夜を楽しむ習慣。

夜の庭はまるで宇宙ステーション。
静寂と夜風を楽しむことを習慣にすれば、そこは人生に欠かせない場所になります。 



片桐邸

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中山邸

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天野邸

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ぼくはかれこれ6年半、毎晩欠かさず庭で時を過ごしています。きっかけは東日本大震災の計画停電の夜の出来事でした。
キャンドルを灯して夕飯を食べ始めようとした時に、女房が「あれ、庭の方が明るいよ」と。ご近所一帯が停電区域だったのでそんなはずはないと思いつつも、見ると確かに外の方が明るい。
出てみたら満月でした。驚くことに、月明かりで芝生にぼくらの影がくっきりと映し出されていました。
津波の映像と報道に打ちのめされて、つつけば涙が出る状態だったぼくにとって、数十年ぶりに月明かりに心打たれたその瞬間は、月からの有り難く重要なメッセージなのだと思えて、その翌日から庭で時を過ごすようになった次第です。
すっかり習慣化した夜風を楽しむひと時で、
いち日を振り返り、このブログを打ち込み、本を読み、少々のアルコールと音楽に酔い、明日をイメージする。その心身への効用は計り知れず、おかげでとても充実した日々を送ることができています。
設計においても必ず照明器具を配置するようになり、お客様にも「庭は夜が一番ですよ」と伝えるようになりました。
今夜も心地いい疲労を夜風に溶かしつつ、充実の今日を振り返り返っています。マツムシの声と、遠くで十秒に一度輝く江の島灯台の灯りにエールを送られながら。



その昔、タモリの「今夜は最高!」という番組がありましたよね。
第一回ゲストが、当時お嫁さんにしたい女優 NO.1の
竹下景子だったことを、なぜか鮮明に記憶しています。
その番組のオープニングに使われていた曲がこれ。



バド・パウエルのクレオパトラの夢。
当時のぼくにとってジャズはとても遠い世界の音だったのに、
何だか衝撃的にカッコよく感じられて、
それからレコードを買い漁って
ジャズにのめり込んでいったのでした。
チャーリー・パーカー、マイルス・デイビス、レッド・ガーランド、
そして今でも設計のBGMの定番になっているキース・ジャレット。
今夜はこのまま、バドの粗雑で艶かしい指使いに酔いながら、
睡魔に押さえ込まれるまで村上春樹をめくることとします。
今年こそノーベル文学賞を、という願いを込めて。

 レッド・ガーランドもそうなんですけど、
テクニックとは別の時空で響いてくる何か、
情念とか情感とか情熱とか、
そう、情が奏でる音というのはたまらなくいい。
ぼくの設計にも、そんな味わいが出せたらいいなと思っています。 
 


もういっちょ、
日本ジャズ界のクレオパトラ、秋吉敏子が弾くとこうなります。


 

現在87歳にして現役。
ぼくが生まれる6年前に、すでに
伊勢佐木町のクラブ「モカンボ」で演っていたそうで、
巷に伝説が溢れる横浜の、語り草のひとつになっています。