春を待つ手紙。

「風立ちぬ、いざ生きめやも」忘れていた言葉がよみがえった。
季節は今までの遅れを取り戻すかのように、急速に進み始めた。鳥はさえずり、周囲の緑は、病室の中までも爽やかに色づかせた。そして、そこにあるお前の匂い、呼吸、ほほ笑み、平凡な会話、後には何も残らないような毎日が、この上なく幸福であった。 堀辰雄『風立ちぬ』より



陽だまりでは、春の揺らぎがすぐそこに。
ある日突然、春を待つ人からの手紙あり、
その言の葉は温かし。 
恋(いと)しさと、切なさと、心強さと、
ありがたきかな遠きもとかの。
ありがたきかな遥かなる山の呼び声。

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直子より

追いかけました あなたの姿だけ
幼いあの頃の想い出あたためて
あれから幾年 友さえ嫁ぎゆき
その日を待つように父母も逝きました

人間だから求めてしまうけど
それこそ悲しみと知ってもいるけれど


俊一より

変わらぬ心を素直と呼ぶならば
オイラの気持ちは最終電車だろう
涙を見せると足元がフラフラリ
女々しくなるまい 男の意気地なし

時間が僕らに別れをすすめてる
このままいることで 寒い冬越えられぬ


直子より

約束なんて破られるから美しい
誰かの言葉が身体をかすめます
あなたはあくまで男でいてほしい
私を捨てても あなただけ捨てないで

傷つくことに慣れてはいないけど
ましてや 他人など傷つけられましょか



俊一より

夢またひとつ二人で暮す街
通り通りゃんせ オイラだけ通せんぼ
これが最終のひとつ前の便りです
春には小川に 君の櫛流します

待つ身の辛さがわかるから急ぎすぎ
気付いた時には月日だけ年を取り

誰が誰かを恋しているんだね
それは当てのない遥かな旅なんだね
旅する人には人生の文字似合うけど
人生だからこそひとりになるんだね

ここでも 春を待つ人々に逢えるでしょう
泣きたい気持ちで 冬を越えてきた人






今日は金沢文庫店にいます。