ぼくは気に入ったことを繰り返す。気に入った本は三回読むし、気に入ったラジオ番組のいくつかは二十年以上聴き続けているし、テレビではここ数年、小さな旅と探偵ナイトスクープとホンマでっか!?TVを欠かさない。朝晩庭に出て過ごすことはもうすぐ七年、友人に半ば強引に勧められて始めたこのブログはいち日も欠かさずとうとう十二年だ。
冷めない、なかなか冷めない、どころか、繰り返すほどに熱を帯びてくる。しかしそれは執念深いわけではない。根性があるとか、そういう類いのものとも違う気がする。執念も根性もどちらかといえば薄い方なので、幼な子が同じ絵本を何度も読んで欲しがるような、単にそういう性格か、あるいはまさしく幼いのかもしれない。頑固という人もあるがそれとも違う。なんというか、反復が楽しいのだ。



早朝の山陰でススキが凍りついていた。

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なんと冷たい試練であろうかと足が止まったが、
立ち尽くす頑固ジジイにも朝日が射してきて、
みるみる溶けて和らいで行った。

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何を思うか枯れススキ。

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やむなくばったり倒れるその時までは、
武蔵坊の気概で立ち続けよとエールを送る。

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さすればその頑固成分が、
三寒四温でシェイクされ、
この山のいい肥やしになることだろう。

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自然の冷たい試練かと思いきや、
瀬上池まで行って戻ってきたら、
すっかりご機嫌に春めく陽射しを浴びていた。




性分とは別に、宇宙には慣性の法則があり、その物理的な決まりごとが精神や思考や行動パターンにも影響している。草木や昆虫を観察すれば、それは明らかなことだ。そう結論づけると、ぼくのこの傍目には退屈そうに、あるいは粘着質に見えるかもしれない日常にはそれなりの正当性が得られるだろう。
ことに男性にはその傾向が強い気がする。ぼくの父も、女房の父も、年齢が行くほどに同じ行動を繰り返し、変わったことは避けるようになるんだなあと何度も感じてきた。だからぼくがそうなるのは自然な成り行きだ。

ただしこの習性には欠かせないことがひとつある。それは「刺激」、同じことを繰り返すために常に新鮮な刺激が必要となる。弓で弾く類いの楽器の弦を指ではじくピチカートのような意外な刺激が。
ピチカート。楽譜に記されるピチカートの記号は地図記号の果樹園に似ている。だから反復には果実が必要なのだ、と、こじつけてみる。おお、これは案外いいかもしれない。年齢が行くと、男はジューシーな果物、スイカとか洋梨とか、そういうものが無性に食べたくなることがあるのだ。ことに二度寝するしかないほど早すぎる早朝に目が覚めてしまった時などに。あるいは辛いもの、酸っぱいもの、臭いもの、やたらに甘いもの、とにかく刺激が欲しくなる。

女性の皆様におかれましては、かつては行動的にリードしてくれた男がそうでなくなっても、落胆なさらないでください。それはいたって正常な変化です。その男は長い思春期を抜けて、ようやく忌まわしい中二病を脱して、ついに人生の成熟期を迎えたのです。
だから基本、放っておいて、もしも退屈そうに見えたら弦を指でつまんでバチン!と。でないとそのまま意識が薄れてゆき、毒にも薬にもならない、影の薄いおじいさんになってしまう可能性があるので。まあいずれはそこに到達するのでしょうが、できるだけ長引かせた方が介護を先延ばしにできるでしょうし、芝生の手入れとか、天井の電球を取り換えるとか、何かしら役に立つこともあると思うので。

女性は変化を好んでどんどん活発になり、男性はルーティンと称して反復を好むようになる。そうそう、女房は乗馬を始めたらしい。そうじゃなくてもバレイだ、お芝居だ、コンサートだ、食事会だとお忙しそうなのに、その好奇心と行動力はたいしたものである。一方ぼくはといえば、庭の書斎でのひとり時間がいよいよ楽しくて仕方がない。
毎晩ジューシーフルーツや、辛いもの、酸っぱいもの、臭いもの、やたらに甘いものをつまみにお酒を舐めながら(好きなんですけど、幸いにしてとても弱いので)、音楽を楽しみ、本を楽しみ、それに加えてこの頃では沈思黙考する時間が増えてきた。その無為な時間には、気づくと女房のことを考えていたりする愛妻家である。例えば、あの暴れ馬を乗せる馬は、仕事とはいえさぞや大変であろうなどとその姿を想像したり。おっといけねえ、こんなこと書いたら指ではじかれそうなのでこのくらいに。

女性は変化を求め、男性は変化を避けるようになる。これが神の差配だとすれば、さて、そのココロは。まあいいか、お互いそれぞれに、存分に楽しいのだから。
この道を行けばどうなるものか。行けばわかることなれど、どうやら若い頃に思い描いていた、チャーミーグリーンな老夫婦とは、いくぶん様相が違ってきた。





バルトークの自分に妥協を許さぬ姿勢は、
まるで苦行者のようだったそうです。
厳格で近寄りがたく、でも時々とてもユーモラスで、
悪い人ではなかったようです。

 取っつきにくいけど、聴き出したら
どこまでも引き込まれてゆく、
これが頑固ジジイの世界なり。






今日は港南台店にいます。