さあ、念願の庭付き一戸建て。がんばりましたねえ。膨大な努力と強い決意と家族の絆の結晶ですよね。引越しの段ボールはすべて片付きましたか? 「OK!」 では始めましょう、庭のあるすばらしい生活。
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 というわけで、自分の『庭』が手に入ったわけですが、たいがいいきなり持て余してしまうものです。家の間取りを考えるように、一から順に組み立てていけばいいのですが、庭はとりあえずの生活には関係ない感じの場所なので、引越しの疲れや引き渡し完了の安堵感とか達成感で、一時脱力状態の方が多いようです。ここで急き立てられるように庭をどうしたらいいのかと考えても、あまりいい結果は得られないと思いますので、庭は後回しと決め込んで、まずはのんびりと、じっくりとパワーを貯えてからというのもいいと思います。
 それで、さあ始めましょうとなったときに、何から考えたらいいのか、まずはコンセプトメイクから、これは別項『どこから手をつけたらいいのか』をお読み下さい。その次がフレームワーク(ゾーニング)、目的ごとの場所取りですね、それと導線計画、素材選び、空間演出、アイストップとフォーカルポイント、目隠しと見晴らしの問題、土壌改良、植栽計画、庭に出やすい工夫・・・となります。各項を追々解説していく予定ですが、今回はその前段として、庭って何だろう、いい庭って、優れた庭ってどんな庭のことをいうのだろうということを考えてみたいと思います。

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 設計者としては、『デザイン性と機能性を兼ね備えていて、コンセプトに合致した庭』を構築することが命題となりますが、それだけでは優れた庭とは言えません。もうひとつ、欠かせない要素として『人』。人が居てこその庭だということです。言ってしまえば当たり前のことなのですが、案外この点が抜け落ちたままの庭が多い。提案する側に、しっかりと『人』を芯に据えた感覚がない場合は、設計者のデザイン遊びで終わってしまったり、完成時がベストでその後時間と共に魅力を失って色褪せていく、そんな庭になるものです。住む方、庭で過ごす方の思考に『人』が存在しない場合、同じです、庭は早晩『手間の掛かる厄介な場所』になってしまいます。

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 横浜に居を移してから現在まで、600軒以上の庭を手掛けさせていただきましたが、『優れた庭には優れた家族が存在する』というのが実感です。デザインが仕事の私がこんなこと言っていいのかわかりませんが、優れた庭をつくるということにおいて、優れた家族のパワーにくらべたら、デザインの力など微々たるもの、そんな気がするのです。優れた家族の強烈な幸せパワーに引っ張られるようにデザインが構成されていく、そんなふうにして出来上がった庭は、その後何年たっても色褪せません。それどころか想定外のサプライズが庭を進化させていることが多く、そんな庭でお茶をいただくことが、設計者としての至福の時なのです。
 『人』ということをもう少し解析すると、感じる、思う、動く、集うといったことです。そして究極は楽しむ、感動するということです。庭の価値はここにあるのです。それを演出するための手法がデザインです。つまり設計者は家族の幸せづくりを応援する立場で、あくまでも価値を生み出す源泉は住む方のイマジネーション、生活欲求、幸福探究力にあるのです。ですからデザイナー任せではなく、あるいはデザイナー抜きで庭をつくり上げていくという意欲を持って取りかかってみて下さい。優れた庭実現のために考えるべきこと、考え方やポイントは順次アップしていきますし、質問やご意見ご感想もどしどしおよせ下さい。方法はこの記事の下の方にあるコメントをクリック、あるいは当社Eメール graceland@graceland.jpにどうぞ。『優れた庭には優れた家族が存在する』、がんばりましょう。

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熱燗 我が家も“優れた家族”を目指して夫婦での晩酌を欠かしません。さあ今夜の晩酌ネタを探しにワンクリック。