夕暮れ時に帰宅し玄関に入ると、室内に人の気配がない。人どころか犬たちの気配もなく、ミーが玄関まで駆けてきて、普段のクールさと違い、やけに猫なで声でなついてくる。
男の人生には何度かこういう場面があるものだ。嫌な予感をできるだけ排除しながら入ってゆくと、予感通りにテーブルに置手紙が。こういう場合、そこに書いている事柄は楽しい内容のはずはない。目を背け素通りして台所へ。冷蔵庫からビールを取り出し、理想的な泡になるよう丁寧にグラスに注いでからゆっくり味わって、思考領域に隙間をこしらえてから手紙を読んだ。

実家に帰ります。ついては次の事を実行しといてください。

1、朝メダカに餌をやること。
2、仕事の段取りはつけてあるので別紙のとおりに行動すること。
3、カブトムシのマットを交換をお願いします、そろそろウンチだからけなので。その際幼虫が何匹いるか確認すること。

やっぱり。女房はいつも突然書き置きをして消える。託宣を授けて役目を果たした大天使のように、悠然と翼を羽ばたかせて、遥か何処かへ飛んでゆくのだ。実家に帰るというのは地元の盛大な祭りを楽しんでくるということなのだろうが、その行動スケジュールを事前には告げない。ぼくには考えられないし理由もわからないが、気ままで、おまけに地球は自分を軸に回転していると信じて疑わない特異な種族、B型の特性なのであろう。

1と2は大したことではない。問題は3だ。
以前は昆虫好きなぼくがカブトムシや外国産クワガタを大量にブリードしているのを、文句を言いながら嫌々手伝ってくれたものだが、この夏はぼくの知らぬ間に数組のツガイを入手してきて、大型の飼育箱でじっくりと産卵させていた。口出しをすると世話を押し付けられるので、静観、というかできるだけ視界に入れないようにひと夏を過ごしたのだ、が、ついに、きたわけだ。
まだ幼虫が太る時期なので、栄養満点な昆虫マットを買ってきて庭で入換作業開始。発掘してみるとスイカの種みたいな排泄物がケースの7割ほどになっていた。それを1時間かけて取り除き、新しいマットを加えて準備完了。そこに取り出しておいた幼虫を並べたら、先を競って潜ってゆく。可愛い。全員とても元気だ。



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数えた52匹。さて、これを羽化させるためには2ヶ月後に同じケースが最低でもあと4個、理想的には8個必要となる(狭いと蛹室が崩れて死んでしまう)。一体どうするつもりなのだろう。
また突然の置き手紙で指示が来ないことを祈っている。



まだ半分少年だった頃は、
四畳半の自室でギターをつま弾きながら
こんな曲を歌ったものだが、
40年後にまったく逆の立場になろうとは・・・
 


おとこのこ、とほほのほ。