地球がこのような生命の宝庫、奇跡の星になった起源を辿ってゆくと、35億年前に海中に出現したシアノバクテリアに行き着きます。その原核生物は光合成という、まさに奇跡の生命活動を行う特徴を有し、ゆえに地球には酸素が供給されるようになり、その気体を頼りにする生物が数多出現して現在の多様な生き物による生態系へと至りました。


コブシの花は1億年前からこの姿。
ルーシー(アファール猿人)の登場はたった400万年前のこと。
道具を使いはじめたのは200万年前。
直立し、言葉を話し出したのは100万年前。
25万年前に現れたネアンデルタール人が滅んだのは3万年前。
同じ頃に出現し、唯一生き残った人類である自称ホモ・サピエンス(賢い人)は、
栄華を極め、我が世の春を謳歌している。
コブシ咲き 何思う賢き猿


 

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水中で繁栄を続けたシアノバクテリアは浅瀬で藻となり、波打ち際で苔となり、やがて陸上に這い上がってシダ類になります。植物の出現です。シダは藻や苔と同じく繁殖には水によって胞子を運ばせる必要があるため、水辺から先の乾燥地へは行けません。したがってそれを食料にしていた爬虫類や昆虫、初期の草食恐竜たちも水のある風景だけが生活圏だったわけです。
シダ類は、生えても生えても水辺の生き物に食われてしまい、なかなか勢力を拡大できずに何千万年を過ごしました。動物たちもシダや苔が増えれば数を増し、食い尽くして緑が減れば飢餓で数を減らすことを繰り返していましたが、ここで植物が起こした革命によって事情が一変。その革命とは、水ではなくて風を利用した受粉システム、「風媒」です。



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胞子ではなく花粉を風に舞わせて受粉させるために、雌しべ(胚珠)がむき出しになっている新種の植物群が陸地を埋め尽くしてゆき、マツ、スギなどの針葉樹、ソテツ、イチョウといった裸子植物の森が形成されました。その樹高は30メートルに達し、それに伴って草食恐竜の首は伸び、体型は大型化し、肉食恐竜も巨大化してゆくこととなりました。恐竜天国ジュラ紀の到来です。
こうして生態系の上位種が栄えれば食糧難になり自然環境が破壊されるのは今と同じで、風媒による裸子植物革命で内陸部に広がった植物たちは、旺盛な恐竜たちの食欲によってまたもや殲滅の危機にさらされます。


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二度目の大革命が起こりました。「虫媒」です。植物はそれまで葉を食い荒らす敵であった昆虫と協定を結び、好物である花粉を食べさせる代わりにそれを他の仲間へと運ばせ受粉することに成功したのです。花を咲かせて目印にし、蜜を使って呼び集め、ついでに恐竜や哺乳類への防御としてアルカロイド、毒や嫌な匂いを開発してお目当の昆虫以外の生物を遠ざけました。これが被子植物の誕生です。


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ソテツや針葉樹ばかりだった森にはマグノリア(コブシ、モクレンの類)の花が咲き乱れ、足元にはドクダミ、タンポポ、菜の花が。そののどかな風景に不似合いな恐竜たちは、大嫌いな花の旺盛に嫌気がさし、元気を失いながら針葉樹の森を求めてとぼとぼと北上し、折しも到来した氷河期に追い打ちされ、とどめは巨大隕石の衝突によって暗く覆われた空の下で木々が枯れ、とうとう寒さと飢えで死に絶えてしまったのでありました、とさ。


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さて、物語はここでは終わらないわけです。
サピエンスサウルスの運命やいかに。


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ちなみに、植物たちの花革命によって滅ぼされたとはいえ、恐竜天国は1億8千600万年も続いたそうな。それに比して100年後の気候を危ぶんでいる我々はかなりヤバイ状況にあると思われますが、まあ未来へ危機意識の低さは野生動物に共通することなので、せいぜい夜の庭でワインでもやりながら、幸せな今日を味わうことといたしましょう。幸福とは今現在にしか感じられないことでありますから。