打ち合わせで男の子がいるお宅に伺うと、玄関や庭の隅に昆虫飼育用のプラケースを見かけます。カブトムシの幼虫です。
虫好き親子であるわが家も、かつて十数年に渡って飼育していたのでとても気になって、庭の話はそっちのけで幼虫の数や生育状況を確認し、上手に羽化させるためのアドバイスをあれこれとするのです。

振り返ると昆虫飼育は幸福な記憶の1ページでした。
お母様方、虫は苦手とか言っていないで
一緒に楽しんであげてくださいね。
男子社会では、虫好きなお母さんはかなりの自慢です。

895fbb45

8a611b04



年明けのこの時期に大事なのは、ますは掃除。ケースの中がスイカの種状のフンでいっぱいになっていて、昆虫用の土(コナラやクヌギのおが屑を発酵させたもの)が残っていないことがありますので、フンを取り除いて土を足しておく必要があります(適度に湿らせて、ふかふかしないように軽く圧縮する)。次に幼虫が混み合わないように分けること。20センチのケースなら3匹程度にしてください。それ以上だと蛹室(蛹の個室。幼虫がコロコロ動きながら自分の粘液を使って壁塗りをしてつくります)の壁が薄くて壊れる可能性がありますので。あとは、衝撃で蛹室崩壊せぬように、ケースを動かさないように注意してください。
これらのことを整えてあげないと羽化できずに死んでしまいますので、幼虫だけに要注意。



31f81ee0

52dd36a0



芋虫が蛹を経て全く違う姿の成虫として羽化する様子、メタモルフォーゼは、男の子にはたまらないロマンなわけです。
蛹の体内で何が起こっているかといいますと、硬い殻の中で細胞がいったんドロドロのミックスジュースのようになってから、見た目に別の生物である成虫へと再構成される。ぼくはこのことが、自身の記憶から「男子の思春期と似ているなあ」と思っています。少年が青年になるための通過儀礼、あの思い出しても辛くなる混沌と不安と悶々の日々に。



39447e2f

90b3b8eb



大人は全員嘘つきに思えるし、世の中は欺瞞と堕落に満ちていると思えるし、こうなったら革命を起こすしかないのだと、わけのわからない炎を上げていたあの頃。本当に感謝するんですけど、親はぼくのその数年間を、ただ放っといてくれたんですよね。おかげで蛹室が崩れることなく羽化できました。



90a906c4

53455bfe



女性であるお母さん方にとって、男子のメタモルフォーゼは未知なる世界であり、驚きと苦悩の連続だと思います。かさばるし、臭くなるし、反抗するし、なんだかぼーっとしていたかと思えば怒り出したり、突然走り出したりで。
それですね、銀河祭りの晩にお使いに出て、彼なりに大変な日々なので疲れ切っちゃって、途中の草原でごろっとなったらうとうとしてしまい、しばし夢の世界をさまよっているだけなのです。だから探しに行ったりせずに、目が覚めて帰ってくるのを知らん顔して待っていてください。そのうちに必ず、お使いの牛乳と、あなたの牛乳に入れてあげようと買い求めた角砂糖を持って駆けて帰ってきますから。



b5104de1

39707471



ジョバンニは頂の天気輪の柱の下にきて、どかどかするからだを冷たい草に投げました。
町の灯は、暗闇の中をまるで海底の竜宮城のように灯り、子供らの歌う声や口笛、切れ切れの叫び声もかすかに聞こえてくるのでした。風が遠くで鳴り、丘の草も静かにそよぎ、汗でぬれたシャツも冷やされました。ジョバンニは町はずれから、遠く黒く広がった野原を見まわしました。
そこから汽車の音が聞こえてきました。その小さな列車の窓は一列小さく赤く見え、その中にはたくさんの旅人が、リンゴをむいたり笑ったりしているのだと考えると、ジョバンニはもう何とも言えずな悲しくなって、また眼を空に向けました。
するとどこかで不思議な声が、銀河ステーション、銀河ステーションと聞こえたかと思うと、いきなり目の前がパッと明るくなって、その眩しさに、思わず何べんも眼をこすりました。
気がついてみると、さっきからごとごとごとごと、ジョバンニの乗っている小さな列車が走り続けていたのでした。ほんとうにジョバンニは、銀河鉄道の車窓から外を見ながら座っていたのです。



6e06c769

6cb04dd2



ただ経験上、男子にひとつだけはお世話をしてあげてください。それはご飯。
手に負えず理解不能だったであろうぼくに、毎日黙って弁当を持たせてくれた母に、心から感謝しています。





久しぶりに、ちょっと変化球で攻めてみました。明日はストレートの豪速球を、嫌らしく左寄りいっぱいに狙います。明後日は多分、意表を突く山なりのスローボールで(って、予告したら意表ではないんですけど)。


今日は金沢文庫店にいます。