ぼくがお散歩バッグを手にするとノアたちは大興奮で尻尾をぐるぐる回して体当たりをしてくる。その勢いのままリードを引っ張る犬ゾリ状態で近所の公園まで行き、人影がない場合はリードを解いてやり、ひとしきり走ったり草むらに鼻を突っ込んでクンクンを楽しむ。満足すると「次の場所へ行きたいんですけどお」と、おすわりをしてリードの装着をせがむ。そこからは引っ張ることなくぼくの歩速に合わせながら横に付いて進む。元町を歩いている賢い系の者たちに引けを取らない上品な姿勢だ。
行き先はその都度変えていて、ひと気のない公園か、畑か山道(徒歩圏内に田舎っぽい場所がたくさんあってありがたい)。



母親のノアは8歳、人で言うと48歳。

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正月休みの気持ちの余裕から、玄関を出たところで今日はノアの行きたいように歩いてみるかと思い立ち、しゃがんで二人にそのプランを告げてお散歩開始。ノアのリードを常にちょうどよく弛ませて進む。方向の指示は出さない。
以前にも何度かやったので、ノアは「ああ、今日はそれなのね」とぼくを見上げ、まずはクンクンを満喫。おもむろにいつもと違う方向へ、ゆっくりゆっくり進む。ココは事の次第が飲み込めずにビンビンビンビン引っ張っていたが、しばらくするとノアの動きに同調し始め「わたしだってよくわかっています」という顔をするのだが、しっぽはピタッとヒップラインに張り付いたまま。賢い頑張りだ。



娘のココは6歳、人で言うと36歳。

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さあ自由への長い旅の始まり。ノアの欲求は「走らずに、嗅ぎながら、いつもと違う場所を、果てしなく行く」で、それから3時間かけて歩いては立ち止まり、クンクンし、畑を走り、クンクンし、山道を散策し、クンクンし、初めての路地を丹念に確認してから、えらいもんですねえ、ちゃんと家に帰り着く。
途中、我慢の歩きを続けたココを思いっきり好きに走らせたので二人とも満足顔。



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犬はどんな見た目であっても、チワワであっても、思考は狼と大差ないという。リーダー、偵察係、獲物を狩る係、育児係など、その役割は生まれてすぐの目が見えないうちに、母親のどのおっぱいにしゃぶり付くかで決まるそうな。出のいいおっぱいを占領したものがリーダーとなり、次のはナンバー2である偵察係となる資質が備わるという。ココは典型的にナンバー2気質だから、異変にはいち早く吠え、そしてとても甘えじょうず。ノアは親となった成り行き上だけでなくリーダータイプ。本来はぼくら肉球を持たない同居人も含めた群れを統率することを旨としているため、意にそぐわぬことには従わないし、要求が激しい。明らかに人間をコントロールしながら暮らしている。



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その夜、リーダーは満足して定位置の寝床で熟睡。ナンバー2はご機嫌でいつまでもじゃれついてから、ぼくの腕枕でいびきをかいていた。ぼくはというと、慣れない速度でのウォーキングに足がつって、何度も目がさめる始末。これも遣える者の幸福感なり。



ミーは7歳、人で言うと44歳。

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群の動向など俺様にはかんけえねえのだ。


女房殿、夕暮れにバラの花がら摘みをするの図。

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お世話係のぼくらは
犬で言うと、だいたい10歳児。 



年明けから連日暖かい。贅沢にもう一日だけノープランの庭時間を楽しみ、明日から怒涛の勢いで始動する。