レンガ塀と建物の間に空間をつくって、そこにトレリスを設置しました。


DSC_0055


庭側にはシマトネリコを植え、トレリスにはツルバラがからむようにしてあります。


DSC_0084

DSC_0085


レンガ塀で囲いすぎることで庭が閉鎖的にならないために、庭に居て目隠しの必要がない部分はレンガを積まずに、しかし構成的には通り抜けできないように閉じる必要があったので、トレリスを3枚並べました。そこにバラが絡んで軽い目隠し効果になるという仕立てです。
開いておいて、違う素材で閉じる。解放しておいて軽く目隠しする。この押したり引いたりする構成で、場に心地よい変化とリズムが生まれます。


開いといて閉じる。見通しをよくしてから隠す。押したり引いたりしながら塩梅をさぐる。


こういうことというのは、一応の理屈に立って行うことではあるのですが、それ以上に「感じ」が必要です。設計しているときに頭の中で、設計中のその仮想庭に立って、歩いて、座ってみての感じです。
これですこれ、これが設計中の重要なポイントなのです。理屈に加えて感じを描き込んでいくこと。
感じとは、風、光、さらに和みや、時には迫力や緊張感といったこと。さらに進んで、その庭で展開されるであろうシーンに登場する人の台詞や人物像、役回りまで。そういうことが浮かんでくるとき、ぼくはニンマリ笑いながら設計しています。絶好調なのです。

その設計中の仮想庭を歩く妄想トリップ状態で、今度はリビングに入って外を眺めると、道路を歩く人からの視線が気になりました。で、トレリスの内側にシマトネリコを植えることに。
実際にでき上がってのリビングからの道路への目隠し具合はこうです。


DSC_0061


もうバッチリ、うまくいきました。
庭にいるときの開放感と、部屋からは軽い目隠し効果。イメージ通りにおさまって、撮影しながら鼻がフンフン言っちゃいました。


レンガ塀の外には植え込みのスペースを確保しました。庭側に過ごすための十分なスペース取りができたので、塀の外側にも植える場所を設けたのです。


DSC_0057


このちょっとしたスペース取りのやりくりで、塀の外側にも意識が行くようになり、植栽を楽しむ場所が増えたことになります。
そのことに加え、このように庭の内側だけでなく外側、道路側にも植栽することで、道を行く人、周辺住民とのつながりが生まれます。


DSC_0056


下町の玄関先に、バケツや発砲スチロールのトロ箱でガーデニングを楽しんでいる風景、大好きです。それは見た目じゃなくて、そこを行き交う人たちの会話が聞こえてきそうだからです。「この花はなんていうんだっけ?」、「去年分けてもらった挿し木のバラが咲いたのよ!」と、下町のおばちゃんたちは、夕飯の買い物がてら、草花をネタにしてのおしゃべりに花を咲かせます。
玄関先や道路端の草花はご近所付き合いの潤滑油。花が嫌いな人はいませんから、そこに季節の花を育てることで、ご近所さんとの楽しい会話が生まれます。

道路側にも草花を。そういう家がたくさんある住宅地って、歩いていて、ものすごくいい感じを受けます。ここで暮らしていたら、きっと周囲に引っ張り上げられるように、幸せになっていくだろうなあって。
地域全体が、花によって共鳴して、高まっていく幸福感ってあるんですよ。横浜だったら、栄区の庄戸や桂台を散歩すると、それを実感できると思います。


花をきっかけにした会話は必ず笑顔の会話。街並の花の数だけ笑顔がある。


そうか!そう言えば、奥様のご実家はたしか桂台でした。小さいころから、そこで育まれた幸福感があったからこそでき上がった庭なのかもしれません。