このブログで以前ご紹介した蟻川さんご夫婦が、港南台店に立ち寄ってくださいました。いつもながらお二人ともニッコニコで、園芸売り場で買い物途中のカートには山ほどの花苗と肥料が。庭を楽しむ暮らしぶりがうかがわれて、とてもうれしくなりました。
ご主人は名前に「蟻」が入っていることが作用したのか高名な生物学者でして、研究テーマは蟻ではなく蝶の色彩感覚という、これはもうぼくの興味のど真ん中に位置するものなのであります。だから庭は蝶が好む蜜を出す草花と産卵のための樹木だらけ、一風変わった楽しい空間になっています。それに加えてお二人とも人間にも興味津々なので、ぼくが提案した「集う庭」に共感してくださり、しょっちゅうお友だちや学生さんたちを招いてBBQを楽しんでいるとのことでした。
そんなチャームなご主人を引き当てた、あるいは引き当てられた奥様はどういう女性かと申しますと、これまたチャーミングなお方でして、自宅でアロマを使ったヒーリングサロンをやっているという、なんだかおしゃれな雑誌に登場するような生活をされてています。よくぞこういう組み合わせのご夫婦と知り合えたものだと、わが身の幸運をありがたく思っている次第です。

で、今日は生物の色彩感覚についてです。
蝶をはじめとする花の蜜を糧にして生きている昆虫は、人間的な感覚でいうとモノクロームの世界の中に黄色だけが際立って見えていると言われています。その理由は、黄色が、先祖代々受け継がれてきた花と昆虫との約束事の色だからです。



鳥は人間よりも視力が良く、
色の識別にも優れているそうです。
そんな鳥社会にあって
あえて純白を身にまとうとは、
なんと素敵なおしゃれさん。
あまたある色の中で
白色の美しさは際立ちますね。

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虫が蜜を吸いに来ることによって受粉する花(虫媒花)の虫へのアプローチは、大別すると、香り、形(模様)、色の三つに分かれます。 あるいはそれらを併用することで虫を誘き寄せて受粉を成就させようとしています。その三大戦略の内で最も多く実践されているのが色。身近にある花を観察してみてください。何色の花であっても中心部分は黄色いものが多く、そうじゃない場合でも雄しべ、雌しべ、花粉は例外なく黄色系です。 



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つまり、生存のために識別する必要がある色だけを認識するようにできているわけで、ではぼくらヒトはと申しますと、蝶と比較したら驚異的に色とりどりな世界にいます。まだ南アフリカの森にいた猿の時代に特に発達したのが赤系(血液の色)の識別能力だそうで、それは発情期を知ることと、子どもや仲間の顔色の変化から、健康状態や機嫌を知るために備わったそうです。その後もコミュニケーション上必要な、強さのアピールや愛情表現のために色を活用し、色に楽しみや幸福感を見い出し、絵を描き、器に彩色し、花を愛で、花のように着飾り、そうこうするうちにこの色彩感覚が身につきました。



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現在ぼくらは、脳内で三色の絵の具をパレットで混ぜながら、見るものの美醜や安全か危険かを判断して暮らしていますが、進化は止まらないものでありまして、どうやら四原色を察知できる新人類が登場しつつあるようです(元々四原色を感知できたのに、昼間だけ行動するようになって、退化して三原色感知になったという説もあります)。 
四色の絵の具を使って見る世界って、さぞかし美しいんでしょうね。ちなみに四番目の色世界は紫外色だそうでして、見たことがないものは想像できないわけですが、たぶん青系の神秘的な、ピカソの青の時代とか(パブロくんは四原色の世界にいたのかも)、銀河鉄道の車窓から見える宇宙の色とか、そういう風景なんでしょうね。



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至近距離まで近づいても逃げるそぶりなし。
蝶々相手に、葉隠の術の修行を積んだ成果なり。




色の感知は必要の賜物。春に向けてたくさんの花を植えて色彩豊かな暮らしを。

色は匂へど 散りぬるを
我が世誰そ 常ならむ
有為の奥山 今日越へて
浅き夢見じ 酔ひもせず 

うつつの時間内に幸せな風景を描き切るには、有り余るほどふんだんな絵の具が必要です。
庭ですよ、庭。