数日ぶりに酒巻さんちのご紹介です。

えーっと、前回までの数回は、庭の草花をご覧いただきながら徒然なるままに書いていたんでしたね。
そうそう、「夕涼み よくぞ地球に生まれける」でした。
庭は暑いし蚊はいるし、でもだからこそ、庭があなたに作用してあなたの毎日を豊かにしてくれるのだということを書きました。
うん、思い出した思い出した。そういう話でした。
せっかく暑いんですから、せっかく蚊がいる夏なんですから、シュシュッと虫除けスプレーして庭に出ましょう。
レノンの庭で、設計の合間の気分転換に、庭に出ては雑草取ってます。
15分ほどで大汗かいて、Tシャツ着替えてまた設計。気持ちいいですよー。勢いがつきます。


ところで、ここ数回の酒巻さんちの草花、どれも地味目でしたよね。
それには理由があります。
一般的に庭って、敷地の南側にあります。でもこの庭は北にあります。
なぜならこの庭スペース、裏木戸へのアプローチなのです。
建物の反対側、南側に大通りがあって、そっちがメインの玄関と駐車場がある立派な門構えの外構。しかしそちら側には庭スペースは確保されていません。
それに対してこっち、北側は、ゆったりとした庭をつくれる広さと、道路は遊歩道で緑も多いという好条件。それでここに庭が誕生しました。
ただし日当りがよくないので、日陰に耐える草花ばかりをうえることとなり、花の写真が地味目になったというわけです。



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実際に庭が完成してみると、予想していたよりも光が入るので、そんなに気にすることなかったかなあとちょっと反省しています。北側の庭ということを意識し過ぎました。

まあこれから、奥様がどんどんいろんなのを植えてくださることでしょう。そうやって楽しんでいるうちに、この場に合った草花が優勢になっていって、もっとにぎやかな植栽になっていくと思います。

ってね、こういう感じでいいんですよ。

もしも庭の草花がイメージと違っていても、ぜんぜん平気です。庭って変化させていく場所なんですから。
「イメージと違う」ということだけを持ち続けて変化させていけば、そのうち劇的に、あなたのイメージの世界が出現します。


ただし、それもまた変化していくんですけどね。

庭に、絵を描くように植栽を施してください。
でもそれは、カンバスに描くのではなくて、動画。映画のシーンのように捉えるといい。
春夏秋冬でシーンが変わり、登場人物の心のありようでシーンが変わる。
そんなイメージで。


庭は変化する場所、変化させいく場所と捉えれば、草花の様子にいちいちがっかりしたり、落ち込むことはなくなります。
これって庭だけじゃなくて、仕事の成果や人間関係にも言えることですよね。

すべては流動的なんだから、立ち止まらないことが肝要。
庭も人も、サラサラと淀むことなく流れるイメージで。

落ち込んでる暇があったら、先へと歩を進めるのです。
ぼくが知る「庭達人」って、みんなそういうタイプなんですよね。庭が教えてくれるんじゃないかなあ、そういうこと。毎日庭に出ていると、庭に、そういうリズムに調整してもらえる。
うん、あるなあこれ。


では、今日は南側に回り込んで、もっと鮮やかな花をご覧いただきます。玄関先のプランターです。



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地味目な花も味わい深くていいし、こういうハデハデもまたいいものです。
特にここは玄関先ですから、こういう派手なのがいいですね。気持ちが華やぎます。



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胡蝶蘭の鉢もありました。



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胡蝶蘭を自分で買う人ってあまりいません。たぶんプレゼントですよね。
何かのお祝いで花を贈って、そこに笑顔があふれる。いいんだなあ。

でも、・・・何で花なんでしょう。

花って不思議です。人を笑顔にします。
何で花は人の気持ちに作用してくるんでしょう。
虫にならわかるけど、人間を誘惑したって何もいいことないと思うんですが。


もしかしたら、ぼくらの感性の半分くらいは虫的なのかもしれません。あるいはすべての生物が、花に惹かれる感覚を持っているのかもしれません。何たって(村上和雄教授によると)ぼくらと草花とミミズと、遺伝子構造はほとんど同じだといいますから。

ということはですよ、うちのノア(ワイヤーダックス♀)やミー(キジトラ♂)も、花に心奪われてるってことになります。
有り得ます。時々雰囲気を出しながら、ジッと花を見つめていますから。

だとするとですよ、花はすべての植物の頂点に位置する存在なのかもしれません。
これも有り得る。
地球上の生物が吐き出す二酸化炭素を一手に引き受けているのは、植物なんですからね。

視点を変えれば、植物が霊長類。

あらゆる生物の命を支えていて、さらに、その生物たちのハートをつかむ魅力を持っている。植物が、地球上でもっとも生存能力が高く支配的立場にある種族ってことになります。
人間ですか?地球上に一番遅く現れて、偶然一時的に繁栄して、いい気になって暴れている若造ってとこかなあ。
もしそうなら、ぼくら人間は、そのうち痛い目に合いますよね。それが世の中ってものです。
・・・そのうちじゃないくて、もうそうなりはじめていますよね。

今日は話が転がるなあ。転がり過ぎて、ついつい話があらぬ方向へ向かってしまいました。酒巻さんちの花のことに戻ります。


玄関先の鮮やかな花を撮っていたら、奥様が「中もご覧になって。花がいっぱいあるんですよ」と。
促されて玄関を入って室内へ。そこは音楽教室をかねた、コンサートホールもかねた部屋でした。



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ぼくはこの部屋の光の感じを、夜中のテレビで観ました。フェルメールの映画をたやっていて、そこに出てくるパトロンから与えられたアトリエが、まさにこういう光だったのです。

テーブルの上にズラッと、そして部屋のいたるところに、アートフラワーが飾ってありました。



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ラブリーです。



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そう、庭をプランする前に奥様から出されたご要望「フェルメール&ラブリーな庭」って、この部屋の感じ、こういう雰囲気のことだったのです。



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もう庭は完成して、撮影している段になって、ようやく奥様がお持ちだった庭へのイマジネーションがぼく届きました。
遅すぎですよね。まったくお粗末な展開でした。



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結果的に、ご要望にフォーカスできないままで描いたプラン図とできあがった庭を、とても喜んでいただけたので、まあ「終わりよければすべてよし」ってことにしました。


いやあそれにしてもこの部屋、すてきです。
自分にとっての理想の暮らしをシーンとして思い描いて、それを実現させてゆく奥様の想像力&想像力、ため息まじりに、尊敬し憧れました。
 
イメージできればできたも同然。
 
イメージしてそれを持ち続けていたら、大概のことは実現します。

ぼくは、毎日庭をイメージしてはそれが現実の庭になるということを繰り返しているので、イメージ→実現、イメージ→実現が、日常的なことに感じられるようになっています。イメージ→実現がルーティン。いいでしょこういう仕事。

イマジネーション豊かに、花に囲まれながら暮らす人。
そういう人たちとの出会いに刺激されながら、庭で大汗かいて暑さと蚊にも刺激されながら、さっ、今日も設計設計。