ある日、店に一本の電話が・・・。「雑草取りが大変なので何とかしたい」まずは現地を拝見に。こんな感じで始まった清水さんとのおつきあいです。高台にある家の裏手は高低差30mの傾斜地で、仮に平地だったら家が4軒建つほどの広さでした。一部を畑にしたり、果樹を植えたりして楽しんでいらっしゃるのですが、全体的に背の高い雑草がはびこっていて、年に何度も刈払い機で除草作業をしているということでした。まず階段と遊歩道を整備することと、ゾーニングを考えて、過ごす場所や畑スペースをハッキリさせることを提案。まるで登山道を整備するような工事が始まりました。

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 季節は冬から春へ、ポカポカとした柔らかい日ざしと汗がスーッと飛んでゆく快適なそよ風を満喫しながらの作業中、雑木林の中に食べごろのたらの芽とフキを発見。奥様にうかがうと、毎年楽しみに収穫しているとのこと。「好きなだけどうぞ」というお言葉に甘えて山菜採り。その日の夕食はフキの煮物とたらの芽の天ぷらをたらふくいただきました。
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 私のいなかが新潟の山奥なので、山菜は大好物です。とはいっても子どもの頃は、春は連日山菜なので「またこれかあ」という感じで、あまり美味しいと思わず、赤いウインナーやマルシンハンバーグを食べたがっていたのですが、都会に出てからは、春に毎年送られてくる、父が採ってくる大量の山菜を心待ちにするようになりました。山菜は春の味、冬の4ヶ月を雪に閉じ込められる新潟の人にとって、春が来たことのうれしさ、ワクワク感はものすごいのです。冬は、お年寄りから若い衆から子どもまで、すべての人が辛抱強く雪と格闘する生活ですから、雪から解放されて山が一気に芽吹きはじめる春は、町中の人の顔が晴れやかで希望に満ちています。山菜はその象徴なのです。アクが強くて、山の滋養を凝縮したような濃い味の山菜を大量に食べることで、冬に疲れてたまった心身の毒が、きれいさっぱり洗い流されるような感じでとても軽やかになります。春を満喫しながら採ってきた山菜を食べながら、しっかりとパワーを溜め込んで、「さあ田植えだ!」となるのです。
 その山菜が自宅の庭で手に入るなんて何ともうらやましい。もともと自生しているとは思えないので、おそらくどこかのものを移植したのだと思いますが、その味は新潟の春を思い起こさせるに十分でした。こんな庭の楽しみ方もあるのだなあと感心、感激な出来事でした。来年も採らせて頂く約束を取り付けて現場を完了、引き上げてきました。
 今年ももうすぐその季節、「清水さん、近々家族でおじゃましますので、よろしくお願いしま~す」。


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花 にほんブログ村にもあたたかい春の風が吹き始めました。