撮影をしていたら陶器の鉢がいくつか転がっていました。お訊きすると、とっても楽しそうに「山道を歩いていたら落ちていたのよ」とのこと。
そういうのを拾ってくるところが奥様の軽やかさです。



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たこ唐草の絵付けですから、江戸後期のものかもしれません。う〜ん、これに何を植えたら素敵ですかね。オモトかなあ、シュンランか、視点を変えてワイルドストロベリーなんかもいいですね、怪しげで。

もうひとつは三本足の鉢でした。



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このように足が3本の器というのは、中国の紀元前2千年ころからあるデザインです。



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3本足というところがおもしろい。
3本なら必ず器は安定します。イスやテーブルのように4本足だと、長さがそろっていないとガタつきますよね。それが3本なら、多少長さにばらつきがあっても3本とも地面に着きますから安定するのです。
ヨーロッパの古いイスで3本足のものがあります。ということは、中国人とヨーロッパ人がそれぞれに3本だと安定するということに気づいたのか、あるいは中国からシルクロードを通って伝えられたことなのか。

3という数の面白さってあるんですよ。人が最もコミュニケーションを取りやすい人数が3だといいます。2だと立ちづらく、4だとガタつきやすく、3だと互いの存在を必要とし合いながらいいバランスを保てるのです。
また造形的にも3はバランスを取りやすい数です。
花屋さんに行って、チューリップを2本買って「彼女にプレゼントしたいので花束にしてください」と頼んだら、きっと店員さんは困ってしまうと思います。2本では恰好にならないからです。たぶんサービスで1本追加して3本で花束にしてくれることでしょう。
1本ならまあそれだけですからいいとして、2本は恰好にならない。3本なら新米の店員さんでも恰好よくまとめることができて、では、4本だとどうでしょう。これがまた難しいのです。5本以上は何本でもカタチになりますが。

造園設計では三角形を多用します。木の配置などに、平面的にも立面的にも3角形になるように植えます。公園などではそういう三角形を三角形に配置したり、組み合わせたりしながら設計してゆきます。そうすることで、眺めても歩いても心地いい風景ができあがるのです。
生け花でもそうですね、芯、添え、控えの三角形が基本です。

3、三角形、三角関係(これはちがうか)、3には人に作用する不思議なチカラがあります。

庭に転がっていた器から話がコロコロ転がりました。これがココロコロコロです。

山道に落ちていた器を拾って持ち帰る、そんな奥様のコロコロしたココロが、器に乗り移って、こんどはファインダー越しにぼくに乗り移りました。
コロコロは連鎖するのです。