今シーズン、もしかしたらぼくは日本で一番ススキを見つめた人かもしれません。でもまあススキ研究者がいるかもしれないし、リビングの外の庭に生えているススキを、毎日、朝晩見つめてはもの思っていた人がいたかもしれないので一番じゃないにしても、かなり上位にいると思われます。言い換えれば、そんな粋狂はそうそう存在しないであろうということなのですが。こういう一般的には誰も興味を示さない事柄に意識が向く自分の性質に興味が湧いています。



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昨年の今頃は雑草のホトケノザが妙に愛おしく思えて、ずいぶんシャッターを切りました。



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さて、来シーズンは一体何に惹かれるのやら。ホトケノザとススキがそうであったように、きっとその注目対象は、自分の想像域の外側にある何かなのだろうと思います。



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自分で自分の未来が予測不能であるという、若い頃には不安で仕方なかったこのことが、今は大きな楽しみとなっています。



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思い起こせば今から10年前は、設定した目標に向かうことを良しとしていました。



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その10年前は、生活に追われて目標どころではありませんでした。



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さらにその10年前は「ここでなはい」ということだけが明確で、たださまよっていました。



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その10年前は、音楽と絵画と女の子とのことを考えていました。



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その10年前は、毎日雲と、時々は蟻と、稀に妖怪と会話をして過ごしていました。



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それ以前はぼうっとしていたようで、記憶は微かでおまけに鮮明ではなく、ただ、とてもドキドキして、とても楽しくて、とても怖くて、とても不思議で、今思えばですけど、とても幸せに満ちた期間でした。



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さて、10年後は一体何を。というか10年後があるのかどうかが心配はお年頃となっているわけです。



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火の鳥に登場する猿田彦のように時空を行き来する永遠の命が欲しいなあと、彼のように、苦悩し続けることを代償にしてでも、予測不能な自分の未来を確認し続けたいなあと、そんな愚にもつかない妄想に浸るこのような時間も、夜の庭で過ごすお楽しみのひとつなのであります。



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手塚治虫はあの物語の各編にちらっと脇役で登場する、お茶の水博士と同じ大きな鼻をした大男に自分を投影していたんですよね。そのことに、最初に読んでから半世紀が経過した今頃になって気づいたのでした。



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ちなみに猿田彦とは古事記に登場する神のひとりで、その清廉な人柄がアマテラスのお眼鏡にかない、天孫降臨の際に、三種の神器を携えた高天原のアンバサダーであるところのニニギ(アメニギクシクニニギシアマツヒコヒコホノニニギ)が無事に高千穂の嶺まで行けるようにと、案内係に指名された「導きの神」です。
さらにちなみに、三種の神器とはマガタマとカガミとツルギでありまして、それぞれに由来とメタファーがあります。その件に関しましてはまた別の機会に、ということで。





今日は港南台店にます。
古事記はなかなか読むのが大変ですが、手塚治虫の火の鳥は漫画なので簡単に読めます。名作揃いの手塚作品の中にあって、火の鳥の出来栄えは別格にして格別なので、まだの方は是非一度。