庭をつくる人

秋に咲くバラ

出がけに女房から「電話で問い合わせがあったんだけど、今日バラのことを教えて欲しいっていう方が来られるからよろしく」と声をかけられた。

あのお、よろしいですか。いろいろと教えて欲しくて。

ご連絡いただいた方ですね。どうぞどうぞお入りください。

杖をついていてやや歩きづらそうだが、しかし見るからに元気そうな、イチローの父親に似た、顔だけでなく全身が笑顔のような印象の男性だった。
腰掛けるなり、相談会のチラシが入ったクリアファイルから数枚の写真を出してテーブルに並べ、「これが30年前のわが家です」と。
ぼくはその写真に息を飲んだ。まるで夢の世界のように色とりどりのバラの花が庭を埋め尽くしていて、30年の時によってややセピア色になってはいるものの、そこからはあの夢見心地となる香りが漂ってくるようだった。

いやあ、見事ですねえ。はあ~30年前ですか。これは驚きました。

わたしはもう87歳で、バラだけが趣味でした。そうだなあ、この頃がピークで一番綺麗だったかな。近所でも評判で、家族もよろこんでくれましたよ。女房は料理好きだから、花の時期には友だちをたくさん集めて庭で食事会とか、楽しい思い出がたくさんあります。バラっていいですよね、バラのおかげでどれだけ幸せな時間があったことか。

わかります。バラほど人をいい気持ちにする花はないですから。

そうなんですよ。詳しい人に教えてもらいながら他の植物、ランやサツキに手を出してみたこともあったんですけどね、やっぱりバラがわかりやすくて楽しい。手をかけるだけちゃんと咲いてくれるし、たくさんの人がほめてくれるし。

いやほんとに見事ですね、しかも30年前といったら今とは違ってバラは特別な花だったでしょうから、大評判になったでしょう。
ところで相談って、バラのことならぼくの方が教えて欲しいくれらいです。

あの、バラのことというか、毎年庭仕事を繰り返してきましたが、こないだの台風で庭全体がくすんでしまって。

塩害がひどかったですからね。

そう、木も草も葉っぱが軒並み茶色くなって、半分くらいは風にちぎれて、なんとも悲しい風景になってしまいました。

ええっと、つまり塩害対策というか、復旧方法というか、そういうことですね。

いえ違うんですよ。今回の台風のことは置いとて、その荒れ果てた庭を見ながら気がついたことがあって。この写真の頃から比べると、年々バラに勢いがなくなってきたんです。バラだけじゃなくて、庭全体がそんな感じがして。わたしがこうして年老いるんだから、庭もそうなのかなあって、ふとね。

やや湿っぽい話の展開とは裏腹に、その人は入ってきたときと変わらず全身笑顔のままなのが不思議なような、救われるような気持ちになりながら続きを待った。

あと何年生きられるかわからないところまで来てみると、もういち度30年前の勢いを復活させてみたくなって、何かそんな方法があるのかと思っていたところに女房がこちらのチラシを見せてくれたもので連絡したしだいです。

う〜ん、いいですねえその心意気、素晴らしいです。
お役に立てるかわかりませんけど、ふたつのことが考えられます。ひとつは土が酸性化しているであろうこと。農家がやるように苦土石灰で中和したらいいかもしれません。あと堆肥、牛糞とか腐葉土なんかを多めにすき込んで微生物を増やしてみたらどうでしょう。

ああなるほどねえ、土ですかあ。そう言えばバラの肥料以外あげたことがなかった。堆肥ですね、微生物、酸性を中和、なるほどなるほど。さっそくやってみます。

もうひとつ、これは意識というか、考え方のことなんですけどね、30年前があまりに素晴らしかったから、それを維持しようとしていたんじゃないでしょうか。来年も今年のようにって。

はい、その通りです。あ、そうか!それだったのか!!

はい。守りに入るとじわじわと追い込まれます。攻めなきゃ。
庭は不思議な場所で、維持するためには変化させ続ける必要があるんですよね。いつも次はどうしてくれようか、来年はここを変えてみよう、こんなのも植えてみようって。

今、見えました?

は?

目からウロコが落ちたの。ほら、音もした、腑に落ちた音。

なんとも愉快な。一緒に笑いながら、本当に目から剥がれたウロコが腑に落ちて音を立てたんだなあと思えた。

いやあ来てよかった。そうかあそうだったんだあ。確かにねえ、そうですよねえ。守り一辺倒から攻めに転じればいいわけですね、なあるほどねえ。やりますよ、やります、うずうずして来た。87歳の逆襲、始めますよ。
実は塩害の庭を見て気落ちしてたんですよ、自分みたいだなあってね。過去がいくら幸せでもこうなっちゃったらただの過去なんだなあってね。それでね、家族に「オレが死んだら庭は更地にして、みんなが楽しい庭に作り変えてくれ」なんて言ったりして。女房は黙って笑ってたけど、そんなこと話したらますますさびしくなっちゃって。
さすがプロですねえ。変化、攻める、数年ぶりにやる気が湧いて来ました。本当に来てよかった、ありがとうございました。

いえいえこちらこそ。ぼくもお会いできてうれしかったです。どうか頑張って、何かお手伝いできることがあれば連絡してくださいね。

全身笑顔のチチローはますます笑顔となって、杖をつきつき帰ってゆくその後ろ姿からは、あの夢見ごこちなバラの香りが漂って来るようだった。
われも後年かくありたし。ああ素晴らしきかな庭のある人生。



ここ数日急激に気温が下がり、
秋のバラがちらほらと開き出しました。

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潮風にさらされて枯れ枯れとなった風景は雨に洗われ、
新鮮な色がぽつりぽつりと。

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冬へと向かう時期に咲く花は、
静かな風情の中に秘められたパワーを感じます。


 
 

庭のつれづれ

秋の食欲。

ブルーチーズにハチミツ、カマンベールにはマーマレード、パルミジャーノは3ミリにスライスしてそのままで、カベルネソーヴィニヨンのおともに。
ご飯には秋鮭、バケットには無塩バター、パスタなら庭に溢れている青じそを山ほどきざんでニンニクと鷹の爪と仕上げに醤油を少しだけ。



この時期、蝶たちの食欲は見ていて気持ちがいいほどで、
ゴクゴクと喉を鳴らす音が聞こえてきそうです。

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ちなみに花の蜜の味と濃さはスポーツドリンクと似ているそうでして、
全力で飛び回っているから、きっと猛烈に喉が乾くんでしょうね。
 


秋に食欲が増すのは、次に来る厳しい季節を耐え忍ぶに充分な脂肪を蓄えるため。 身体は季節を先回りして健康を維持しようとしています。
太古より受け継がれてきたありがたき本能ではありますが・・・本能が強すぎて、いやはや。





 

昼のいこい

小学低学年の頃、大人たちが昼寝をするのが不思議でなりませんでした。昭和中期のことですから、そして場所は連なる越後の山の間に少しだけ平らがある魚沼盆地だったので、その長閑さたるや今思うとお伽話に出てくるような地域で、だからでしょうか、昼食後には町中の動きが止まって小一時間ほど昼寝の静寂となったものです。
当然子供も付き合わされるわけでして、畳に座布団を枕にして横になり、つまらねえなあ、早く遊びに行きてえなあ、などと思っているうちに睡眠に入ってゆく。ぼくが昼寝を嫌いなわけはその後にあるのです。さっきまでいびきをかいて寝ていた大人が急に活動を始め、その音で起こされる。半ば強制的に寝かされたかと思うと今度は強引に起こされるもんだから、頭がぼーっとしてしばらくは身動きできない、あの数分間が嫌で嫌で。



昨日は近所のイチョウの下に駐車してまどろみ、
光、風、音、色に癒されました。
あの郷愁を誘う香りにも。

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そんなだった秀敏くんも58歳となり、この頃よく昼寝をします。車のシートを倒して30分くらい。数分で夢の中へ、夢の中へと。そしてとても心地よくぱちっと目がさめると別人のごときフレッシュな思考力を手に入れていて、そして全身が駆け出したいほどパワフルになっている。これはつまりぼくも大人になって、それもかなりの大人になったもので疲労が蓄積しやすくなったということで、だからこそ少しの昼寝が効果抜群のレジリエンスとなっているわけです。
そうか、こういうことだったのか、と。大人たちが「昼寝なんかより遊びまわりたんだろうが、この習慣を覚えておけ。絶対に役に立つ日が来るから」という気持ちがあったかどうかはわかりませんが、あの昼食後に世界が一斉に静寂に入る体験を得たことを、この頃はとてもありがたく思っています。 「親が死んでも食休み」と、近所のおばちゃんが言ってたなあと思い出し、その言葉の本当の意味を知りました。



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当時の田舎暮らしは、たぶん今のぼくらの暮らしの10倍は大変だったことでしょう。家電製品はまだ少なく、風呂と飯は薪を使っていました。どの家も裏庭は縁側と畑というスタイルの半自給自足で、買い物で入手するのは海の魚の干物、豆腐(となりのとなりが豆腐屋でした)、お茶っ葉(実家はいろんな商売をしていてお茶も売っていました)、乾麺や缶詰とか、地元では穫れない果物、調味料、お菓子、そういうものだけで、今のようにスーパーに行かないと食事の用意ができないということはありませんでした。あらゆる仕事とは汗をかくこととイコールで、生活も身体を動かすこととイコールで、現在の暮らしでは考えられないほど地域全体が押し並べて貧乏でして、登場人物は全員が勤勉にして質素に慎ましやかに、まるで原始人のように暮らしていました。そんな宮沢賢治みたいに純朴で生真面目な人たちにも、当たり前ですが悩みや辛さは止むことなく襲いかかってきたでしょうから、みんな頑張って、みんな辛くて、それでもみんな踏ん張って生きていた時代だったのです。


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当時の昼寝習慣を今風に言えば「オンとオフ」の切り替え、交感神経と副交感神経をバランスよく、ということであり、それ抜きでは心身を健康に保てない、食事と同等に重要かつ当たり前な生活習慣だったのでしょう。
重き荷を背負って坂道を行くがんばり世代のご同輩、身体とは案外もろいものです。ことに頭蓋骨に詰まっている豆腐状の脳という部位はなかなかデリケートなものでして、「この不完全に肥大化した脆弱な臓器が、個人あるいは人類の不幸にとどまらず、多くの生物に悲劇をもたらしている」という学者もいるくらいであますから取り扱いには重々ご注意ください。オーバーヒートせぬように、配線が混乱しないように、くれぐれもくれぐれも。昼寝とか、散歩とか、ガーデニングとか、庭の夜風を楽しみながら一杯やるとか、休み休み行きましょう。



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昼寝の定番BGM

 


 

 

盗賊と竜馬の会話

旅は道連れ、脱藩しての道すがら、たまたま縁あった盗賊の藤兵衛と東海道を江戸へ向かっていた竜馬の眼前に、それまで絵でしか見たことがなかった富士山が現れました。

これが富士か!実に雄大な気持ちになるのお。どうだ藤兵衛、そう思わんか。

いえ別に何とも思いませんがね、見慣れておりますし。ただの三角の山がそんなにいいもんですか。

ああ、何だか日本一の男になりたいような気になってくるがじゃ。

そんなもんですかねえ、それほどのものではないと思うんですけどねえ。

そこじゃそこじゃ。藤兵衛よ、同じものを見ても心が震える者とお前のように何も思わぬ者とがおる。いかに才覚があっても、心が震えぬ者には大事を成すことはできんぜよ。藤兵衛、だからお前は盗賊のままなのだ。

はあ。しかしそう言われましても、富士の山を見て悦に入るあなた様のお気持ちが、あっしにはどうにもわかりかねますが。

これは司馬遼太郎の「竜馬がゆく」に出てくるやりとり(はるか昔に読んだものを思い出して書いたので、原文とは違います)。



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マツムシ響く庭で花の写真を整理しながら、ふと「曼珠沙華を見て何を思うかは人それぞれ。ウキウキする人もあれば涙がこみ上げてくる人もいて、そして多分、ことさら何も思わず通り過ぎる人が多いんだろうなあ」と。それに連なって、庭という場所が持つ価値に気づく人は、現実的には稀有であることを思いました。ああ、ぼくのクローンが1万人いたら、世の中は劇的に幸福方向に進化するんだけどなあ・・・などと、竜馬を語ると話が大きくなります。クローンは無理なので、どうか応援をよろしくお願いいたします。
思えば沈没寸前の二人漕ぎ難破船が横浜に流れ着いた時にはただのひとりも知り合いがいなかったのに、今では顔見知りが増えまして、店に立ち寄ってくださったお客様から「こないだ駅ビルのカルディで生ハムとチーズ買ってたでしょ。ホームパーティーだったの?」とか言われるようになりました。それとですね、仕事の依頼の半分近くが以前やらせていただいたお客様からのご紹介や、「〇〇さんちの庭がとってもステキだったから」という方々でありまして、本当にありがたい状況。
この調子で応援団が1万人に達したら、 Evolution by Revolution も無くはない。



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ぼくとしては世の中の庭を片っ端から、人生を支え豊かに育んでくれる理想郷に変貌させたいと思いつつも三歩進んで二歩下がり、汗かきベソかき行くこともしばしばでありまして、慢性的に歯がゆさを感じているのです。しかし時々こうして庭に竜馬が降りてきては「焦らず騒がずひとつずつ、いつも富士を見上げておればよし」と強張った肩を叩いてくれます。



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本は読んでおくものですねえ。教科書は大嫌いでしたけど、小説や漫画や、その都度面白いと思って夢中になったものが自分の成分になっていることを感じます。他には漫画、映画、音楽、写真や絵画、越後の山を登りまくったこと、たくさんの出会いなどによって感受性と思考回路が出来上がっているなあと。
夜の庭に降りてきては声をかけてくれる竜馬さん、ジョン、アマテラス、幼いぼくに囲炉裏端でトントン昔を語ってくれた近所のおじいさんや懐かしい人たち。これが八百万の神々なんだなあと感謝する日々です。



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いわふちよ、焦らず騒がずひとつずつ、富士を見上げておればよし。




 

高速回転の術

アゲハの産卵から羽化までは2ヶ月で、それが春先から10月まで4サイクルあります。




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今飛んでいるのは梅雨明け頃の産卵が孵化して柑橘の葉を食べながら5回の脱皮を経て美しい柄の芋虫になり、蛹の殻の中で華麗なるメタモルフォーゼを遂げて羽化した者たち。しかし苦労の末に翼を得たエンジェルの持ち時間は、たった10日ほどなんですよね。



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その間に猛烈に食べ、激しく恋し、産卵を成就して命を終えます。

その卵は幼虫になり、蛹になって越冬し春を察知して羽化する、これが5回目のサイクル。




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電卓パチパチやってみたら、アゲハはぼくら人間の400倍速で生きているということになり、「そりゃあ美しく見えるはずだ」と独りごち。



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そうか、命を輝かせるには早回しという方法もあるなと。
さ、仕事仕事。今日も心を込めて、高速回転で庭を思い描きます。





 

アマテラス降臨

早朝の決まった時間に朝日を浴びることの効用は繰り返し書いてきました。体内時計のズレがリセットされて日中を快適に過ごせるセロトニン(幸福ホルモン)が産生され、それと連動して夜にはセロトニンが分泌して熟睡と心身の修復がなされます。



年々この香りの威力を感じるようになっています。
これはきっと、脳が熟してきたということなのでしょう。
どうやらぼくにも、実りの季節がやってきたもよう。

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その朝の習慣とは別に、日中もできるだけ日の光を視覚に感じた方がいいということが言われています。当たり前のことではあるんですけど人間も野生動物ですから、太陽と共に行動し暮らしてきた長い歴史を経て今に至っているわけで、それが建物に閉じこもって仕事をしていたり、カーテンを閉めきりで暮らすというのは人類史の中でつい最近やり始めた(人間的には)とても変わった行動ですから、油断してストレス溜めば体調が崩れるのも当然のことです。




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昨日の午後は雨が上がったかと思ったら急速に天候が好転し、数日ぶりに太陽が。なんだかうれしくて、しばし雲間に見え隠れするアマテラスの輝きを見つめて過ごしました。やはり気分がいいものですよね。
それに加えて辺り一帯に例のあの香りが。どこに咲いているのかと心当たりの場所に行くと、ああ、一斉に。キンモクセイも久しぶりの陽射しに歓喜しているようでした。




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文句なしの洗濯日和であると、さっき早起きなお天気キャスターも申しておりました。すぐさま次の台風が迫っているそうですから、今日は光を存分に感じて命の洗濯とまいりましょう。




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あんなに暑かった夏も過ぎ去れば夢幻のごときなり。ここからは日ごとに日照時間が減ってゆきます。カーテンを開け放っておきたくなるよう庭を美しく整えて、雑草取りでも植え替えでもなんでもいいので庭に出て、意識してお日様を見つめて、できれば毎朝早起きをして朝日を浴びて、心身共に好調な秋冬を過ごされますように。







 

NHKFMの休日特番

一昨日、三連休の最終日は記憶に残る日となりました。午前中いつも通りに仕事をこなし、少々疲労がたまっていたので昼寝をしようと、天気も良かったので港南台店に隣接るする公園のベンチで横になりました。昼寝のBGMは十代の頃からNHKと決めているので iPod のラジオアプリをNHKFMにチューニング。するとなんということでしょう、休日の特別番組ということで、9時間ぶっ続けで懐かしきディスコミュージックを流すというのが始まったところでした。

子どもの頃から成人するあたりまで、
ススキをことさら美しいと思ったことはなかった気がします。
それはただの見慣れた風景の一部であり、あって当たり前の植物で。 
ところがどうでしょう、この頃では美しいどころか、
たくさんの幸福な記憶と相まって、たまらなく愛おしく思えてきて。

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ぼくはステイン・アライブが大ヒットしたサタデー・ナイト・フィーバーの頃は新潟の山奥に暮らす高校生だったため、ディスコに行ったことがありません。マハラジャやキング&クイーンやジュリアナ東京は、ポパイとかブルータスとか、当時夢中で読み漁ったマガジンハウスから発行される雑誌の中にある世界でした。



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それとぼく的にはディスコサウンドを軽く捉えていたふしがあり、その頃は岡林や三上寛などのアングラフォークと、憂歌団と久保田麻琴と売れる前の上田正樹と(関西系ブルース)、洋楽ではビリー・ジョエル、西海岸のイーグルス、J・D・サウザー、ジャクソン・ブラウン、リンダ・ロンシュタット、他にはロッド・スチュアートやエリック・クラプトン、通奏的にエルヴィス、ディラン、ザ・ビートルズ、ミッシェル・ポルナレフ、カーペンターズ、S&Gなどを聴き漁っていて、好んでディスコサウンドのレコードを買った覚えがないのです。



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ところがこの9時間に流れた楽曲で知らないものはゼロ。まああ次から次から体が動き出し気分が躍動する曲ばかり。いち日中ノリノリで、そんな時には立て続けにいい出会いがありまして、この頃でダントツご機嫌な日となりました。
ディスコ・ミュージック、意識して聴いていたわけでもなかった音楽によってこれほど調子が上がっている自分に驚きつつ、音楽の力というのはすごいものだなあと実感した次第です。



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メロディー、ビート、歌詞、音色。アロマセラピーなどの園芸療法が、元気だった頃の記憶を呼び覚ますことによって弱った現在にパワーを呼び覚ますの同じく、若き日に何気なく耳に入っていた音が今日の発電をしてくれるという、不思議と有難さ。記憶とは面白いものですね。



番組の三曲目、ヴァン・マッコイのハッスル。
いつどこで聞こえてきても、無条件に体が動き出す。

 

今日あなたが耳にしている音楽が、
庭に響いている雨音や風の音や虫の音が、
いつかあなたを元気付ける記憶となりますように。 





 

空が晴れれば気が晴れる

秋の長雨。雨は嫌いではないが、現場がストップしてしまうことが気持ちに引っかかって、それが数日続くとさすがに引っ掛かりの先に重たい荷物を引きずっているような気分になったりもします。



冬はウメ、春は桜、夏はノウゼンカズラ、
植物は人を見上げさせます。
秋はこれ、パンパスグラス。

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しとしととよく降った日の夕方、数年前に施工したお宅の軽めのメンテナンスを終えて帰ってきたスタッフが「お客様がとってもよろこんでいました。庭が良くなったおかげであれから毎日楽しいって。いわふちさんによろしくお伝えくださいとおっしゃってましたよ」と。その女性スタッフは新人で、初めてのその反応がよほどうれしかったようで、やや興奮気味に伝えてくれました。



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天気と気分はしばしば連動しますよね。晴れれば晴れやかな気分になり、曇れば曇り、雨降りにはやはり気持ちもしっとりする。



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その時は逆のことが起こりました。うれしい報告を受け取って気分上々になった帰宅の空は、さっきまでの雨が嘘のような夕焼けに染まっていたのです。それは偶然でしょうが、自分の気持ちの変化が天候を変えたのだと思うことにして、軽く神がかった気分で家に着くなり庭に出て、お客様の笑顔を思い浮かべながらとりあえずビールを。



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庭が暮らしを彩り、時が積み重なるほど味わいを増し幸福が色濃くなってゆく、そんな庭をイメージしながらひとつ、またひとつと設計を仕上げる日々。何年経ってもこうして庭を楽しむ暮らしのことを伝えてくれる人たちによってパワーが湧いてきて、ただただ感謝です。



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昨日は通りがかりに後藤さんが声をかけてくれました。

相変わらずおいそがしそうね。

はい、おかげさまで。

カオリさんはお元気?

ええもちろん。元気過ぎて煽られっぱなしですよ。

いっつも明るくていいわよね、屈託がないというか、お会いするたびにこちらまで元気になるのよねえ。

そうですね、ほんと、あのパワーには感謝感謝ですよ。

じゃ、お仕事頑張って。カオリさんによろしく。



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これまた最高にうれしいお言葉でした。照る日曇る日土砂降りの日も、家に帰れば女房殿が太陽サンサンですから、実際、ありがたいことです。時々陽射しが強すぎて、日焼けがヒリヒリ痛みますが。
またもや数日雨模様の予報。しっとり気分を楽しむことといたしましょう。



 

紙を折る

オックスフォード大学物理哲学科からの出題です。
厚さ0.1 mm のコピー用紙を何回折りたたむと月に到達できるでしょうか。



イザナギとイザナミはたくさんの神を生み出しました。
その中でも三貴子と呼ばれるのが
アマテラス、スサノオ、ツクヨミの三姉弟。
アマテラスは自然を、スサノオは精神を象徴しています。
ではツクヨミ(月夜見尊、月読命)は。
その後の物語にほとんど登場してこないこの神は、
きっと夢や希望の神なのではないかと。

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1回折ると0.1×2で0.2mm、もう1回折ると0.2×2で0.4mm、さらに折ると0.4×2で0.8mm、はてさて月に届くためにはこの計算を延々続ける必要がありそうですよね。
ところが数学とは面白いもので、10回で約1m、20回で東京〜富山間の長さとなり、26回で地球一周し、42回で月までの距離38万kmに近い35万kmに、さらにもう1回折れば70万kmになって月をはるかに通り越してしまいます。



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では現実的に紙を43回折れるのかというと、それは誰にもできないわけです。
論理的にはそうかもしれないけど現実的ではない、これをあなたはどう捉えるでしょう。夢は所詮儚いものだとあきらめるか、夢実現の論理に従って月を目指すか。



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ぼくは頼まれもしないのに、その庭が持つ可能性を最大限盛り込んだプランを提示することがあります。その理由は、いろんな制約を度外視して、できない理由を封印して腰が引けない状態で思い描かない限り、間違って夢の世界に到達することはないからです。だから一度思いっきり(紙を43回折るのと違って十分に実現可能な範囲で)描いたのをご覧いただき、イマジネーションを広げてもらってから、さて、そこに含まれているいくつもの魅力のうちどれを優先するのかと現実的に考えていただく、この方法が最もいい結果を生むことを実感しています(よく使われる例え、道に迷いさまよって、気づいたらエベレストの頂上に立っていた、などということは起こらない。目指した者だけがそこへ行けるのだ)。



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実はこれが、たくさんの人たちが「いわふちマジック」と称してくれることのタネ明かし。でももうひとつ大事なタネがありまして、この際そいつもお教えすることにいたしましょう。
それはですね、「1回折る」ということ。とにかく折り始めなかったら月はただの夜空に浮かぶ模様であり、夢にも希望にもなり得ないですから。



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では庭において最初の1回とはなんでしょう。カーテンを開け放って暮らせるようにすること、庭との段差を解消すること、庭にイスとテーブルを置くこと、雑草を抜いた場所に花を植えること、夜の庭の魅力に気づくことなどケースバイケースですが、どれもとても簡単なことばかりです。それができたらもう1回折る。さらにもう1回、もう1回。その作業は楽しく、感動や発見が伴うので夢中になることでしょう。そして紙を折るのと違って、気がついた時にはすでに月に到達しているのです。
つくを見上げて、まずは一回折ることからすべては始まります。






 


 

気に入らぬ 風もあろうに 柳かな

これは「海賊と呼ばれた男」に出てくる江戸末期の僧侶にして風流人、その画才が評判を博してさながら流行画家のように人気者だったという天蓋和尚の句です。国岡鐡造(出光佐三)は営業所の社員から「士気を高めるために店主の肖像写真を」と頼まれたときに、俺の顔なんぞよりこれがよかろうと、この句が書き込まれている天蓋の掛け軸を複写して、全支店の壁に掲げさせたというエピソードに登場します。



風を読んでは飛ぶ極楽とんぼ。
酷暑を気にする様子もなく、
人生一度の夏を謳歌していました。

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その場面でページをめくる手が止まり、いいなあ、心が軽くなるなあと、しばし目を閉じて別の世界に浸りました。
しかし長い物語中で鐡造がこの心境になったのは90歳を越えた終章のことで、その人生は句とは正反対に、風に立つライオンのごとく、次々やってくる逆風を微動だにせずに耐えて耐えて耐え抜いたものだったのです。

なる堪忍は誰もする ならぬ堪忍 するが堪忍

堪忍の袋を常に首に掛け 破れたら縫え 破れたら縫え



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打たれ弱くて超ヘナチョコなぼくが言うのもなんですけど、ピンチの時こそ腹に力を入れて、無理やり口角を上げて、足を踏ん張って、風に立つライオンでありたいものです。

庭を花いっぱいにしながら、今日いち日を、今日いち日をと踏ん張って窮地を乗り越えたお客様の姿をこれまで何度も目撃してきました。その中のおひとりがよく口にしていた言葉です。

命を取られるわけじゃなし。



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生きてるだけで丸儲け。あなたがもしもキツい状況になったら庭に出て時を過ごしてみてください。地球を何周もしてきた風に乗って、きっと思いがけない声が聞こえてきますよ。





 

循環

分子生物学者の福岡伸一がよく使う動的平衡という概念、生命とは、自然とは、絶え間なく入れ替わりながら平衡を保っているのだということを、庭にいると実感します。
草木の循環、大気の循環、気候の循環、枯れては咲き、嵐もあれば小春日和もあり、凍てついたり猛暑だったり、すべては移ろいながらも生命存続に過不足ないバランスのとえれた現状を、はるか何万年も続けている。それをぼくらはごく当たり前のことと捉えているので、とかくそこにある流動性を感じ取れなくなっているのではないかと思ったりもします。

酷暑の中、散歩コースには
へたることなく咲き続けたバラたちがいました。

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この動的平衡は思考(心)にも起こっていることで、例えば健康を失う、職を失う、長年抱いていた夢や希望を何らかの出来事で失うなどした時には、必ずその喪失に見合うだけの補填が行われます。それは優しさだったり、感動だったり、感謝だったり、主に心に出現するとても人間らしい感情。年寄りになるとやたらに涙もろくなる、というのはきっとそれで、たくさんの抜け落ちた心の穴を幸福感で埋めるために涙が必要なのです。そしてそれができる人、レジリエンス(復元力)の強い人は年齢を重ねるほどに笑顔も濃くなってゆく。


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打ち合わせで港北の住宅地を走っているときに、遠目にも輝いているバラがいっぱいの庭を見つけました。停車して、後部座席からカメラを取り出し歩いてゆくと、懐かしきかなモンペをはいた農家ルックのおばあちゃんがせっせと手入れをしています。「すっごく綺麗ですねえ。見事だなあ」と声をかけました。ぼくの声に腰を伸ばして「やってもやっても追いつかないよ」と笑い皺だ彼の顔で。


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花の写真を撮らせてもらってもいいでしょうか。


ああお兄ちゃん、どうぞどうぞ。よかったらあっちに木戸があるから中入って撮ったらいいよ。


ありがとうございます。でもここからで十分です、ははっ、道路にまでこんなに溢れちゃってるから。


でっかいカメラ持って、あんた写真屋さんかね。


いやいやただの趣味ですよ。花を見ると撮りたくなっちゃうんですよね。田舎育ちで、母が家の中から外から花だらけにしている人だったから。あ、だったからって、まだ元気で花だらけにしてますけどね、近所の人が呆れるくらい。


そうかい、それはいいお母さんだ。だからあんたもそうやって花が好きなんだねえ。遠慮しないでたくさん撮ってちょうだいな。この子たちの綺麗な時期はすぐに終わってしまうから。


しばし夢中でシャッターを切っていたら、おばあちゃんが冷たい缶コーヒーと、庭の花を数種類切って束ねてでっかい紙袋に入れたのを、フェンス越しに手渡してくれました。


ありがとうございますう。いいんですか、こんなにたくさん


どうぞどうぞ、よくみなさん声をかけてくれるからうれしいんですよ。まだ蕾のを入れといたから部屋に飾ってくださいな。


ぼくは深く深く頭を下げ(なんとなんと、突然涙が溢れてきて、それを悟られないためでした。母のことと同時に祖母の記憶が思い出されて)、「すっごくいいのが撮れたから、後で写真を届けますね」と伝えて打ち合わせへと向かいました。


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後日厳選してプリントアウトした10枚をパウチッコして、お留守だったのでポストに入れてきました。
あれから5年が経ち、おばあちゃんは元気で庭仕事をしているだろうかと、あの分厚い笑顔を思い出しています。あまり行かない地域なのでもうお会いすることはないかもしれないけど、ぼくの中では、ぼくが元気な限りおばあちゃんは元気なままです。宝物の出会いでした。


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夏を咲き続けて越えるバラは
赤系が多いという発見。
やはり情熱、なんでしょうね。


来し方の素敵な庭人たちによって、ぼくは今日も循環しています。それと幼い日の、花に囲まれて育った記憶によって。






 
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