エルヴィス・プレスリーがキング・オブ・ロックンロールからキング・オブ・エンターティナーとなった頃、ラスベガスのステージなどで S&G の「明日にかける橋」を定番として歌っていることを「巨万の富と名声を得たキングは、貪欲にもさらなるマネーのために、ロックとは真逆にあるフォークソングのヒット曲にまで手を出してしまった」と批判されたことがありました。





そんな評論家に対して、ポール・サイモンが「世の中が何と言おうと、ぼくが心からのエルヴィスを尊敬していることに何の揺らぎもない」というメッセージ付きで「Graceland」という曲を発表します。
Gracelandとは、ミシシッピー州ティペロの川沿いの掘っ建て小屋に暮らす貧しい家庭に生まれた、純朴で親思いの心優しい少年が、神様から「音楽文化のページをめくる大天使」に指名されて、その大役を果たした後にテネシー州メンフィスに建てた白亜の豪邸(アメリカではホワイトハウスの次に有名は建物と称された)の通称。現在はエルヴィスの記念館として世界中から信者が訪れる聖地となっています。





ミシシッピーデルタ(三角州)は
ナショナルギターのように輝いて
ぼくは川に沿って道を下ってゆく
南北戦争の跡を目の当たりにしながら

ぼくはグレースランドへ行くんだ
テネシー州メンフィスのグレースランドへ
貧しい少年も放浪者たちも
皆グレースランドへ向かっている

ぼくの相棒は若干9才
初婚の時に授かった子だ
きっと受け入れてもらえるさ
グレースランドに

ある日彼女が戻ってきて
「もうお別れね」とぼくに告げた
まるでぼくが別れに気づいていなかったかのように
あなたは自分の居場所をなくしたのよというように
彼女の髪のとかし方も知らない男であるかのように

彼女は続ける
「愛を失うことは、心に風が吹くようなもの。
あなたが吹き飛ばされる様を眺めながら、
その風を清々とした気分で感じているわ」

ぼくはグレースランドへ行くんだ
テネシー州メンフィスにあるグレースランドへ
貧しい少年も放浪者たちも
皆グレースランドへ向かっている

こうしてぼくの財産は幽霊と燭台だけになった
でもぼくらをきっと受け入れてくれるよ
グレースランドは

ニューヨークには
自分を「人間トランポリン」と呼ぶ少女がいる

ぼくは転んだり 慌てふためいたり 混乱するたびに気づく
なるほど あの少女の予言通りじゃないか

誰もが皆グレースランドに押し寄せていると
少女は告げていたのだなと

愛を失うと確かに心に風が吹き
ぼくがそれに打ち砕かれる様を皆が眺めながら
風音を聞いている

グレースランドへ
ぼくはグレースランドへ向かっている

なぜグレースランドに惹きつけられるのか
その理由を説明することはできないけど

これから全ての愛と結末を見守り続けることになるのか
あるいはそんな義務は負っていないのか 定かではないが

とりあえず
グレースランドへと向かう理由は持っている

グレースランドへ行こう
グレースランドへ
グレースランドへ


今日はエルヴィスの命日。享年42歳、もしも生きていたら加山雄三より2つ上だから84歳です。見てみたかったなあ、晩年の姿を。というのも、巨万の富と名声を手に入れ、ありとあらゆるものを手に入れ、ついでに友人と友情までも金で買って、それでもグレースランドで孤独を噛みしめながら人生を終えたエルヴィスがもしも長生きしていたら、どれほど大きな幸せに包まれる結末が用意されていたことかと、そうとしか思えないからです。ですよね、神様。帳尻が合わないまま終わってしまったのは、ちょっとした手違いだったんでしょ。誰よりもあなたを信じ、一生を通じて懸命に祈り続けたんだから、今は天国でそれを手に入れているのでしょうけど。





暑かった今日の締めくくりに、今宵は庭に吹き込んでくる海風を浴びながら、大天使エルヴィスの歌声を楽しむことにいたします。あ、いろんな思いは置いといて、ブルーハワイから何曲かを。




ブルーハワイでなら夢が叶うよ。ぼくの思いも、君とこの魔法の夜を過ごせれば、きっと。