出版社の取材が続きます。ありがたいことであり、とても楽しいことでもあります。

猪俣さんちは3年前の施工です。そして取材のテーマは「日陰の庭」。



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右側から3分割します。


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この猪俣さんちの提案は、ぼくのいつものパターンとはちょっと違うものでした。
最初ぼくは、家族で過ごす庭、思いっきり明るく楽しい庭をご提案しましたが、ご主人の反応はいまいち。んっ!?と思っているぼくに、ご主人は明確な庭のイメージを伝えてくださいました。

「そういうのも楽しそうなんだけどさあ、ぼくとしては、しっとりとした自然を感じながら暮らせるような庭がいいんだなあ。雑木の庭って感じの」。

ガッテン承知の助です。
お客様が思い描く理想の庭がわかれば、それでもう大丈夫。家族や友人とにぎやかに過ごすイメージの、バーベキューテラスをつくるばかりがぼくの設計ではなく、茶庭や坪庭やイングリッシュガーデン、プロバンス風、スパニッシュ、ご希望とあれば中国式の庭やアフガニスタンの庭まで、ありとあらゆる庭を設計できるのです。
ブログの常連さんはご存知のように、ぼくは粘着気質でマニアックな性格ですから(今風にいうとオタクに近い)、庭を生業として生きていこうと決めてからは、もう徹底的に庭のことを勉強しましたので、大概のご要望にお応えできるだけの引き出しは揃っているのです。

しっとりとした自然を感じながら暮らす、これはもう願ってもみないテーマでしたので、ぼくは意欲満々。
このようにお客様のご要望が明確だと、それがぼくの規定方針、ぼくが提案したい庭と方向が違っていても、それをカタチにするのはエキサイティングはことです。しばらく使っていなかったスイッチを入れることができました。
それともうひとつ、意欲がわき上がってくる理由がありました。ご主人がとてもすてきな人だったということです。

そろそろ定年が近い年齢のご主人は、プラント建設で有名な会社の研究員、つまり学者さんで、人柄は最高だし、カッコいいし。初対面の時点で「こんな人になりたいなあ」と思いました。
そういう出会いってありますよね、なんだかいきなりリスペクトみたいな。

そうやって設計した庭の完成時の写真と、今回の取材で撮った現在の様子を並べてみます。
ビフォー・アフターを想定せずに撮ったのでややアングルが違っていますが、そこはあなたのイマジネーションで修正しながら、3年という時間が生み出した植物の生長と、ご主人が希望していた「しっとりとした自然を感じる」ということが実現されている様子をご覧ください。



3年前
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現在
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植物がいい具合に生長しています。



3年前
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現在
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緑のボリュームが増しただけではなく、具合がいい。とってもいい感じです。



3年前
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現在
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庭に踏み入った瞬間に、庭に息づかいが感じられ、空気がしっとりとしていました。

そしてこの日の天気の具合もよかった。直前まで雨模様で、止んでもしばらくは曇天。取材を始めたら厚い雲が切れて、少しの間だけ光が差して、庭と僕との再会を、空が祝ってくれているようでした。 



3年前
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現在
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ぼくは取材を受けながら、ライターさんとの会話は、実のところどこか上の空でした。
この庭の3年間の変化にウットリとして、その感動に浸っていたかったのです。
徹底的に自画自賛状態。「これだよこれ!設計していたときにイメージしていたのは、工事完成時のじゃなくて、今のこの庭なんだよ」と、誰に言うわけでもなく、内心ひとりで興奮していました。



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この庭が、時間とともに成長して魅力を増したことの要因は、ぼくがご主人に出会った瞬間に感じたいい感じだったと思います。
ご主人のご要望が明確で、そういう庭をイメージしているご主人に対してぼくが感じた、「いい感じだなあ。こういう人になりたいなあ」という印象が間違っていなかったということです。
3年間、ご主人はこの庭を慈しんでくださいました。そしてその間の、この庭がある暮らしが充実し切っていたことがハッキリと感じられました。



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工事が完了してから数年が経過して訪れた庭が、ちゃんと進化して輝きを増しているときに感じる嬉しさって、もう言いようがないほどなんですね。こればっかりは作り手の特権です。



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「 ぼくとしては、しっとりとした自然を感じながら暮らせるような庭がいいんだなあ」。
そのご要望に応えるべく、普段とは違う引き出しを使って設計したあの時間。普段とは違うイマジネーションで、 普段とは違う興奮状態で。
その時に思い描いた庭が、リアルに、イメージ以上に熟成されて、成長を遂げて、それをこうして実感できることの嬉しさ有り難さ。
なんだかとっても幸せな取材でした。



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明日は引き続き取材時の写真をご覧いただきながら、ご主人が思い描いていた庭の意味、 この庭が持つ価値について考えたいと思います。





今日は朝からお客様としゃべりっぱなしで、ブログのアップが夜になってしました。土日はお客様が多くて楽しいのです。
いろんな庭のことを考え話しながら過ぎていく、充実のいち日。

人と会って話すことは、植物が光合成するのと似ています。
たくさんの人と話すと、必ず元気がみなぎってきます。


昔は全く違っていたなあ。人と会って話をするとけっこう疲れたりして。できるだけ誰にも会わないようにしていたこともありました。遥か昔のことです。
そういう時期って、振り返って考えると、何をやってもうまくいかなかったような気がします。
きっと人と会う、他の人と話しをすることで光合成できるって、健康な状態なんでしょうね。


さっ、晩飯食って、また夜の庭に出て、明日のネタの準備をしときます。
早朝から深夜まで、走りっぱなしのような日々が続いています。
明日もたくさんの人と話せるといいなあ。二酸化炭素を吸い取って、酸素を排出しますよ!