19世紀半ば、欧州の園芸家は貴族たちの保護の下で新種のバラの開発にしのぎを削っていました。
目指すは三つの特徴、四季咲き、大輪、青い花びら。



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長年にわたる試行錯誤で四季咲きと大輪は実現してハイブリッドティーローズと呼ばれ、今ではそれがスタンダードとなっています。しかしいくら掛け合わせても青は出ない。人々は叶わぬ恋を「それは青いバラだね」と、切なくロマンティックなため息をついたのでありました。 



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この世に存在しない花なのに花言葉を有するブルーローズ。ところが、ところがです、無粋にも2009年にサントリーが青いバラ「サントリーブルーローズ・アプローズ」の開発に成功し、それまでの「不可能・有りもしないこと」という花言葉に「夢かなう」が追加されたということです。



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本当に無粋としか言いようがない。何でもかんでも技術力で実現すりゃあいいってもんじゃない。永遠に朽ちない材木とか伸びも枯れもしない芝生とか、食品庫には腐らない牛乳とカビが生えない食パンが並び、連日クックパッドに従って味付けをするって、いいのかなあって思うんですけどねえ。それじゃあおふくろの味はどうなっちゃうんだよ、詩織よ。あ、きみの場合は親父の味だが。



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いや、かまわないんですよ、クックパッド。料理など好物の唐揚げ以外何もできなかった娘が、結婚してからは、ああ愛の力は偉大なり、まな板の脇に置いた液晶画面に見入りながら見事な料理の数々を食卓に並べるようになりましたから。ただ孫の美空の味覚的情緒はどうなるのかと。美空が母になる頃には「おふくろの味」は実感を失い、昭和時代の小説に出てくるだけの言葉になるのかもしれません。



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とはいうものの、そんなことは仕方なし。ぼくらも昭和から受け継ぐべき多くの言葉を、高速回転する暮らしに追われて消失させ続けているわけですから。例えば「草いきれ」とか、「お百姓さん」とか、「花盗人」とか。



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風呂敷、ねんねこ、縁側、囲炉裏端、割烹着、前掛け、姉さんかぶり、蚊帳、蚊遣り、ハエ取り紙、おひつ、おかっぱ、座敷、寝間、お勝手、納屋、リヤカー、寝押し、総領、舎弟、宿六、山の神、祝言、りんき、よろめきドラマ、ほの字、停車場、テクシー、ノンポリ、ブント、造反有理、ゲバルト、あたり前田のクラッカー、冗談はよしこさん、すっとこどっこい、よっこいしょういち、許してちょんまげ・・・
降る雪や昭和は遠くなりにけり。



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というわけで今日出囃子は、とっておきのこの曲を。リズ・ライトの「 Blue Rose 」。




青いバラ(かなわぬ恋)


泣き明かした朝は青空
もう心に棘はない 痛いアザミも咲いていない
晴れやかな顔で 彼女の今日が動き出した

たぶんもうだいじょうぶ
まだ少しだけ ブドウのつるに足を取られていつるけど

大きく腕を広げて どうやら運命を受け入れたようだ
強いよ 根を深くにまで張って咲こうとしている

たぶんもうだいじょうぶ
まだ少しだけ ブドウのつるに足を取られているけど

みんながまだ眠っている早朝に彼女は咲く
早起きな旅人だけがそれを見つける
ひるめで寝ているやつらとは無関係な世界にいる

ああそうか きっと彼女は朝顔なんだよ
まだ少しだけ ブドウのつるに足を取られているけど
少しだけ 足を取られているけど
まだ少しだけ



朝顔のあなたに幸あれ。いつかハイブリッドティー、大輪の四季咲きとなりますように。
え、朝顔は朝顔、孔雀や鳩や、ましてやバラになんてなれないって? だいじょうぶ、イメージできたらできたも同然だから。
なになに、信じらんない。お呼びでない。そうですかあ、それはチョベリバですなあ。されば信信ずるに値する、大天使となられた聖ジョン・レノンの託宣を。

イマジン・オールザピーポー、オブザピーポー、バイザピーポー、フォーザピーポー、やってみれば驚き桃の木山椒の木、あっと驚くタメ五郎、だいじょうV、バッチグーなり。