

東京の小石川後楽園、もとは水戸藩のお屋敷だったそうで都内有数の回遊式大名庭園です。庭の一部から見える隣接の東京ドームが、江戸時代に未来からやってきた巨大宇宙船みたいで何とも不思議なムードです。いつも閑散としていて貸し切り状態、都心の喧噪が嘘みたいな静寂を楽しめます。
この小石川後楽園を歩くと、回遊式庭園の特徴でもある“場面を変える”ということを意識した庭づくりを体感できます。トンネルのようになった常緑樹の林を抜けると急に視界が開けたり、生け垣や竹垣の向こうとこっちで趣が全くちがう仕立てになっていたり、パーティションによって回り舞台のごとく(回っているのは来園者なのですが)場面を変えていく、そういったつくりになっています。パーティション(つい立て、仕切り)に加えて遠路のアップダウン、補石材の変化、ある地点に来たときに来園者を振り向かせるなどの視線誘導の仕掛け、常緑樹・落葉樹・花潅木・棕櫚や芭蕉の南洋種の使い分けなど、様々な工夫で園を一周するあいだにいくつもの場面を見せながら、これでもかこれでもかとこちらの気持に働きかけてきます。
このパーティション効果は家庭の庭でも大いに活用できます。仕切って場面を変える、隠して期待感を高める、アーチで誘導する・・・。「広大な大名庭園じゃないんだからそんなの無理だよ」とあきらめてはいけません。日本人には極小の土地に場面を折込む坪庭や盆栽の感性もあります。自由に緻密に、限られた庭スペースにいくつの場面をつくれるか、イメージしてみて下さい。
次回は、パーティションとともに重要な場面をつくるテクニックである“フォーカルポイント”についてです。 つづく




