設計ができあがってから着工するまでに、「素材の色選び」を行います。
今回はそこで奥まさの美的感覚が発揮されました。

打合せ段階で奥様から出ていた「フェルメール&ラブリー」というキーワードを、ぼくとしてはどう扱っていいのかわからないまま、最後はそのことを頭から外して「もし自分の庭なら」という思考で設計しました。これはぼくの力量のなさだったわけです。
柔道で言ったら、監督から背負い投げの一本勝ちを命じられていたにもかかわらず、なかなか技が決まらずに、最後は押さえ込みで決めてしまったみたいな。 

そのスッキリしない感覚を、色決めでの奥様の感覚で消し去ってもらったような、「これだったのか」と正解を与えてもらったような気持ちになりました。

まずプラン図をご覧いただいてから、実際に庭に使った素材を並べます。



酒巻邸 平面逆

酒巻邸 立面B



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特に壁の色と仕上げの質感が、ぼくが提案したものとは違う感じになりました。そしてその変化に「フェルメール&ラブリー」を実感できました。うれしい変化でした。



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奥様は音楽の先生です。弾厚作と山本直純の音楽が似ていることを、とても楽しい発見として語るような方で、暮らしの中心に音楽があって、音楽の中を泳ぎながら暮らしているような感じを受けました。仕事としてというよりも、大好きな音楽にドップリと浸りながら日々を送っているという感じです。
そして絵画への造詣も深く、室内にはグッと来る絵が何枚も飾ってありました。いわゆる芸術家です。



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そんな奥様は、会話はすべて感覚的です。ぼくが話す言葉を「はい、はい」と丁寧に受け取りながら、その受け取った言葉を頭の中で調べや風景に変換しているようでした。「はい、はい、・・・はい、はい」と、間をあけては頭の中に広がる仮想庭にウットリする。



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ウットリするばかりで、奥様からはほとんど具体的な意見は出てきません。どこまで話しても「はい、はい」と返ってきて、そして「すてきー」で終わります。
唯一いただいたキーワードが「フェルメール&ラブリー」だったのです。


楽しい人です。そして「この感覚、こういう暮らし方って、どう考えても幸せだよなあ」と思いました。

「はい、はい」と聞き入って、受け取った言葉を脳内で風景や音に変換して、「すてきー」とウットリする。

そんなふうに話を聴いてくれたら、誰でもうれしくなっちゃいますよね。そしてその人のために全力出しちゃいます。
ご主人、幸せ者だなあ。


ぼくが中学生の頃に思い描いていた自分の未来像、夢見た未来の暮らしは「アーティストの家」でした。酒巻さんちには、それと似た世界がありました。
ぼく的には油絵の具と粘土の匂いがする北向きの天窓があるアトリエで、その外には深い雑木林がある。ぼくが岡本太郎で、妻は城戸真亜子みたいな、そんなイメージでした。
暮らしの中の会話はすべて感覚的で、議論することがない。
すべてのことがらを「美しいか美しくないか」で判断する。
静かに、美しく流れてゆく時間。
・・・理想郷。

イメージしただけで、気持ちが宙をさまようほどの心地いい感覚になってきます。

「美的感受性を持って暮らすということ」、明日はこのことを、少し掘り下げてみようと思います。








 夏本番ですね。朝からゼミが大音量で鳴いていました。

今夜はテミヤンライブで充電して、バランス調整して、夏バテしないで頑張ります。
あなたもぜひ。



temiyan



夏休みのお子さんを連れて行くのも楽しいと思いますよ。


今日はこれから雑誌の取材で、門馬さんちに行ってきます。
門馬さんと言えば「幸せの小舟」(興味のある方はブログ内検索で門馬邸を探してみださい)。







久しぶりの再会が楽しみです。
門馬さんちの奥様も、幸せに暮らしを組み立てる達人なんだよなあ。