料理人の世界では「味の素で蓋をする」ということが言われます。グルタミン酸イノシン酸等のうま味調味料を使うと簡単に及第点の味になるが、まるで蓋をしたようにそれ以上にはならないという意味です。



日限山公園の野鳥たち。 
野鳥に限らず自然界では
幸せな暮らしと生存とはイコール。
だから夫婦喧嘩はしないのかと思いきやさにあらずで、
鳥も昆虫も哺乳類も、
浮気もすれば嫉妬も離婚もままあるわけでして。
生存がかかってますんで
さぞかし真剣勝負で揉めるんでしょうね。

DSC01445



夫婦の揉め事というのは大概、男性が女性の論理性にかける感情任せな言動に憤慨し、女性は男性の感情を論理で解析する理屈っぽさに感情を逆なでされるというパターン。男は情感(外界に感じるもの)の世界を理性で歩み、女は理性の世界を感情(内面に発生するもの)で歩むものなり。だからして理性はなんとか合致させられるものの、情感と感情の違いが問題なのであります。



DSC01476 2



男性が身につけるべきは感情の理解、女性に必要なのは情感の理解。双方共にこの至難の歩み寄りをしないことには和解できないという難解な生物学的公式が存在するのです。これを解くものはただひとつ、知性。つまり神様は、お互いに知性を磨きなさいという命題を遣わしたわけで、清少納言がエッセイ集の中ですでにこの男女のギャップを嘆いているので、これは男と女に本来的に設定されている、おそらくは人以外の雌雄の別がある生物の多くにも設定されている課題であると想像します。



DSC01506 2



そのギャップが露呈した際に多くの男が使ううま味調味料が「あきらめ」。女房には逆らえない、言い出したら聞かないし、揉めたらきりがないからと白旗を上げて女性の感情噴火にひれ伏してしまう。とっても、とっても、とーってもよくわかりますが、それはふたりの関係に味の素で蓋をすることになりゃあしませんでしょうかねえ、と思うのですが。



DSC01457 2



女性は不満を理解して欲しくて感情をぶつけるのですから、その感情の裏にある事柄を理解できないままに「そうだよねえ」とか言っちゃってトラブルを回避したら、女性が抱えている根本的な問題は未解決のまま置き去られるわけで、活火山のごとくで必ずまた噴出するのは必定。するとまた男は「ごめん、俺が悪かった」と噴石を避け、悪いなんて少しも思っていないのに、そもそも何が悪いのか見当もつかないままで御身大事と退却し、女性としてはそれがまた気に入らないもんだから感情の攻撃が激化してゆく。そんなこと繰り返すうちに、ついには天使の容姿と裏腹に息を潜めていた堕天使悪魔が登場し、カインとアベルか、はたまたジキル博士とハイド氏か、物語は混沌とした中盤を迎えるという展開になります。



DSC01484 2



男性諸氏、急ぎ白旗を撤回すべし。白下げて、赤上げて、赤下げないで、白上げない。敵国の要求は降伏ではなく、幸福なる理解による和解なのでありますから、がっぷりと四つに組んでの横綱相撲を。理解し合いたくて難癖つけている相手から体をかわす逃げの一手では、相手が望むロマンチックな取り組みになるはずもなく、そのうち横審からもクレームがついてしまいます。しゃにむに出かける家族旅行や貢ぎ物などでは奥様の心の家計簿は帳尻合わず、まして感情の発露の言葉に従って意味ない庭なんかつくろうもんならさあ大変、困ってしまってわんわんわわん、大枚叩いて盛大に愚痴のタネをばら撒くようなもの。そんなんなっちゃったらSNSでは笑顔で寄り添えても、深層にある真相は逆方向にステップ踏んでダンスはうまく踊れない仮面舞踏会の日々。12時になってあの鐘が鳴れば魔法が解けて、すっかり濡れ落ち葉と竹箒、ああ悲壮なりミッドライフ・クライシス。



DSC01498



そもそも大事なパートナーと「あきらめ」の上に平和を築こうなどという砂上の楼閣は、上官殿、情感豊かでロマンチストなわたくしには到底できかねます。ですから理解を得るために、和解の茶会を執り行うために、大いに揉めることといたします。
そこそこでこそこそと退却の体たらくでは「きみを幸せにする」という誓いに反するし、自分自身もそこそこに終わってしまうし、ぼくにはとてもとても無理なこと。そんなことしたらまともな庭なんて描けませんしね。いいじゃないですか、今は不味くて食えなくたって、化調抜きで修行に励んで至高の味を目指す方が。永さんとこや、野坂さんちや、巨泉さんちもノムさんとサッチーもそうだったようにね。



DSC09885



とは言うものの、うま味調味料は便利がいいので常備しておくとして(野沢菜にふりかけると最高)、大切な人と思い描いていた素敵な関係性を(おお、素敵とは素の敵と書くのですね。なんとステキな)、女房の美しさにときめき止まぬ、旦那の夢に寄り添い進む、互いに笑い皺だらけの理想の夫婦をあきらめてはいけないのです。ふたりが天使と騎士だったあの頃の、仮面をつけぬ素顔のままで。



DSC09978



男たちよ、ああ男なら男なら、もしかしてだけど、振り絞ればまだ幾分のパワーが残っていればだけど、オスとしての気概が残っていればだけど、そのあばれる君な女性をなんとしても、おぶってでも引きずってでも約束の地へ、ロマンティークに花香る幸せの絶頂までお連れするように、四面楚歌でも退路を絶って(黙って俺について来いと、そんなに好きならついて来いと、つまりは離婚上等で。たとえエデンの東に追放されても、そこは日出ずる国の方角ですから何も悲観することはないのです)奮闘努力されますように。女房殿の口撃に腰が引けて尾っぽが巻いちゃっているようでは、後悔なき航海の舵取りはできませぬ。

Pray for a good fight.

なぬ、船頭は奥様?それはそれは恵まれた境遇でいらっしゃる。こりゃまた失礼いたしました。それで、航海は、はあ、順調ですかあ。妻を娶らば才長けて、見目麗しく情けありってえわけですね。そうですかそうですか、うらやましい限りですなあ。
そうじゃない船頭さんは、女房子供を先導しながら先頭切って戦場へと突き進みましょうぞ。