昔々、年末には、お屋敷の庭からパチンパチンと枝を切る音が聞こえてきたものでした。三角梯子に器用に足を引っ掛けては枝先まで身を浮かせてハサミを使う、小粋な風情の植木屋さんの姿が師走の風物詩だったわけです。
今ではそんな職人さんも減り、そういう仕立物の庭も減り、増えたのはホームセンターで売られている高枝切り鋏のラインナップ。今年のヒット商品は、竿の先端に小さなチェーンソーが付いている電動タイプのもの。 For the time they are a-changin' 時代は変わってゆく。
さあ、これでおばあちゃんでも安全に剪定ができます。ところがこうなると、にわか職人の腕が問われるわけでして、法則を知らずにちょきちょきやったら樹形が台無しになってしまいます。これから並べるいくつかの知識を持っていると、仕上がりがかなりプロっぽくなりますから、ぜひご活用を。 

立ち枝を切る: 立ち枝とは横に伸びた主枝から垂直方向に出ている小枝のことで、これを後生大事に伸ばしても樹形は乱れるばかり。

逆枝を切る: 逆枝(さかえだ)は樹木の内側、幹に向かっている枝。

絡み枝を切る:他の枝と絡んでいる枝は荒れた印象になる。

重なり枝を切る:上下に並んで同じ向きに出ている枝は一つだけを残すように。幹から螺旋階段状に枝が出ているのが理想。

どれも不自然な生え方をしている枝なので、つまり剪定とは仕立て上げるというよりも、不自然さを排除して自然樹形に近づける作業なのです。
切る際には生えている根元から、スパッと。途中で切られた小枝が枯れて残っている姿はこれまた不自然でいただけません。

森の木々は人が手を入れずとも、
風雨や積雪や隣の木とのせめぎ合いによって
不自然な枝が淘汰され、整えられて、
美しい姿に成長します。

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はい、これであなたの腕前はプロ級に。他には枝垂れものの切り方、樹種による形の違い、新芽と懐枝(ふところえだ)を残しておくなど細々ありますので、ご興味のある方は庭木を写してご来店いただければ、園芸知識に加えて絵画的見地からのことも含め図解でご伝授いたします。