晩秋から冬を越えて楽しませてくれたビオラも、
とうとうあと一週間でお終い。
引っこ抜くときに、ありがとね、と口に出る。


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春先からの暴風報道も止んできたので言っちゃいますけど、Bフェチのぼくはアッキーのファンなのです。いいんだなあ〜、あの神をも恐れぬ傍若無人にして野生動物的な天然さ。それとですね、ついでにアッキーの旦那さんも好きなのです。理由は、河口湖に住んでいる友人の愛犬が行方不明になって、ポスター貼ったりして探し回っていたときに、別荘に来ていた彼がそれを知ってSNSで拡散してくれたから。細やかな職業的パフォーマンスという見方もできますが、ぼくはその時、心から感謝しました。
彼の仕事ぶりについては云々しません。男はそれぞれの分野で懸命に働けばそれでいい。農家は農民として、商売人は商人として、公務員は公僕として、女房子どもに恥じぬ仕事をすればよし。
ところがここにきて、とんでもなく恥ずかしい官僚が話題になっていますよね。女性からしたら怒り心頭でしょうけど、きっとそれを通り越して「なんでここまでしらを切り続けられるの?」と不思議な生物のように見えていることと思います。でもぼくから見ると、あのお方は典型的なんですよ、典型的な出世&自滅タイプ。
今日はそういう男性の取説を記しておこうと思います。



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父は、怒りに震えて詰め寄る娘に言った。

ブルータス、お前もか。

はあっ?なにそれ。お父さんね、わかってんの?そりゃあお母さんは酒癖悪いし、料理も下手だし掃除も嫌いだし、口を開けば文句ばっか言っているし、だけどね、私たちのお母さんなのよ。私たちは家族でしょ、家族。なのになんであんな女と。なんで、キッショ!ああキッショ!なにあのケバケバオババ。アタシはねえ、よりによってあんなビッチにフラフラするお父さんに幻滅しているのよ。

おいおい、まあ落ち着いて。お前はわかってくれると思っていたんだけど。

父は投げつけられる言葉の意味よりも、自分の一部のように思っていた娘がちぎれて離れてゆく展開に動揺した。動揺しながら「ビッチ?なんだっけそれ。あとで検索・・・」などと思っているところに波状攻撃が。

はあっ?はあっ?はあっ?落ち着いて?一体全体なに言ってんの。落ち着いて考えたほうがいいのはお父さん、あんたの方でしょ。一丁目一番地のそもそも論ですけどね、売れない物書きでろくな稼ぎもねえくせに親父づらするんじゃないよ。男ってのは女子どもを養ってこそ男だろ。なに、あんたのやってきたことって。夢だのなんだの言っちゃって、外では家族が大事、やさしさが大事ってきれいごと並べてさ、もうねえそういうところがうんざりなんだよ。あんたなんて、腹のたるんだ加齢臭ビンビンの、無自覚無責任な怠け者じゃないか。ああ嫌だ嫌だ。

いや、・・・なんというか、ごめん。でもね、

でもねじゃねえ!あああああ人類史上最低最悪エロ親父!言っとくけどあんたは初犯じゃないし、ほとぼり冷めたらまた調子コイてこういうことしでかすから、ねえ、ホントもう、ああもうダメ、お願いですから地球から消滅していただきたいんですけど。 

そして娘は毅然として、呆然とする父に、一文字も無駄のない最後通告をした。

とっとと出てって。

反応を確認することなく踵を返し去って行く娘の背中は、清々した時に女性が見せる、軽やかにして颯爽としたものだった。



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さてお立ち会いの皆様、この男の行く末はどうなるでしょう。ぼくは、この男は裏切られた家族よりも幸せに暮らして行くのだろうと思うんです。
稼ぎが悪いのなんのと文句を言う家族よりも、夢を語る自分を優良誤認し褒め称えてくれる女郎蜘蛛の餌食になるというこの展開は、ナルシストによく見られる症状なんですよね。つまり入院に至らない程度の、薄っすらとしたレベルの病なわけです。
神様はどこまで慈悲深いお方なのかと敬服します。苦悩に負けて道を誤る弱き者には、真摯な努力によってそうならない健全な者以上の加護を与えます。その加護とは「他者の痛みを微塵も感じない」というもの。だから家族がどんなに苦しんでも、他人がどれほど忠告してもわれ関せずというかその意味を感知できないものだから、「なにが悪い、俺様の幸せが人類の幸せなんだ」くらいに思って、どこまで行っても、行けば行くほど傲慢な幸福感に包まれるという厚遇が得られます。



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このナル回路は生物全般としてはごく普通のことでありまして、そういう意味ではワイルドであるとも言えます。ただし脳が発達し社会を形成している種族においては悲劇の元凶となる悪魔の思考回路。日本人は古来より、この手の男に「つける薬はない」と、「死ななきゃ治らない」と言い伝えてきました。たしか、サンスクリット語でクルクルパーと言います。ああ悲しきかな、世に数多いる彷徨える雄ザルどもに、どうか気づきの日が訪れますように。



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そんなこととは無縁の健全なるパートナーをお持ちの皆様、ほぼ健全だと思っている皆様、かろうじて健全さを保っているように見える皆様、年に何度かちょいとヤバいかなと感じる皆様、日々、彼のメンタルケアを怠りなきようお願いします。特に慢性的に周囲への不満を抱いている、例えば夏には暑さを嘆き、冬には寒さに文句を言い、春は強風と花粉に苛立ち、秋は感傷的に落ち込んで身動きできなくなるというような、季節を敵に回している場合は危険信号ですから、くれぐれも、くれぐれも。あ、それとですね、いつもテレビに向かって不愉快な正論を並べ立てているというのも要注意。



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ならぬ、我が命令は覆らぬ。このシーザー、確固不動たること北極星の如しだ。

皇帝は、あえて苦言を呈する側近に向かって、財務官僚など及びもつかぬ迫力と威厳でそう言い放った。

どうかお考え直しを。権勢並ぶ者なき偉大なるシーザー閣下。

下がれ。おぬしはオリンポスの山を動かすつもりか。

んん・・・もはやこれまでか。自由万歳!共和制万歳!ドリャー!

な、何をする。気が違ったかキャシアス。

そこへ腹心の部下ブルータスが駆け寄ります。

親愛なるシーザー、今行くぞ!

おお我が守護神ブルータスよ、低俗週刊誌の記事に踊らせされているこの狂った男を切り捨てよ。

ブルータスは唸るように「自由万歳、ローマ万歳」と言い、キャシアスではなくシーザーの胸を突き刺したのです。

ドスッ!

ブ、ブルータス、お前もか。もはや英雄シーザーも、こ、こ、ま、で、か。バタッ。

許せシーザー、これもすべてローマのためなのだ。

そこに登場してくるのがシーザーに忠誠を誓って長く仕えてきたアンソニー。彼は民衆への巧妙な演説によってブルータスを退け、まんまと王の座に就きました。舞台はここから、アンソニーとクレオパトラによる悲劇の恋物語へと展開してゆくのです。



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暴君シーザー、進言者キャシアス、裏切り者ブルータス、知恵者アンソニー、全員が色濃くナルシスの亡霊に取り憑かれていました。つまり、全員が病的に自分本位で他者の痛みを知ることがない。しかるにこの頃の物語は総じて悲劇なのであります。
健全さを保っていたのは、自分に酔っては成功と破滅を繰り返す英雄たちのてん末を、面白おかしく歌劇に仕立てて、日々のから騒ぎのネタにしてきたローマの民衆なのでありました。めでたしめでたし。



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不運にしてナルシストと結ばれてしまった方は(失礼、不運とは言い切れませんね。成功する男の多くがナルシスト傾向を持っていますから。つまり程度問題、あるいは扱い方次第ということです)、家庭を壊さないために庭を夢の世界にしておくことをお勧めします。彼らは辛くなると非日常に逃走を図るという特性があるので、自宅にリゾートフルな庭があれば、オイタをせずにそこで機嫌よく遊んでいてくれますから。
それともうひとつ、毎日欠かさずほめちぎること。これは小学生並みに効果があります。逆に、けなされることには極端に弱いので、もしもほとほと愛想が尽きて見切りをつける場合には、けなしまくれば早々に問題行動を始めますから、沈着冷静にその愚行の証拠集めを。さすればあなたが主導権を握って、とても有利に別れられます。おっと、こういうことを勧めてはいけませんね。



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さて、かく言うぼくのナルシス度はいかほどか・・・
非日常への逃走、魅惑的な言葉ではあります。ぼくの場合ひなびた温泉場でボイラー炊きか山岳ガイドをやりながら、陶芸とか、創作活動に熱中したいという類いの逃避ですが。
多かれ少なかれ地球上の全男性が抱いているこの衝動は、女性には理解し難いかもしれません。でも、そのアホなナル男をコントロールできるかどうかが、奥様、あなたの人生を大きく左右するのだということを、どうかお忘れないきように。もしもあなたが歴女なら百も千もご存知の通り、男なんてのは扱いひとつであなたに命まで捧げる生き物なのですから、せいぜい賢く運用しない手はございませぬぞ。
そのスキルを身につけた時点で、あなたは巨万の富に匹敵する幸福の原資を手に入れたことになるのですから、心して、心して。




今日は港南台店にいます。