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 いつも草花の植込みはお客様に楽しんでいただく要素として残し、土壌改良だけして工事を終わります。「何を植えたらいいのかわからない」「プラン図と同じように咲かせたい」という場合は、お客様といっしょに園芸店巡りをしてアドバイスさせていただきながら草花を購入していただき、植えるのをお手伝いするというやり方です。これが実に楽しいひとときで、時々不思議になるのですが、その場所がお客様のお庭でも、公園でも、花を植えるときに感じる高揚感、幸福感、明らかに気分が仕事から離れて楽しんでいる自分に気付きます。

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今回はお客様が植えました。工事が完了した翌日から数日間、ご夫婦で花を選んでいる姿を遠くから拝見し、その幸せいっぱいの表情に「今回の仕事もうまくいった」と安堵しつつ、次の設計に移りました。

 後日妻と話したのですが、木藤さんご夫妻はいつもいい感じの笑顔なのです。撮影中奥様に「夫婦喧嘩することあるんですか?」と聞くと「ウ~ン・・・思い出せないからほとんど無いということですかねえ」とニコニコ。ふつう上手に喧嘩が出来ない夫婦はお互いにストレスを溜め込んで他で発散するか、いつか大爆発するものです。あるいは全く相手を気にかけない生活や家庭内別居になってしまうもの、いずれにしてもさめた感じになるものですが、こちらは全く違っていてまるで永遠に新婚さんみたいな。おふたりの育ちの良さなのか、努力なのか、知恵なのか、すてきなご夫婦には数多く出会いましたけど、こういう感じは初めてなのです。ポイントは“笑顔”だということは間違い無いと思うのです。でもわが妻に向かって微笑んでも怪訝そうな顔が帰ってくるし、長いこと笑顔で過ごすとほっぺたがヒクヒクしてきます。

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 奥様は昔の(まだ白雪姫だったころの)天地真理とキャンディーズのスーちゃんをミックスした感じで、いっっっつも笑顔。ご主人はソムリエの田崎真也さんにそっくりで、理知的で柔らかく微笑みながらワインの説明をしてくれる、そんな雰囲気です。私たち夫婦と同年代のおふたりが、毎日あんなにニコニコしながら暮らしているのに比べて我が家は・・・。どうすればあの“笑顔の境地”に達することができるのかはわかりませんが、「朝から、全員寝起きが悪くてブスッとしていたり、日に何度も愚痴が飛び交う我が家の現状は変えなければいけない!とりあえず笑顔を増やそうよ!」木藤邸の仕事を振り返りながら妻と二人で深く反省し、さっそくぎこちなく笑顔をつくったのでした。

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 このシリーズの最後に、ファミリーガーデンの価値はその庭があることでどれだけ家族が楽しめたかということです。それから庭と家族のいい感じは比例します。これは長年庭づくりをやってきて得た実感です。いい家族がいい庭を育てますから、今回の木藤邸の庭は時間がたつほど魅力を増していうでしょう。
 日頃設計しながらいちばん強く思っているのは、この比例する庭と家族のいい感じを庭側から高めていく、そういう庭をつくらなければならないということです。後年ふと「あの庭があったから幸せに暮らせたのかもしれないなあ」、そんな庭をひとつでも多くつくることが私たちの仕事なのだと、こんな真直ぐなことをいうと少々照れますが、でもほんとに、その思いを消さないように自分の尻を叩きながら連日設計しているのです。




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走る走る走る                 走る汗