ジョンや三島由紀夫が「エルビスになりたい」といった意味はおそらくこういうことです。エルビスは努力の人ではなかった。敬けんなクリスチャンで、母親思いのやさしくまじめな青年で、その彼が彼らしくいたところに、時代の方がまっすぐに向かってきて、その無垢な彼と交叉してスパークした。本人の思惑など一切ないままに、そこで上がった火花が時代を変えるダイナマイトを爆発させたのです。日本でいうと坂本竜馬(司馬遼太郎が描いた)みたいな感じです。時代にえらばれた人、だったわけです。
わたし、そこに人生の光明を見いだしました。

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全く自慢にはなりませんけど、生まれてこの方『努力』ということをしたことがない私です。好きなことには人一倍熱中はしますしコツコツとやり続ける持続力もある方だと思っていますが、努力は・・・、やっぱり努力とは無縁なのです。わたしにその能力があったら、今頃しっかりしたレールに乗っかって、生活に何の不安もなくキャンディーズの同窓会で熱狂していたでしょう。ずいぶん早くに、たぶん中学1年でそういう自分を自覚して「こりゃあ好きなことに熱中する以外に生きる道はなさそうだ」と悟った私、でもそんな自分でも意義ある人生を送りたいという意識は健全に旺盛でして、そうなると自分は自分らしく、徹底的に自分らしく。いつか神様が自分らしい自分を世の中の役にたててくれる場面が用意されているに違いない、エルビスのように。という何とも脳天気な思考で、恐ろしいことにそれが現在まで続いているのです。「好きなことしかやらないよ」とか「遊んでる暇しかありません」「座右の銘は『人生成り行き』です」などというバチアタリなこと言いながらとうとう48歳になってしまったのです。

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で、神様はそんな私に活躍の場を与えて下さったのかというと、これがまた脳天気には脳天気な神様がついてくれるらしくて、波乱に満ちてはいましたが、けっこう有意義に生きて来られた気がしています。(努力が信条の皆様には申し訳ないような気がしています)エルビスには遠くおよびませんけど、こんな私でもまじめにやってたら活躍させてもらえる場面が用意されていた、ということです。そしてこれからも、だぶん。

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グレースランドは、そんな、時代に選ばれ引っぱりあげられた青年エルビスの成功の証しでした。たしかベッドルームが27あるという大豪邸で、当然プールがあって、ガレージにはキャデラックが「いったい何台あるんだ~」というほど並んでいて、地下室には空手のトレーニングルームと映画を観るシアタールームがあるという家です。資産は天文学的な数字だったそうで、欲しいものは何でも手に入った、かと思いきや、これがそうではなかった。美人の奥様プリシラ・ボーリューはお抱えの空手教師と駆け落ちしてしまうし、メンフィスマフィアと呼ばれる雇ったお友達グループにちやほやされながらも、満たされない日々を送っていたといいます。世界的なスーパースターになっても、本人はナイーブな青年のままだった。そして何よりも欲しかったはずの『家庭』を手に入れることができなかった。プールの向こう側にテレビを並べて、人気がある歌手が映るとピストルで撃っていたそうですし、晩年の過食症も心に穴があいたような暮らしから出た症状だったのでしょう。世界一豪華で世界一さびしい家、それがグレースランドだったのです。
その家の名前を会社名にしよう。これは、好きなことやって生きるんだから、たとえ何かが満たされない結果になっても受け入れようという決意でした。ただし、世間の役に立つ人生でありたい、これが神様への交換条件でした。14年前のお話です。
幸い今のところ家族にも恵まれて、仕事も年々、これでもかというくらい忙しくなっています。ありがたいことです。
そんなわけで、グレースランド、あくまでも自分らしく、世の中の役にたちながら暮らしていきたいという決意の命名だったわけです。
そうか、エルビスが亡くなったのは47歳の時だから、私はエルビスより長生きしているんだなあ。47歳かあ・・・ウ~ン、リアルだ。辛かったんだろうなあエルビス。占いによると私は遅咲きなので(遅すぎる気もしますが)もっとガンガン仕事しなきゃあなあ、そしてもっともっとたくさんのご家族によろこんでもらって、そして私のグレースランドを建てて、プールサイドでドーナツ食べまくらなければ。まあ、すでに胴回りは晩年のエルビス並みにメタボですけど。