世の中には天才と呼ばれる種族が存在します。



1933年生まれの、ピアニストであり作曲家の一柳彗(いちやなぎ とし)もそのひとりです。

天才少年音楽家ともてはやされ、その後渡米して前衛音楽に目覚め、アメリカで評価を受けた後に帰国した彼は、こんなパフォーマンスをして大喝采を受けたそうです。




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1961年、世の中は安保闘争の嵐が吹いていました。
彼は全国各地で反体制に燃え上がる聴衆を集めては、ひとつのヴァイオリン曲を発表。

それは今考えると、どう考えても「音楽」とは解釈できないものでした。


ステージ中央には一台のグランドピアノ。

そこにヴァイオリンを抱えた半裸の小柄な女性が登場して、そのピアノの弦の上に、足だけがぶらぶらと外に出ている恰好で寝転がります。

彼女はそのまま何も演奏しない。
しばし沈黙の後に「これぞ前衛!」と、会場は拍手と歓声に包まれたそうです。
今考えるとまったく意味不明。

前衛芸術とはそういうもので、その時代の空気を素材としてのみ成立するアート、時代と交錯してスパークする火花なのです。




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当時若者だった団塊世代の人たちに、今でも燃え盛っていたあの時代の伝説として語り継がれているそのパフォーマンスの主役、ピアノの中に寝転がったバイオリニストが、当時一柳夫人だった若き日のオノ・ヨーコでした。




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熱とカオスの60年代、何だか凄い時代だったんだんですよね。
同時に、世界中から「ビートルズを解散に追い込んだ悪魔のような女」と言われた彼女の才能が、どれほど飛び抜けたものだったのかがわかるエピソードだなあと思います。




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その後ヨーコさんは離婚をし、数年を家族とニューヨークで暮らしてからイギリスへと移住しました。
相変わらず前衛音楽やアートパフォーマンスに夢中になっていた彼女は、ロンドンのギャラリーでコンセプチュアル・アートの個展を開きます。
そして運命の1966年11月9日、オープンの前日、設営中の会場にふらっとやって来たジョン・レノンと出会うこととなります。

超セレブリティーで浮世離れした環境で育った彼女は、ビートルズというロックバンドも、目の前にいる男性が世界を熱狂させている大スターであることも知らずに、無愛想な表情のままで、彼を会場中央のインスタレーションへと案内したました。

そこにはただ脚立が置いてあって、それを登ってゆくと天井に虫眼鏡がぶら下がっているというもの。 

虫眼鏡で天井を見上げると、小さい文字で「 Yes 」と書いてある。




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ああ・・・感動!

あの丸眼鏡と虫眼鏡のふたつのレンズを通して見えた「Yes」の文字、その一瞬から、ジョンは神様ジョン・レノンになり、そして地球上にあの名曲「イマジン」を生み出したのでした。




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物語はまだ終わりません。

その一曲に心酔した当時中学生だったひとりの少年が、歌詞に導かれるままに風変わりな人生を歩み、やがてガーデンデザイナーとなって、横浜に「レノンの庭」という店をオープンさせるのでした。
彼はいつもイマジンを流しながら庭の掃除をしてから仕事を始めます。
ジョンとヨーコに自分の人生を重ね合わせながら、愛と平和の庭を思い描く日々。
その店へは、幸せな家庭を目指すすてきな家族がやってきます。
何組も、何組も。

めでたしめでたし。 








イメージできればできたも同然。




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天才とは天与の才能。
今こうして地球に生息できているという点から見ても、ぼくもあなたもまぎれもなく天才です。

せっかくですからこの命を使って、その才を、思う存分開花させましょう。 







今日は「レノンの庭」にいます。
今夜ニューヨークに舞い降り火花を咲かせる、天才
Divaの歌声に思いを馳せながら。