今日からご紹介する石丸さんちの庭は、ご主人の、家族への思いから始まりました。すべての庭がそういう誰かの何らかの思いによって生まれるものなんですね。
そのご主人の思いにぼくが引き寄せられて、そして共鳴が起こってできあがったカタチ、そんな庭です。


この場所、どうですかねえ、一般的にはこの通路に「庭」をイメージできないのではないでしょうか。

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お隣りの宅地が1メートル高くて、奥は3メートル以上のコンクリートブロック。リビングの外は幅1メートル40センチです。メジャーが近くにある方は計ってみてください、1メートル40センチ。


奥に進んで、和室前はやや広くなっていますがそれでも1メートル80センチ。

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上から見下ろすとこうです。谷底の薄暗い、・・・やっぱり通路です。

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でもご主人は「この場所をどうしたら楽しくなりますかねえ(無理ですかねえ・・・)」と。

現地を拝見にうかがったとき、明るくてかわいらしい、笑顔が素敵な奥様と、元気いっぱいで人なつっこいお嬢さんがふたりいて、ご主人の「この場所をどうしたら・・・」はこの素敵な家族のためにという家長としての思い、3人の女性たちへのプレゼントができたらいいなあという、そんな気持ちなんだということが伝わってきました。

周囲が高くてドドーンとコンクリートが見えていることは、いくらでも方法はあるので何とかなります。それがうまくいけば隠った感じで落ち着いて過ごせる場所になります。それは良しとして、問題はいちばん広い場所がリビングとはなれているということです。仮に家族で過ごす場所をつくるとしたら一番奥の角です。こういう場合、よっぽどそこを「いい場所」にしない限り、わざわざそこまでは行かないものなのです。

この限られたスペースで「行きたくなる」場所を考え出す・・・、う~ん。正直に白状すればその時点で頭の中はノーアイデアでしたが、奥さんとお嬢ちゃんたちがあまりにかわいらしくて、ぼくもご主人と同じく、この3人の女性をよろこばせてみたいという気持ちがわき上がって来て、つい・・・ニッッコリ笑って「大丈夫ですよ!まかせてください!」と、自信満々なふりで帰ってきました。
よくあるんですよこういうパターン。何の根拠もあてもないのに「大丈夫ですよ!まかせてください!」と。今までたいがいは大丈夫でしたから。大丈夫と思えれば、それで大丈夫なのです。
お役に立ちたい、よろこばせたい、そういう対象さえあれば、あとは自分が持っている力をフルにそこに向ければいい。そして、そういう局面での自分の力を信じて「大丈夫!」と先に言い切ってしまう。こと庭の設計に関しては弱気になることがなくて、いつも(根拠のない)自信満々なんです。これってもう癖になっています。

自分への自信があるとはいうものの常にスイスイ描けるわけではなくて、実際には「結構手こずりましたあ~」。考えて考えて、さらに考えて、いくつかのラフを描いては消しして、で、できあがったのがこれです。

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描き上がったときに「ヤッター!ヨッシャー!」と声が出ました。夜中の設計室で、ひとり小さくガッツポーズしましたよ。
これでまた、「大丈夫ですよ!まかせてください!」が嘘にならずにすんだ、というホッとする瞬間でした。

明日はプラン図をアップでご覧いただきながら、全体の構成と各エリアのポイントなどを解説します。


 
さあっ!今日もたくさんの人と、庭と家族について「熱く」語り合いますよお!