ここまで、ぼくが提案する庭づくりに欠かせない、10のポイントを並べてきました。
目隠しをする、庭に出やすくする、立体的に構成する、風合いを増す素材を使うなど、どれもこれもいい庭を実現するために必要な事柄です。
次なる11番目のポイントは「眺める庭から過ごす庭へ」という、庭への意識の変換です。



小湊さんちをご覧いただきます。
出幅が2メートルに満たない、
狭めの庭スペースです。

小湊様B-1

 


実はこのことをカテゴリーの一番最初に書こうと思ってました。つまりこれが、ぼくがお伝えしたい最大のポイントだったのです。
でも多くの人にとって、きっと違和を感じることなんじゃないかという気がして。だからいきなりこれを言うんじゃなくて、他のことから入って行って徐々にここに近づいていただく方がいいと判断し、後回しにしました。



Before
ビフォー4

After
アフター4
 


庭は長く「眺める場所」として認識されてきました。
家を建てて、建ぺい率の関係で空き地になった場所に木を植え花を咲かせて、それを部屋や通りから眺めるという使い方です。
それも多くの場合、積極的にそう考えて構成したのではなく、何となく、他の使い方が思い浮かばないままに、といのが現状です。ですから「庭」というと、何の木を植えて花壇をどこにこしらえて・・・となるわけです。

庭は植物を植えて、ただ眺めるための場所ではありません。

これなんですよ、庭をイメージしていくときの最初のハードル。



Before
ビフォー7

After
アフター7
 


ではそのハードルを飛び越えるとどんな庭が思い浮かんでくるのか。
それが「過ごす庭」です。

庭は過ごす場所。
一人で、家族で、友人と、庭にいて、庭を感じながら、庭を浴びながら過ごす場所です。


ぼくは自信満々にそう言い切っちゃいます。



 Before
ビフォー13

After
アフター13



もちろん、いろんな庭の捉え方、考え方、スタイルがあります。
どんな庭に価値を感じるかは人それぞれではありますが、でも、よーく考えてください。

あなたは庭で感動したことがありますか?
この庭が自分を幸せへと導いてくれていると、感じたことがありますか?




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庭で食事をし、語らい、本を読み、もの思うことが、暮らしをどれだけ豊かにしてくれることか。

庭に出て、庭を感じながら過ごすということは、つまり庭の声を聞くということ。
庭の声を聞くということは、自然を感じ取り、宇宙と交信するということです。


眺めてばかりいた庭を「外の部屋」と捉え直すことができれば、そこはあなたの家のスペシャルルームになります。
庭の声を聞きながら、その声に導かれるように暮らしていけば、あなたもご家族も、心身が必ずいい状態に整っていきます。
さしたる感動もなく雑草取りに追われるばかりの庭と、日々暮らしを整えてくれる庭と、その差は人生に大きく影響を与えますよ。



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それともうひとつ、庭で過ごすことは子どもたちにとって最高の経験です。

夢中で砂遊びやおままごとに興じているときに、子どもの中に、人生の根っこが育っています。

これは庭屋の実感として、庭で遊んで育つこと、親が庭にいる姿を見ながら育つことがいかに重要なことであるか。



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ものすごい速度で心身を成長させている子どもを、高機密高断熱、快適空調の建物に閉じ込めておくことに抵抗を感じるのは、ぼくが新潟の山奥育ちだからかもしれません。
子どもは自然に抱かれるようにして育った方がいいんです。ぼくはそう思っています。
今は無邪気な子どもたちが、やがて大人になって、人生につまずくこともあるでしょうし、疲れ果ててしまうこともあるでしょう。そのときに、自分の根っこが問われるのです。



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庭で自然を感じながら育った根っこは強い。雑草のような生命力を持っています。

それが太く伸びやかに育つ環境を整えてあげることは、ぼくら大人の大事な役割だと思っています。
外の部屋、過ごす庭はその役を果たせる場所なのです。



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繰り返します。庭は植物を植えて眺めるだけの場所ではありません。
部屋にいるのと同じように庭に出て過ごしながら、季節を感じ、自分を自然と呼応させる、大事な「外の部屋」なのです。







今夜はグレースランドの大忘年会。
一年間頑張ってくれた職人さんたちに、思いっきり感謝の気持ちを伝えます。

我がチームの一番の自慢は「人」です。
とびきり腕がよく、とびきり人柄がよく、酒癖もまあまあよく(笑)、暑さ寒さに負けないでがんばる職人さんたち。彼らに支えられて、庭は誕生するのです。

庭は人がつくるもの。
コンセプトや設計図だけではせいぜい20%で、あとの80%は職人さんの熱意でできあがります。

思う存分おいしいお酒を酌み交わして、新年への展望、夢を語り合いたいと思います。