上野邸の5日目はパーゴラです。最終プランではパーゴラを建物から離して、半分はデッキ上に、半分は庭に出るように配置しました。その理由は後ほど。

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 私は仕事上このパーゴラを何の疑問も持たないで使っていますが、一般的にはそう頻繁に出会うことのないガーデンアイテムかもしれません。雨避けになるわけではないし、相当植物が絡まなければ日よけにもならないし、藤棚としてはきゃしゃな感じがします。では何のためにある物なのか、設計者はどういう意図で設計に組み込むのか、そのことをお話しします。
 A型なので、パーゴラの起源までさかのぼってから始めたいところですが、妻の「設計が溜まっているのにまたブログやってる」という視線がチクチク刺さるので、・・・結論から入ります。パーゴラを使う意味は空間を構成する、空中を仕切ることで立体的な認知空間を生み出すということです。たとえば庭に家族が食事をするスペースを考えるときに、まずは平面的な場所を確保、ゾーニングをします。そこで終わりにすると大概失敗します。実際つくってからその場所にイス・テーブルを置いて座ってみると、何となく落ちつかない。その理由は場が平面的で、そこに座っていると、かくれたり寄りかかったり潜り込んだりという“ひそむ”要素がまったくないということ。空間的にスッポンポンだから落ちつかないのです。人間はアフリカのサバンナを悠然と歩くキリンやシマウマではなくて、草むらにひそんだり穴に潜って暮らす小動物に近いのでしょう・・・あっ猿か。木陰や岩陰や大木のほこらに隠れてくつろぐ猿なのです。そのスッポンポンな場所をどうやったら落ちつかせることができるかというと、手っ取り早くやるにはテーブルにパラソルを立てること、それだけでかなり居心地が良くなります。自分より高い物が頭上にあることで落ちつく。同じ意味で、テラスの脇にテラスに影を落とすような樹木を植えるのもいい方法です。これをさらに進めて行って、雑木林の中で食事となれば、気分は軽井沢の万平ホテルです。他に、特に目隠しが必要なくても背景にトレリスを立ててみるとか、イギリスのストーンヘンジみたいな感じでまくら木を立てるとか、いろんな方法があります。
 このように人が集う、家族が過ごすという目的を持った場所をつくるときに平面に加えて立体的な空間構成をすることが重要で、パーゴラは単純明快にその役を果たしてくれる、うってつけのものなのです。で、話を最初に戻しますが、今回なぜパーゴラを、半分デッキからずらしたのか。それはデッキに縁側的な役を加えたかったからです。つまり、パーゴラの中心をデッキの端に持ってくることで、そこに腰掛けたり、そこから庭に出たり、近所の人が庭から入ってきたらそこに座布団を出して「今お茶入れますから」、そんなシーンをイメージしてのことでした。
 こうして出来上がってみると、狙いはそこそこ成功した感がありますが、それ以上に予想外の効果を生みました。それは、庭(地面)部分に魅力といか力が出て、デッキ上と同じくしょっちゅう下に降りてガーデニングや、子供たちは泥遊びを楽しんでいる、そういう雰囲気が出たことです。あらためてパーゴラの意味、その威力と魅力を実感しました。

 はいはい、もうブログ終わりにして設計しますから、はいはい・・・。我ながらよく働く猿なのです。



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