ皆既な部分月食でした。そのピークは午後6時15分であるとのことで、昼間からワクワク。ところが仕事が長引き帰宅したのは6時で、すでに天体ショーは佳境に入っています。慌ててカメラを携え庭へ。何やらご近所が賑やかで、高台にある庭から見下ろしたら結構な人数がスマホや三脚装備のカメラを空に向けていて、ああいい感じ、「これが天体への正しい態度である」などと喜んだのもつかの間、薄雲が月を隠してしまいました。ご近所からは子どもたちの落胆の声が聞こえ、半分以上の人が帰ってゆきました。



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ふふふ、気が早いぜ子どもたちよ、この天気ならすぐに雲は切れるはず。案の定、数分でまた澄んだお月様が現れ、そこから数十分は後半のドラマです。輪郭の端っこだけだった月が徐々にボリュームを増してゆき満月に至る。その変化をファインダー越しに見つめつつ、思考は太古の人々の庭へワープしました。まだ地球は平らで、その上空に太陽と星と月が存在していると思っていたであろう縄文の人々は、突如満月が欠けてゆくという異変に心底怯えたんだろうなあと。不安がる大人たちの様子に泣き出す子どもの手を引き、洞穴に身を隠して震えていたかもしれない。しばらくしてまた光が増してゆき、元通りの満月に戻った時にはきっと安堵して、今度は大人が感謝の涙を流したことでしょう。



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夜空を見上げるって楽しいなあ。月も星も、南アフリカで猿が木から降り、未知なる草原へと旅立った頃と何も変わっていないわけで、ご先祖たちや、ぼくらが知る偉人たちは例外なく夜空の星や月を見つめては物思い、懐かしんだり、希望を抱いたり、泣き笑いして人生を過ごした。ジョンもマイケルもエルヴィスも、きっと。そういえばエルヴィスは後期のコンサートで、オープニングに必ず『ツァラトゥストラはかく語りき』を使っていたなあ。





140年ぶりという今回のような「ほぼ皆既の月食」が次に見られるのは、60年後だそうです。60年後・・・かあ・・・。




A Love Supreme Ⅱ

パラダイムシフト、あなたも過去に何度か、ガラッと世界が変わったという経験があると思います。ぼくには大きくは3回、小さい規模なら100回ほどはあったと思います。普段仕事上では、庭をリフォームしたことで世界が一変したという声を多々頂戴しましたし、それが設計のひとつのテーマにもなっています。
大きかった3回の内容は長くなるので省略して、自分自身にもう一度、せめてもう一度デカいヤツがやってこないかなあと思っていて、還暦を過ぎたらさすがに、あのフレッシュに満ちた奇跡の現象を引き起こす原資はすでに尽きてしまったのか、とか、いやいやそんなはずはない、年齢や現状などに関係なく思いもよらない感動の瞬間はやってくるのだと、いつもそんなことが頭の隅っこにこびりついているのです。
どう変わりたいのかではありません。仕事と暮らし全般において夢、理想とする到達点は、そういう思考がガーデンデザインの中核ですからお作法のように常にイメージできていて、それはそれ、そっちに向かって帆を張り歩を進めるのみ。世界が変わるとはそのイマジネーションとは違う次元の、想像を超えた夢のまた夢みたいなことなので目標ではない。例えば「恋に落ちる」というような、予想や想定している日常の外側から、まさしく世界を一変させる現象が訪れるようなあの感じ、うん、あの感じ。自分の変化ではなく、突然吹いてきた風に翼を広げたら楽々と天空へと上昇するような。
そうそう、ウインドです、ウインドサーフィンのウォータースタート。沖合いで波に揉まれて立ち泳ぎをしているところに絶好の風が入ってくる。ボードに片足を掛け、海面からセールを少し上げたらそこに入ってくる空気のボリュームによって、ほぼ自動的に体が持ち上がってボードに立ち、スタートの体勢になれたあの感じ。水中から水上に、さっきまでの不自由さから解放された瞬間に訪れる感動です。



バラ自身は何も変わらない。
バックグラウンドの光で世界が一変する。


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ジャズジャイアントのひとりジョン・コルトレーンは、その欲求、「風を捕まえる感動」を求めて生きた人でした。
貧しい地区の貧困家庭で育ちながら幸運にもクラリネットとサックスを手に入れた少年は、夢中になってそれを練習をしました。青年期には軍隊へ行き軍の楽団で研鑽を積み、退役後は当時ビバップ革命の騎手であったチャーリー・パーカーに憧れてジャズの世界へ。ライブに通い詰めるうち、パーカーに師事していた駆け出しのマイルス・デイビスと知り合い、後に第1次のマイルスバンドへ招聘されます。そこからは世界を唸らせたマイルス&コルトレーンの黄金期の到来です。ところが好事魔多しで、麻薬にのめり込んでゆくコルトレーンに愛想を尽かしたマイルスが彼をぶん殴ってバンドから追放する。しかしすでにマイルスと並び称される名声を得ていたコルトレーンは、インド音楽やワールドミュージックの影響を受けながら進化を続け、数々の名盤を発表してゆきます。



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彼の人柄は基本的にジェントルな愛されキャラなれど、とにかく探究心というかこだわりが強烈で、自他共に認める練習の鬼。中古のオンボロサックスが宝物だった少年期からマイルスバンドの黄金期、そして孤高に至る晩年までそれは変わらず、時間さえあればエレベーターの中ででも吹いていたと言われています。その探究心の強さが災してか、変化を止めない彼の音楽スタイルはジャズ好きのうるさ方からは批判されることが多く、今でもマイルスと並べては、「バラードの頃のコルトレーンは最低だった」などと言われる始末。ぼく的にはコルトレーンを批判する資格を持つ人など地球上にひとりもいないよって思っていますが。
貧しかった出自の影響か、彼は生涯一貫して、音楽は人々の幸福のためにあるし自分はそのために吹いているのだという思いが、ほんの1ミリも揺るがない人でした。その信念が生前にどれだけ開花したのかについては、何せその頃、ひょっこりひょうたん島とエイトマンに夢中だったぼくには、ビートルズ出現以前のジャズ蜜月時代の目撃者となっていないため不明です。現在から辿った当時の評価では「音楽は人々の幸福のためにある」という観点でのものは見当たらないし、常にマイルスに次ぐ2番手として語られている。やれやれ、それが事実なんだろうけど、世の評価とは気まぐれにして表面的なものなんだなあと思ったり・・・。真実はわかりませんけど。絵画であれ、演劇であれ、政治家も、文学者も、科学者も、孤高とはそういうもので、死後何年か、あるいは時代背景がすっかり変化した何十年後かにようやく当人がニヤリとできる、正当な評価を受けるものなのでしょう。



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ジョン・コルトレーン( 英語: John William Coltrane, 1926年9月23日 - 1967年7月17日 )は、アメリカ、ノースカロライナ州生まれのモダンジャズを代表するサックスプレーヤー。愛称はトレーン( Trane )。
無名時代が長く、第一線で活躍した期間は10年余りであったが、自己の音楽に満足せずに絶えず前進を続け、20世紀ジャズの巨人の中の1人となった。




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問題は、生前の彼が幸福だったのだろうか、ということです。ストーリーを読むとそうは思えないのに音を聴くと、その答えは真逆になる。「生きてるのはそれだけで辛いことなのだ。だからそんなの気にしているのは時間の無駄だよ」という前提に立っているようで。だからぼくは、ついついくよくよして無駄遣いに陥りそうになった夜には、庭でカラヴァッジオの絵を見つめコルトレーンを聴く。まあ、年に一度とか、そんな程度ですけど。そうすると「生きているのはそれだけで・・・」の前提が鮮烈に光り出します。辛くて普通なんだからそんなの気にすることじゃないよ、と。
薬と酒と音楽へのストイックさから陥った病に侵され余命宣告を受けてからの3年間、彼はそのことを周囲にも家族にも明しませんでした。風を求めて精力的にアルバムを発表し続け、そして40歳で風と共に去りました。幸せだったのか否か、幸せの定義によりますが、きっと毎日クラクラするほど幸福だったんだと、残された音を夜の庭で聴いているとそう感じるのです。ありがとうコルトレーン、最高ですよ。
ジョン・ウイリアム・コルトレーン、40。ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ、38。チャーリー・パーカー Jr、34。ちなみにマイルス・デューイ・デイビス Ⅲ、65。早かろうと遅かろうと、短かかろうと、退屈でうんざりするほど長く感じているとしても、悔いなき人生を。その人生に気の利いた庭が必要ならお声がけを。
え、ぼく?今のところ61。あなたは?
A Love Supreme.    大いなる人生を。







タイトルが『 A Love Supreme Ⅱ 』、Ⅱ が付いているのは、昨年の今頃にやはりコルトレーンのことを書いてたことに気づいたからです。
↓  ↓  ↓ 



秋が深まると聴きたくなる、ということなんですかね。


 

十年一日の如し

店で、園芸コーナーに向かう形で座り設計に集中したいたら、外から「元気?」と声が掛かりました。顔を上げたらにこやかなおじさんがこっちに手を振り笑っている。マスクをしていたこともあり、誰なのかを判別できずに立ち上がろうとしたら両手で制され、座り直したところに「少し痩せた?」と。咄嗟に「ははは、鬼女房に絞られているもんで」と返したら、「それは順調ってことだね。頑張ってよ!」と笑顔のままで去っていったのでした。誰だっけ・・・思い浮かんだのはふたりで、どちらも10年以上前のお客様です。ぼくよりもひと回り上で、とても夫婦仲のいい、奥様のためにせっせと庭仕事をこなすタイプの尊敬すべきお方。こうして声をかけていただけるありがたさたるや。ほんの一瞬の出来事に、過去の素敵な庭物語が次々と浮かんでやる気満々となって、再び設計設計また設計。
十年一日の如しなり。



ココたちがハマっているおやつ、元気ガム。
そのままだとデカすぎるため、水で一晩ふやかしてから開いて細く切り、
庭で乾燥させて出来上がり。

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干してるといい香りがするのか、
庭でうろちょろ。

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元気ガムの原材料は牛皮、
ガシガシ時間をかけてかじるので、歯がピカピカになりますよ。



ここんところ通常業務の他に、新カテゴリーの準備と、冬の店頭チラシづくりに夢中でブログのアップが途切れていました。まあいいでしょって思っていたら常連さんがご来店。

いわふちくん大丈夫?

え、大丈夫ですけど、なんで?

ブログが更新されないから具合が悪いのかと思って。

確かに、具合はここしばらく良くないんですよね、かれこれ60年ほど。

大丈夫そうね、ハハハ。よかったよかった。

気にかけてもらうって、ありがたいことです。


チラシのグラフィックは素人ですけど、
根っこが美術系なので楽しい作業です。
設計とは違う思考のため BGM も変化させて、ほろ苦いサンバで。



徹夜で試験勉強していた頃を思い出します。
もとい、勉強よりもラジオに熱中していました。
3時になったらチューニングを変えて走れ歌謡曲。




さあ、夜の庭時間までもうひと踏ん張り。今夜はしし座流星群のピークだそうな。




 

神様が降りてくる夜

ミルクを沸かしながら あたたまるのが遅くなったと
きみはいつでもぼくより先に 時の流れ季節の移り変わりを知る
静かに 静かに 夜は降りてきた 夜は降りてきた


伊豆でスキューバダイビングのショップをやっている方の情報、海底では季節がひとつ早く進んでいるそうです。冬の海藻や魚の種類から春を感じ、春には夏を、夏には秋を感じるとのこと。海の底が先導するようにして地上の四季は移ろっているのかもしれません。
人はどうでしょう。ぼくも含め多くの人が、季節に置いて行かれないように後追いをしてしまう。う〜寒くなってきたからそろそろダウンジャケットを出さなきゃ、みたいに。そして追いつけずに体調を崩す場合も多々あるわけです。
秋から冬へ、気温が下がり日照時間が短くなってゆきます。でもその分夜を長く楽しめますから、澄んだ空気に冴え冴えと浮かぶ月を眺めつつの庭時間を過ごしてみませんか。まだ全然寒くないし、風が弱い夜なら1枚羽織るくらいで大丈夫。
季節を追うか、並走するか、先回りをするのか。子どもの頃は先回りでしたよね。常に次の季節が楽しみで、夏休みが待ち遠しかったし、秋の遠足と運動会、それが終わればクリスマスのプレゼントを想像し、もういくつ寝るとお正月などと歌っていた。
そうか、先先に楽しみを置けばいいのか。そうだ、ガーデニングはそれなんだよ。いつも次の季節の花を植えて育てている。大人になっても近未来をワクワクとイメージできるのが庭なんですよねえ。っと、紺屋の白袴、そろそろビオラを植えなければ。あと咲き出したバラの追肥と芝生にも。先回りするのはなかなかいそがしいことなのです。


海底と同じく、空も季節を先行しているような。
数日前の月と金星。

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昨日一昨日と何人かのお客様が話題にしていて、ああやっぱり、
庭ずきは空にも意識が行くんだなあと思った次第。

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翌晩は霧で薄らぼんやり。

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昨夜はボリュームを増して清らかに光っておりました。

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毎夜毎夜、庭で月の変化を確認すれば、転けることなく季節と並走できるような気が。







 

衝動の正体

明け方から降り出した雨が10時には豪雨になり、昼を過ぎても雨音がバシャバシャ続いています。
港南区丸山台で庭のリニューアルの打ち合わせを終えて店に戻り、傘を閉じて、途中コンビニで買ってきた調製豆乳とネスカフェゴールドブレンドでブレンドしたソイラテ飲んでひと心地。ちょっと落ち着こうとしている自分。久しぶりの雨に刺激されて、早く家に帰って庭でビールを飲みながら、持ち帰りで仕事をしたい衝動が突き上げてきて。



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行動を管理する上司がいるわけでなく、タイムカードも存在しないのだからそうすればいいんですけど、持ち帰った仕事が捗ることは予想できないのです。庭の書斎で作業用パソコンを開いたところで、その場所でのもっと楽しい過ごし方はたくさんありますから。つまり仕事から離脱して雨音の庭で過ごしたい、それが衝動の正体であり、「持ち帰りの仕事」は自分への言い訳に他ならない。いかんいかん、お楽しみは夜まで我慢我慢。などとコーヒーブレイクしていたら、ん、雨が止んで日が射しているではないか。ああ、アマテラス社長の仰せのままに。このまま店で設計に集中いたします。



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久しぶり雨に庭は大喜びしていることでしょう。普段の水やりでは浸透しない土深くまで、毛細血管のように細い髭根のすべてにまで水分が行き渡る。時々はこういう雨が必要なり。今夜はきっと、満足した木と草花の姿を楽しめます。毛細血管、人の血管の99%は目に見えないほど細い血管網だそうな。その長さは地球を何周かするほどで、全身の細胞それぞれが手の届く位置まで血液を供給しているとのこと。血流を良くすることが健康維持の最重要課題であると、医師で医学博士の根来英之教授は言っています。



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そのために大事なことは運動と食事と入浴と早起き。血流を良好にする具体的な食材は失念してしまったので庭で復習しておきます。 運動は、今日もあちこち筋肉痛ですからまあそこそこは。早起きは万全で、おまけにその理由である「朝日を浴びてセロトニンを分泌させる」は、庭で日の出を待つ習慣だからオッケー。あとは入浴かあ。帰りにバスクリンの柚子を買ってみようかな。本当は懐かしき昭和の香りである薬用バスロマンが欲しいのですが、行きつけのストアには売っていない。っとその前に仕事仕事。オレってマジで真面目だよなあ。



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店の定位置から見上げる雨上がりの空。あ、いかん!次なる衝動が。雨粒に濡れた花を撮影しておきたい。根は真面目なんですけど、どうも移り気でいけません。気を引き締めて、グッと堪えて、設計設計また設計。
おやおやまた降ってきた。アマテラスよ、仰せのままに。



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遊びたい衝動を仕事のパワーに変化させる魔法の音楽。
難解にして甘美なポリリズムが脳をマッサージして、
仕事モードへの血流を良してくれます。



 





 

天使のささやき

猫って袋に入るのが好きですよね。
いったいどういう衝動なのか、ふと見ると引きこもってはご満悦。
ほくが毎晩、庭に引きこもるのと同じなのかもしれません。
庭にひきこもるって変な言い方ですけど、
とても開放的に引きこもれます。
日常から瞬時にして宇宙に引きこもるような。
 
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設計に熱中し過ぎて頭がキーンと鳴って、こりゃいかんとコーヒーブレイクしていた時に、その方はやってきました。

ごめんくださいませ。ちょっとお話しさせていただいてよろしいでしょうか。

初対面にも関わらず、先方は意識的にとても親しげな雰囲気を出しつつ、わざと丁寧な口調でからかっていうるような感じです。これは時々あることで楽しい展開が予想されるため、ぼくもその調子に乗ることにしました。

どうぞどうぞ、あなたのお越しを何日もお待ちしておりました。

ははは、そんなはずないですよね。すみませんアポなしで来ちゃって。いつも外からこちらを覗いては声をかけづらくて通り過ぎていました。とても近寄り難いオーラでお仕事をなさっていたから。

アッチャー、いけませんなあそういう感じを出してしまうのは。ぼく、そんなに怖い顔をしてました? 

いえいえごめんなさい、そうじゃなくって、 すごく集中されているからお邪魔かなって。

大いに反省して、今後はニヤニヤしながら定期的にレレレノレ〜と声を発しながら集中することにします。で、ご用件は?ああいんです、別に用事がなくても。さあどうぞどうぞお掛けください。

その女性はぼくより少し下で、身なりはぼくより少し上で、容姿はぼくより遥かに上を行っている、フランスかどこか、ヨーロッパの血が何%かは入っているのだろうと推察しました。

日本語がお上手ですね。

あなたは本当に変な人、じゃなかった、ええっと、ええっと、とても変わった性格をお持ちなのですね。

当意即妙、わざと来日間もない口調の演技に入るとはやはりただ者ではない。

よくハーフって思われるんですけど、私の知る限り混ざりっ気なしの日本人ですよ。親が北海道だから何代か前にロシアが入っているかもしれませんけど。

あ、失礼失礼。軽口を叩くのが数少ない趣味のひとつなものですから、どうぞお許しください。

本当におかしな方なんですね。予想以上です、ははは。

こういう会話は気分が上がる。少なくともイラついた様子で「もう雑草取りは嫌だから庭中をコンクリートにしたいんだけど、オタクは安くやってくれんの?」から始まる年季の入った男性とのやり取りに比べたら、まるで天使と会話をしているような気持ちになるのです。
天使は美しく整えられた指先でスピーディーにスマホをスクロールし、自宅の庭の様子を何枚か示してから話を続けました。

もう雑草取りは嫌だから、庭中をコンクリートにしたいんですけど。

ぎょぎょ!本気ですか? 

一瞬、わざと大袈裟にたじろいだものの、天使は天使の表情のままです。

冗談ですよ。いわふちさんのブログにハマっちゃって1年くらい読んでます。だからちょっとからかってみただけ。

やれやれ。で、その庭をどうしたいのでしょう。何かイメージしていることはありますか、庭で朝食を召し上がるとか、ターシャ・テューダーみたいに情熱のイングリッシュガーデンを仕立てるとか。

要望はひとつだけ、いわふちさんとこみたいに庭で過ごしたい。夜風を浴びながら本を読みたいんですよ。自分であれこれやってみたけど、amazon でガーデンファニチャーと庭用のテーブルライトを買って、でも無理でした。何が足りないのかを考えるよりも専門家にお願いしたほうがいいと思って。雨降りでも、台風の夜でも庭にいらっしゃるでしょ。ああいうことがしたくて我慢できなくなっちゃって。

それはそれは。時々そういう珍しいタイプの方がお越しになるます。

珍しいですか?

ええ、数的には完全にマイノリティーです。マイノリティー・・・少数派・・・神に選ばれし者たちってところですかね。これは永遠の謎なんですけど、なぜ幸福の玉座に座る人の数は常に少ないのか。座席は個々人に遍く用意されているのに大多数の人はそれが見えていないか、微かにシルエットが確認できてもなぜか目を逸らして通り過ぎてしまう。その姿は「断固として私は幸せになんかならない、なってなるものですか。うかつにそんなところへ座ったら、ひっくり返るに決まっている」と、懸命に自分を非幸福に律しているように見えたりします。

それ、とてもわかります。わたしにもそんな時期がありましたし、でもそこに長居はしなかった。きっと欲張りなんでしょうね。いく先々に座り心地のいい椅子を置いておかないと気が済まないような。欲張りの方が得ですよねえ、って思うんですけど。

です。

なんで皆さん欲張らないんでしょう。欲しがらなければ手に入らないし、欲しがればわりと簡単に手に入るのに。

そう、簡単に手に入る。欲しがらないマジョリティーは、二度と失恋したくないからもう恋はしない、という古い戯曲の台詞を信条としているのでしょう。ある意味ロマンチストではありますけど、ぼくらは失恋の方にもロマンを感じて、さて次はどんな恋に落ちようかと、落ちたくて落ちたくて仕方がない衝動を抱えて生きている。でしょ。そういうところ、あるでしょ。

ありますねえ、困ったことに。

いやほんとに、何度か本気で困り果ててしまいました。人だけでなく道端の雑草にすら恋の落し穴がある。朝日を受けて露が光っていようものなら、カメラを取り出ししゃがんで、高ぶる呼吸を整えながらシャッターを押す。側から見たらかなり怪しい人物ですよね。そんなんですから庭は恋愛の宝庫ですし、ははは穴だらけ。庭だけじゃなく猫も犬も水槽のネオンテトラもイカした恋人たち。

あ、うちにも犬がいますよ、6歳のプードル。たしかに、恋人です。彼は庭が好きで、っていうか庭でトイレをするのが好きです。私は本にも恋をします。毎日一冊、だいたいは桜木町行きのバスで読んじゃいますよ。行き先が終点だから乗り越す心配なく集中できます。ジャンルは雑多、実用書から、およそ実用には役立たないハードボイルドまで。あ、この頃時々村上春樹の話が出ますね。私もだいたい読みました。ハルキストじゃないですけど。


そう、ハルキストって呼び方には抵抗がありますよね。ぼくも抵抗勢力です。

とてもわかります。

で、庭なんですけどね、なるほど、ということはイスとテーブルと照明器具はお持ちなんですね。

ええ。

屋根は?

ありません。そうそう屋根が欲しい。目隠しも。

だったらあとは植物ですね。ガーデニングはお好きですか?

好きってほどじゃないけど花は咲いていたらうれしいし、雑草は少ない方がいいし、野菜も育ててみたいなあって思うことがあります。

ご家族は?あ、差し支えなければですが。

差し支えません。子供たちはもう独立していて主人は今単身赴任で中東へ行っています。砂漠です。機関銃を持った人が警備しているようなところで、どこにも遊びに行けないってぼやいてました。だから横浜に残っているのは犬とYシャツと私。

中東に単身で・・・プラント建設ですね。

はい。

ということはあのみなとみらいで美しく波打っているビルの会社ですか。

はい、私はそこに通っています。今はリモートワークで月に1度くらいですけど。

amazon 、本中毒、中東の砂漠、犬とYシャツと私、桜木町行き、みなとみらい、リモートワーク、実用書から村上春樹まで、そしてロシア人の血。ふむふむ、ありがとうございます。もう庭はできました、頭の中にですが。これを実際の設計にするのに時間がかかりますけどお待ちいただけますか?

ええもちろん。急いでいないですよ、リモートは定着しそうだしそういう庭はとても役に立つ気がします。急がないけど楽しみだから急いでくださいね。

はい、かしこまりました。

というわけで、調子良く進んだ会話から正解が導き出されて設計依頼がまたひとつ。愉快な出会いだったなあ。片岡義雄の短編に出てきそうな美しい女性にアフォードされて、ほぼオートマチックに脳内で描かれる庭はどう転んでも天使の住処になる。いやあ楽しみ楽しみ。ハラショー!ほんと、素敵な女性でした。あ、これもお読みになるのか。まあいっか、お気になさらずにお待ちくださいませ。年に何度かある、天使が舞い降り歌ようなパーフェクトな時間だったので、この感じを書き留めておきたかったのです。


天使のささやきを捜してたら、こんなん出ましたけど〜。
今日はダンシングな設計になりそうです。
確実にはかどります。
 







 

深夜の事件

休日の朝は庭から始まります。だいたい5時頃に腹を減らしたミーに起こされて、まだ暗い庭へ出て腰掛け缶ビールをひと口、それから radiko か YouTube で BGM を決め、ぼーっとしたまま雑草取りと花がら摘みをして、晴れていれば水やりを済ませます。辺りが明るくなってきたら室内へ戻り、洗濯機を回して犬猫たちと水槽の魚に朝食を配膳してからまた庭へ。あれれ、考えたらビール以外は平日と何も変わりがない。相変わらず休むことが苦手で、よく冷えた缶をプシュッと開けることで「よいか、今日は休日であるぞ」と自分に宣言をするのです。プハーッとやってからさてさて何をして遊ぼうか、とにかく頭から設計を外すのだと自己暗示。アルコールに弱い体質が幸いし、いつもひと口ふた口でそのマインドゲームは成功します。



休日のお楽しみは孫の美空と料理教室。
こうして自分で作ると、お父さんに自慢しながらバクバク食べるそうな。
週に2回幼稚園に持っていくお弁当も
この頃ではピッカピカに完食してくるそうで、

いいぞいいぞミソちん、食事が楽しいことは基本中の基本である。
妹は台所のぼくらをポカーンと眺めつつ、
時々お手伝いがしたくて参加する。
駄々をこねてもお姉が上手にあしらうようになってきました。
ほんとに、娘の子育て術の見事さに感服しきり。
二人ともいい具合に育っております。


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一昨日は午前中、バラの手入れと今年最後の芝刈りをし、ドライモードで洗ったお気に入りのを形を整えながら干し、芝生にポンポンベッドを出して日光浴がてら本を読みました。何度目かの『羊をめぐる冒険』の半分ちょっとの栞を開く。天気は上々心地よし、数ページで熟睡。スッキリ目覚めて午後は孫のところへ行って料理教室。鳥唐揚げとイカ素麺と、白菜たっぷりのクリームシチュー 。楽しかった〜。



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夕暮れ時に帰宅し真っ直ぐ庭へ。しっかり乾いた洗濯物を取り込み丁寧にたたんでクローゼットへ納めてから、また庭へ出て、上出来な休日の仕上げに読みかけの本を最後まで。夜風が暖かで半袖のままでした。読後の興奮を睡眠モードにまで下げるため、ゆっくりと入浴して就寝。事件はそこで起こったのです。



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ミーが天井を向いて目を閉じているぼくの顔の上に居座って動かない。朝の起こし方をなぜ今?まあいっかと寝返りを打つもミーは生暖かく顔にかぶさっている。猫のその親密な態度にやきもちを焼いたか、ココがギャン吠えでミー飛びかかる。ミーはぼくの耳を引っ掻き飛び退く。痛たたたた!おいおい何事だ。飛び起きてふたりをなだめて仲直りをさせたところで気がつきました。そうか、こいつらの夕飯を忘れてた。ごめんごめん、それが言いたかったんだね。



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すっかり目が冴えて、お詫びにご馳走(カリカリフードにしっとりローストチキンとブロッコリー)を支度して配膳し、どうせすぐには寝られないと庭へ行ってぼーっとしながらナイトキャップにバーボンをストレート・ノー・チャイサー。 ココとミーはディナーに満足してすでに寝室へ入り各自の定位置でいびきをかいている。さて、寝るか。なかなか良い休日だったなあと、こんな日が幸せってやつなんだよなあと、仕上げに流したソニー・ロリンズとハービー・ハンコックのラウンド・ミッドナイトを脳内でリフしながら、ベッドの中央で熟睡しているココを少しずらして布団に潜り夢の中へ。



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休日は庭から始まり庭で終わる。平日も同じく。考えようによっては、庭を中心に日々の幸福感が回っているような。


イキったマイルスのもいいけど、あれだと寝られなくかもしれません。
休日を締め括るにはこれ、サックスとピアノのジェントルな掛け合いが心地よし。





 

蝶の羽ばたき

朝の庭でたまたまチューニングしたNHKラジオによれば、「今年はラニーニャ現象の影響で寒さが厳しい冬になりそうです」とのこと。

エルニーニョ現象・・・南米沖の海面温度が平年よりも高い状態

ラニーニャ現象・・・南米沖の海面温度が平年よりも低い状態

エルニーニョというのはスペイン語でキリストの幼少期を指す呼び名で、ペルーの漁民がクリスマスの頃に現れる小規模な暖流のことをそう呼んでいたそうです。それに対してラニーニャは女の子を意味しており、エルニーニョとは逆に温度が低い海流のことで最初はアンチエルニーニョと呼ばれていましたが、エルニーニョがキリストを意味しているので「アンチ」はいかんだろうとなって、男の子の反対だから女の子、ラニーニャと呼ばれるようになりましたとさ。

暮らしの中で海水温の変化が言葉になるとはなかなかいいですよね。ペルーの漁民たちの営みが思い起こされて、脳内に聞こえてくる潮騒と、干物を並べ、網を補修している人の姿によって浄化されるような気がします。

そういう庭を組み立てたい、理屈を超えて潮騒や風の歌が聞こえてくる庭を。そんな気持ちにしてくれるお客様との出会いが途切れることなく訪れる、これは神の御加護かはたまたいつも庭の遥か天空から見守り励ましてくれる、ご先祖様と精霊たちの思し召しか。

さあてと、コーヒーをひと口啜ってから、イマジネーションの旅へ出発です。え、風は吹いたかって?いいんですよ、昨夜の風の事なんって気にしていたら今朝の心地良いそよ風を逃してしまう。蝶は今日も庭ではばたいて、微かな風を起こすだけ。



これもNHKからの情報。
長崎の花畑にアサギマダラが到着したそうです。
クリック→→→『海を渡る蝶・7月10日』

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