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 今回の場合はガーデニングを楽しむというよりも、“雑草取りや手入れにあまり時間を取られずに、でも草花があったほうがいい”という感じでプランしました。この庭のメインはデッキとテラスで、その2ケ所を演出することプラス軽く楽しめる程度のガーデニング作業というイメージです。
 2ケ所の過ごす場所を演出するという観点から、テラスからは立水栓をフォーカルポイントにして突き当たりまでの広がり感を出し、デッキからはデッキの際と奥の角に株立ちの落葉樹を植えることで、奥行き感を演出しました。
 そして、雑草取りに時間を取られないようにするために、植栽スペースを絞り込んで平面の4割方をジュラストーンの通路で固め、管理のしやすさと、デザイン的に楽しさを出したくて円形のレンガ花壇を2ケ所設けました。

 ガーデニングスペースのプランニングでまず最初に考えることは、どう歩いて作業するのかということです。水やり、花ガラ摘み、植替えや収穫という日々の動きをイメージしてみる、つまり導線計画を立てるということです。ここで大切なのは二点です。まず一点は“合理的に考えない”こと。庭での営みは経済活動では無いのでスピードや便利さだけを追求すると味気ない、情緒に欠ける導線になってしまいます。感覚的なことなのでスッキリと説明できないのがもどかしいのですが・・・。例えば茶室の入口のにじり口や、飛び石を打つときに踏み分け石で必ず立ち止まってしまうようないたずら的な仕掛けをしておくとか・・・。合理的に考えたら屈むことも無く立ち止まることも無く茶事でも庭仕事でも短時間で終えられるようにすればいいのですが、にじり口や飛び石のその非合理性の理由に情緒や趣が隠されているわけです。茶庭よりももっと現実的な例でいえば、例えば立水栓をどこに設置するかトいうことをイメージして下さい。庭の入口やリビングから庭に出たすぐのところにあれば便利です。でもそれをあえて庭の奥、一番遠い位置につくったとしましょう。水はほぼ毎日使いますからいやでも毎日庭の一番奥まで歩くことになります。結果的に庭を端から端まで使うことになるのです。手の届くところだけで作業が完了する庭は例え広い庭でもその一部しか使わないということになってしまう。人が入らない場所、意識が届かない部分は早晩色褪せてしまうものです。それを防ぐために立水栓を不便な、一番遠くに配置するというわけです。このように人の動きを強制、コントロールすることも含めて庭に情緒や楽しさを生み出す導線をプランする、仕組むことが大切なのです。
 もう一点は適切な寸法・サイズで設計するということ。例えば歩く人の幅は75センチと考えます。実際の肩幅は50センチから60センチですが、設計上は75センチ。例えばビルの工事現場の仮設通路幅は労働基準法の安全基準で75センチ以上となっています。人が普通に歩くのに必要な幅が75センチというわけです。
 歩く歩幅はどうでしょうか。大人が出勤で駅に向かって歩くときの歩幅は70センチです。恋人同氏が腕を組んで、顔を見合わせて会話しながら歩くときの歩幅は60センチです。庭の飛び石の間隔をどうするかで、庭での動くスピードが変わり、そのことで庭の印象も変わります。階段の蹴込み(段の高さ)は13センチから18センチが歩きやすい。10センチ以下だと躓きやすいし、20センチを超えると途端に上がるのが大変な感じになります。時にはわざと「よっこらしょ」と上がらせて、そこに庭の見場をつくっておいたり、ここはゆっくり、ここはリズミカルに、ここでは立ち止まらせる。そういう動きとそのときの心理状態まで導線計画に組み込むことを心掛けています。こんなふうに書くと大袈裟に思われるかも知れませんが、このことは古今東西の名園、有名建築物などで必ず使われていることです。東京ディズニーランドなどはこういったテクニックの宝庫、今度そんなことを意識して訪れてみると今までとはまた違った楽しみ方ができるのではないかと思います。



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走る汗