うちのお客様には、何年もかけて少しずつ庭を完成形に仕立てていく方が大勢いらっしゃいます。今回ご紹介する市丸さんちもそうで、スタートは今から5年前です。

妻とそのときのことを思い出してみました。最初に店に来られたのはご主人で、「敷地の外からの笹の侵入を防げないか」というご相談でした。隣地が草ぼうぼうの斜面で、そこからはびこってくる笹に悩まされていたのです。「それなら根を遮断するように地中に板を入れれば大丈夫ですよ。とりあえず見に行きます」ということになって後日訪問すると、奥様から笹の件とは全く違うご要望が。それは3階の外にウッドデッキをつけられないか、というものでした。
市丸さんちは3階に玄関があります。つまり建物が傾斜地に建っていて、道路から見ると平屋で地下2階、裏から見ると3階建てになっているのです。しかも1階から下に数メートル階段を下って庭、というか広場があって、その先はさらに急傾斜の雑木林。その3階にウッドデッキとなると、山形県の山寺か清水の舞台のような感じになります。「う~ん、ちょっと無理かな」、当然鉄骨構造になるし、だいいち私は高いところが苦手なので・・・。その後いろいろとお話して3階のウッドデッキはあきらめていただき、2階につくるプランとなりました。2階なら木製で構造的にもしっかりとしたデッキがつくれます。
見晴らしのいいロケーションですから「こりゃあ気持のいい場所になるぞ!」とつくる前からデッキについては大満足でしたが、私は他に気になることがありました。1階からさらに下へ降りる庭スペースです。「何か工夫しない限り、ここまで来て楽しむことはないだろうなあ、もったいないなあ」。そこで、笹を止めつつ、横の斜面を花壇にするようなイメージを提案しました。

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これをもとに検討した結果、デッキについては階段を右外につけて、もっとデッキを広く使うということになりました。空中広々デッキ。ふだん地べたの庭のプランニングがほとんどなので、図面上なのに軽く膝が震えて、やっぱり高いところは苦手なのです。

明日はビフォー・アフター。このプランがスタートで、あちこちを少しずつ施工していって、5年目の姿をご覧いただきます。


 
 
昨日、加山雄三にはまってると書きました。そして昨日も一日加山さんのCDを聴きながら設計していました。はかどるんですよ、設計が。何でかなあって考えたんですけど、若大将的な家族観がひとつの理想型なんですね、庭とその家族を考える時にすごくいい。明るく元気で夢いっぱいで。それだけじゃない、いつでもどこでも若大将で、何が起ころうと若大将で、倒れても倒れても若大将で。加山さんについては北原照久さんの専門分野ですけど、私も(もう30年前ですが)聴きまくって、湯沢の山歩きや加山キャプテンコーストの思い出、越後の山奥から、見たことのない湘南への憧れを膨らませた時期があり、若き日の貴重な1ページになっています。若大将的って、今ものすごく大事なことなんですよきっと。

音楽っていいですねえ。疲れた時に美味いもの食べると元気になるのと同じで、音楽がコンディションを整えてくれます。しかも、いくら聞いても食べ物と違って脂肪がつかないし。
今朝は雨。雨の日に聞く音楽はキース・ジャレットです。湿った空気とかすかな雨音とインスピレーションの洪水のようなピアノで、深い熱中モードに入っていく。こういう日に設計が熟成されて、またひとつ階段を上がれる感じがあります。
晴れた日には晴れ晴れと、雨の日にはじっくり深く、充実した一日をイメージしてBGMを選びましょう。
2009年2月20日、金曜日、雨、今日のあなたのBGMはなんでしょうか。さっ、今日も張り切っていきましょう!