芥川龍之介の「白」という物語がある。主人公の白という白い犬がある出来事から黒くなってしまい、その神様のいたずらを嘆きつつも、艱難辛苦の末に幸せな日常を取り戻すという、大人になって読み返すと随所の示唆が胸にしみて、油断すると嗚咽してしまうほどの、あなたも機会があれば是非にと思う心洗われる物語だ。



短かった今年の夏、
仕事仕事の中で半日だけ遊んだ、
おさびし山の小川での夢のような記憶。
二人とも健康でいてくれて、
神様仏様、八百万の神々に感謝感謝。
来年はもっと頻繁に行こうと思います。
こんなに楽しそうなんだから、
仕事を言い訳にしていたらバチが当たるなあと、
大いに反省反省。


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とおすすめしたからにはネタバラシを慎みつつ、その白が有する能力について少々。白は人の会話を解する犬だ。だが人には白の主張も訴えも、ただワンワンと聞こえるだけである。



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さて、わが家の犬たちはというと、最近とてもよく吠えるようになった。散歩が足りないのが原因だとは思うのだが、いわゆる要求吠えで、おやつをくれよワンワン、ドアを開けておくれよワンワン、ボールを投げてちょうだいワンワン、ベッドに上がりたいんだワンワンといった具合だ。



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物語とは違い、ぼくには彼らの主張はだいたい理解できる。内容によって吠えるリズムとボリュームが違うのだ。では彼らは白のように、ぼくの言葉が分かっているのかといえばさにあらずで、懸命に語りかけても、瞳を見つめてこんこんと畳み掛けても一向に言語を理解する様子はない。



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まあ現実は物語のようにはいかないとしても、愛する同居人たちとの意思の疎通はできるだけ良好にしたいものだと、あれやこれやと思案しながら暮らすうちに、彼らはぼくの手の動きと、表情と、声のトーンでこちらの意図を受け取っていることが判明した。



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特に声が重要だ。低い発声は注意喚起や強い指示、穏やかな声は信頼感の表明、ほめる時と遊びに誘う時は高い声で。それをきっちり使い分けると彼らは驚くほど親密に、ぼくの意思を理解してくれるようになった。ただしそこには主従関係はなく、ぼくが彼らの仲間に入れていただいたような関係性ではあるが、そうなってみれば、これこそ理想の家族関係ではないかと思うに至った。



帰宅してシャンプー完了。

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ランゲージはこれでいいのではないかと思う。言葉に意味を持たせるよりも、表情や仕草や発声のトーンでコミュニケートする方が、明らかにストレスが軽減される。



ミーは「どこいってたの?」と、
留守居役の不満顔。


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そんなわけで、この頃では女房から速射砲のように発せられる言葉から(一を聞いて十を知る、というのは賢者の証しであるが、一を言えば十返ってきては、いかな賢者もたまったものではない)、極力言語的意味を受けとらないように努めている。ことにご機嫌斜めでアルコールが入った時には。
これは艱難辛苦の末に見い出した、我が生きる知恵。この際こちらの意思表示は、ワンワンのバリエーションで伝えようかという、ポンと膝を叩く妙案も浮かんでいる。けだし名案だと思うんだワン、ワンワン!



今日もやってます。

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見慣れた庭を
劇的に楽しく幸せな場所に変身させる、
膝を叩く妙案をご伝授します。



というわけで本日の出囃子は、
非言語的にして雄弁極まりない、
つまりはインストゥルメンタルの超名演を。
メロディーに、いちいち自分なりの思いの丈の歌詞を
紡ぎたくなるのです。



それにしてもほんま、上質にイカしたおっさんたちやで。
ワンワンワンのワンダフルや!