さっ、今日から新シリーズ、猪俣邸の外構と造園です。今日は外構のプランを。

いわゆる旗竿宅地で、道路から長い進入路があって、他の家の裏手に宅地があります。通りから入り込んでいるために静かな雰囲気が得られるという利点とともに、エントランスをどう仕立てるのか、表札ポストなどをどこに配置するのかなど旗竿宅地特有の設計ポイントがあります。
ご主人とあれこれ下打ち合わせした上で、こういうプランになりました。1番目のプランの下側が道路で、上に駐車場と建物。その上に次の2番目のプラン図がつながるという位置関係になります(分かりづらくてすいません)。

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道路際に門塀を設けてそこに表札とインターホン、ここで立ち止まっていただく。そのまわりのレンガ張りを円形にして平面的にも「ここから宅地なんです」という感じを強調しました。そうしないとこの旗竿宅地の竿の部分がただの進入路になってしますからです。
そこから直線で入っていって、また円形に張り分けたレンガが、今度は玄関ポーチにつながっていく、これが意識の誘導。平面的な図形によってスムーズに玄関まで導きつつ、同時にひとつの世界観で包み込んでしまおう、そういう心理効果を生む場所として長いアプローチを使いたかった、とても理屈っぽくいうとそういう意図での設計でした(ほんと理屈っぽいですよね)。

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その長いレンガのアプローチの奥が駐車スペースです。かなり広いこの場所を普通に土間コンクリートにしたらさすがに味気ないので、なんとか前庭感を出したいと考えて、スリットを入れ、仕上げは洗い出しに。ここでのひとつの問題は、侵入方向から左に折れて玄関があるということ。侵入方向の正面はブロック塀とフェンス、その向こうに隣家の裏手が見えるのです。こういう時に考えるべきことは、常連さんはご存知ですよね、そう『アイストップ』です。進行方向に目があたる何か、意識に入ってくる何かがないとスムーズに左に折れることができなくて落ち着かない構成になってしまうのです。歩いていって、何かに意識が当たって、その反動で方向を変える。そうするとそちらにはまた何かがあって、それが「こっちですよ」と呼び込んでいる。そういう仕掛けで誘導されていくと気持がいいのです。一般的にはこの導線折れの規模がもっと小さいので、アイスットップもプランターにコニファーを芯とした寄せ植えとか、表札を取付けた枕木が立っている程度で十分ですが、今回は規模が大きいのでそうはいきません。で、駐車場の奥にアイストップとしてコニファーガーデンをつくることにしました。庭ワンコーナーがそっくりアイストップというわけです。
来訪者が、まずはインターホンを押して、レンガの張り分けと植物を楽しみながら坂道を歩いていくと目の前に景石を組み込んだコニファーガーデンが現れる。その左側にさらに庭が続いていることを予測させます。そんな心象を経て玄関ポーチに上がって再度ドア脇のインターホンを押す。ほんとに些細な心の動きを予測したストーリーに基づいた空間の組み立てなんですけど、こういうことが設計なのです。こういうことを考えないで「ご主人はどんな素材がお好みですか」とか「コスト的には全面コンクリートがいいんじゃないでしょうか」そんな感じで外構を考えたら、家の印象、この家に暮らす家族の印象、ご家族と来訪者(社会)との関係性、そういうことが全く違ってきてしまうのです。
あぁ、こうして解説すると理屈っぽいんだなあ。でもまあそういうことなんですよ、理屈で設計しないとその空間に意味は生まれない。それを解説するんですから理屈っぽくなるのは当たり前なのです。

明日はコニファーガーデンの左側に続く庭のプラン図をご覧いただきます。


 
 
今日は早朝から現場に出かけて(また新たに2軒、出来上がりが楽しみな庭を着工しました)、その後設計作業と打ち合わせでブログのアップが今になってしまいました。「さあてやるかあ」と開いたら、またもや北原照久さんからコメントをいただいていまして、感謝感激!うれしくてファイト倍増、今日はハイテンションで残業ができそうです。北原さん、ありがとうございます。