松下さんちの庭、今日は奥の方をご覧いただきながら 回想『ガーデニングブーム』 を。

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 雑木の庭が一般的になりつつあったころに 大ガーデニングブーム がありまして、平成に入った頃です。「さあこれからは庭関係が儲かるぞ!」とばかりにあちこちから火の手が上がって、某フィルムメーカーがヨーロッパから石材を輸入したり、ビール会社が草花の研究を始めたり(これは順調に伸びて、今でも園芸店を楽しくしてくれています)。それは良かったんですけど、問題はにわかガーデンデザイナーが山のように湧いて出て、それまでカーポートや物置を売っていたおじさんや、お花屋さんの店員さんまで名刺に『ガーデンデザイナー』と印刷して出版社に売り込みをかけました。出版社もひどいもんでして、ガーデニング本が次々出版されまして、どれもこれもその内容は、あまりにもレベルが低いものでした。あんまりすごいので、その時代の記念として今でも何冊かとってあります。今見てもほんとすさまじい庭の連続です。

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 庭にまくら木とラティスと意味なくうねったレンガ通路があれば ガーデン のできあがり!てなぐあいで、デザイナーが考えるべきこと(庭のコンセプトや目隠しや導線計画など)が何もなされていない。週刊朝日の『私流ガーデニング』(だったかな?)という連載ページもありまして、田舎の瓦屋根が乗っている農家の庭に唐突にイングリッシュガーデン風の花壇が出現して、そこで日焼けした農家の熟年夫婦が、オシャレして、奥さんは化粧も念入りにして、白いイスに座ってぎこちなくハーブティーをすすっているという写真が、私にはなんとも残酷な風景に見えて、今でも忘れられないのです。おそらくあの花壇は今ではトマトとナスがたくさんぶら下がって、あの、ハーブティーをすすっていたご夫婦は、本来の健康的な笑顔で仕事の合間の麦茶を楽しんでいることでしょう。

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 つまりこういうことです。それまでの庭は和のノウハウ、造園の技術や知識がなければつくれなかった。それが雑木の庭になったら一気に何でもありになってしまって、まったくの素人さんがプロを名乗って平気でひどい庭を乱造し続けたのです。それが4~5年続きました。あれから十数年、さすがに低レベルのガーデン雑誌は廃刊になり、にわかガーデンデザイナーは姿を消しました。お客さまの方が本物志向になってきたためです。私にとってはいやないやな数年間のガーデニングブームだったのですが、まあそれも日本人の庭がファミリーガーデンへと脱皮するための一時の混乱だったということでしょうか。それにしても無数につくられたどうしようもない庭、それにかかったコスト、何より膨らみかけて萎んでいった庭への夢。・・・過ぎ去りし悲しきブーム でした。

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