2021年07月

庭へ帰ろう

感動というものは最高の感情ですよね。オリンピックの効用・効果、聴衆が求めていることのほぼ100%が感動で、繰り返し繰り返し割とお手軽にそれを頂戴しながら、若きアスリートたちが繰り広げるピュアさゆえの悲喜こもごもに、ひれ伏したり感謝したりの数日間です。



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暑くて寝苦しかったのか、それとも体調万全ではしゃいでいるのかいきなりハイテンションの犬たちに起こされて、庭で朝日を待ちながら今日の仕事をイメージしていたら、数日前に深く刈り込んで茶色だった芝生に出てきた緑色が美しい美しい。朝日はいつも生命力にスポットを当てますね。シュートと古い枝とを代替わりさせたバラからは赤い新芽が次々と。これまた感動です、静かな感動。



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オリンピックはすぐに終わる。終わったら揺り戻しでまたコロナコロナの大騒動がやってくることでしょう。でもね、コロナもそのうち、あれは何だったんだろう、何であんなにきつかったんだろう、ひとりで歩くにもマスクしちゃって、毎日電車は止まるし、浅間山荘みたいにテレビは連日連夜コロナばっかだったし、バッカみたいだったよねって、笑い話になることは歴史を見れば疑いの余地なし。



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頑張っているあなた、ここはひとつ気分を変えて庭に帰ってみませんか。そこにある穏やかで静かな感動が、小さな生命力の輝きが、あなたをその日までナビゲートしてくれますから。などとつらつらしていたら、友部正人降臨。♪何でもない日には何でもない歌を歌おう♪ で、さっそくYouTubeをチクチクとしてみたものの適当なのが見つからず、代わりにもっと適当なる何でもない日の曲が引っかかったので、今日の設計 BGM はこれで。ああ、ああ、何でもない日常がいかに豊かであることか。



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何でもない日に、何でもないことに、何でもない心の揺らぎに小さく感動することが、世の中ではここ1年半ばかし不足してた気がして。庭ですよ庭、このタイミングで庭に帰りましょうよ。どんな騒動も苦悩も苦労も、みんなそのうち終わるんですから。あのお・・・ありきたりなること甚だしいのですが、今朝、庭で、自分に向かって口を突いた言葉です。今日を大切に。誰にでも背負わされている何らかの課題によって大変な今日を、いい感じで頑張るためにも、穏やかで静かな感動を見つけて進みましょう。




 




 

ふたつの神話

スポーツの威力って凄まじいですね。連日、主に夜のダイジェストでチェックするだけでも感動感動また感動で、もういいよ、寝られなくなっちまうってんでチャンネルをニュースかお笑いか、録画しといたチコちゃんにチェンジする。そのコントラストは時空をワープするようで、古代ギリシャ文明のピュアさは選手たちによって再現されているのだなあと。そうそう、古代ギリシャでは神事としてオリュンピア大祭が起こり、4年に1度を400年以上続けたそうな。それはローマ時代になるとコロッセオ(円形競技施設)で奴隷を戦わせる残酷無残な見せ物になってしまったんだよなあ。あ、いや、この頃夜の庭で、ギリシャとローマについて読み漁ってまして。興味深いですよ、ギリシャ神話からローマ神話への変化とか、ローマ時代にギリシャ美術を模倣する『ローマン・コピー』が大流行りしたとか。古事記とギリシャ神話の類似点と差異、とかね。何で突然ギリシャに興味が向いたのかは自分のことながら不明。いいんです、不明のままで。普段興味ゼロだった競技にうっかり感涙することに似て、理屈抜きに夢中になれる世界の中に感動が隠れているのですから。曰くも疑惑も飛び越えて、有り余る感動を提供してくれている選手たちに感謝です。さてと、今度は自分が感動の庭を思い描く番だ。



早起きをして、カメラ担いで里山を一巡り。

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自分以外のサピエンスは見当たらず、
極楽とんぼの浄土はただただ静寂。

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ああ、これが正常なる清浄の朝。

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ギリシャに倣ってこっち側で設計しなきゃなあ、などと。

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ギリシャとローマの違いは、
昭和と令和の違いに似ているんだよなあ、などと。

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他意はありあませんけど、どうせなら縄文を模倣すればいいのでは、などと。



ギリシャ神話の主軸となっている全知全能の最高神ゼウスがね、とんでもない女好きのろくでなしでしでして、アマテラスの弟も、どうしょうもないマザコンだった。他にもね、両方共にコンプレックスとスキャンダルの連続。時空を大きく跨いだふたつの神話がそんなことで、つまりは不幸へ落ちないための警告の列記なんですよね。神ならざる猿はせいぜい神々の警句を思い出し、渓谷に吹く風の如くに爽やかな汗を流して暮らしましょう。なかなかいい夏じゃないですか。え、1万人を超えそうだって?いいのいいの、ギリシャ時代の田原総一郎、偏屈頑固な論客ソクラテスが言ってたじゃないですか「無知の知」って。あれはね、己が身の愚かさに気づいて謙虚になれと解釈されがちですが違います。知らないことは知らないんだから考えない。どうなるかわからないことに気を取られて、起こってもいない不幸の恐怖に葉がいじめにされて、今現在の判断を誤り幸せを手放してはいけない、という意味なのであります。明日のパンより今日のケーキ。いきなりローマからパリに飛びます、飛びます、小太郎に。なんでそうなるの!マリー・アントワネットが言っていたじゃないですか、パンがないならケーキを食べたらいいじゃない。では偉大なる女王様のお言葉に従いまして、今日も感動感動また感動。



高橋幸宏・高中正義・後藤次利・今井裕
今は神話となった4人の神による昭和の音楽。
今日はこんな気分で。




 

芝生の庭 3つのポイント

初夏に傷んだ部分の補修をし、その後は忙しさに寄り切られて俵を割ることの繰り返し。雑草取りと散水は欠かさなかったものの芝刈りは先延ばしで、伸びに伸びた芝を眺めつつ開会式の團十郎を気取って、暫く、暫く、し〜ば〜ら〜く〜!もう暫く放置しといた方が芝も楽であろうなどと、これぞ芝楽〜!と見栄を切ったりしていたら、おやおやどうも色が良くない。慌てて散水を増やしましたが、回復するどころか日増しに色を失ってゆく。もしやこれは・・・やっぱりそうか。10センチ以上に伸びた芝が夏の陽射しとしつこい追い水で蒸れてしまったのでした。



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さて対症療法。芝は根元の1〜2センチあたりに成長点がありますので、それを痛めないように丁寧に、いつもよりも深めに刈る。休眠期に繰り返し肥料をあげて「何にも咲かない冬の日は」ってんで根はがっちり伸びたのび太くんなら、この外科手術にも堪えるであろうと信じての荒療治。丁寧に、丹念に、「私、失敗しないので」とドクターX 米倉涼子。オリンピックが終わる頃には例年通りに青々としたブルーのじゅうたん敷きつめて、楽しく笑って暮らすのよ。真っ赤なバラと白いパンジー、小犬の横にはあなた、あなた、あなたがいてほしい。昭和の御世より芝生は幸福なる家庭の象徴ですな。



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ところが年号は昭和から平成へ、平成から令和へ、少女から大人へ、大人からお婆さんへ。お爺さんは庭へ芝刈りに、お婆さんは友人たちと連れ立ってマスク着用で歌舞伎座へと時代は変わるよ幾星霜、「芝生は大変だから」とか「もう歳だから芝刈りがしたくない」とかのアンチ族が優勢となりまして、最近の新築では人工芝がスタンダードという、昭和者には悲しき口笛吹くばかり。明日は台風接近で、悲しき雨音、ならぬ恵みの雨が降るそうな。いいぞいいぞ、これこそアマテラスと二人三脚できていることの証しですよ。春夏秋冬移ろう庭と並走する暮らしこそが我が理想郷。



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術後にうってつけなる天の計らいに感謝しつつ思うことあり。これまで芝生の絶対条件は「水はけと日当たりの良さ」であると何千回も話してきましたが、五輪のモットー「より高く、より早く、より強く」に今回「一緒に(Together)」が加えられたが如く、 「手を掛ける(Maintenance)」を追加いたします。芝生を育てる絶対条件は、「水はけ、日当たり、メンテナンス」



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After

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Before

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After

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芝生に関して忘れられない言葉を追記。かれこれ15年前、庭にバーベキューコーナーを仕立てたいというご依頼で訪問したお宅の庭は、それはそれは美しい、皇居かディズニーランド並にハイレベルな芝生で、こりゃあご主人による努力の賜物に違いないと(世界共通で芝生の手入れは男の仕事)、「見事ですね」って声をかけたんですね。するとご主人、口の端の片方を5ミリ上げるフィリップ・マーロウスタイルで微笑んで、発した言葉が凄かった。

ふふ、芝生の状態がぼくの状態なんだよ。

出たー!ハードボイルド・ガーデナー。男とは面白き生物なり。芝生とは男のロマン溢れる植物なり〜。暫く、暫く、し〜ば〜ら〜く〜! 一夜が明けて予報通りに雨模様の庭。春の花たちはさすがに枯れてしまい、バラたちもひと休みひと休み。おお、今年はライムが豊作だ。



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ふふ、庭の状態がぼくの状態なんだよ。次は花だ。灼熱を楽しみつつも Love & Peace 、夏は祈り季節なれば、ホーシーツクツク鳴き出す晩夏をイメージしつつ、挽歌の情緒漂うガーデニングと参りましょう。




せっかくの夏らしい夏ですから、暑くて熱い濃い夏を。
夜は庭にて涼風を味わいながら、伊豆甘夏納豆売りの声。

 


 


 

開会式って言ったら鳩でしょ

店の前の園芸売り場では、毎日花苗や野菜苗を買い求め庭人たちの笑顔が溢れています。考えたらうちの店は最高の立地でありまして、それは集客ということ以上に、店から常にその幸福なる人たちが見えている、という点にあるのです。
アフォーダンス・ダンス・ダンス、だいたい物事は、インプットされる情報の総括によって方向づけされ、その先々に当然起こる事柄として出現する。玉石混交が正当にして正統なる政党に属さぬ民衆の憤怒の噴石雨霰となって降り続く日常にあって、イライラの石つぶてからは身をかわし、気味悪い連中の妄言は右から左へ受け流し、電波を使った悲観的予測という土石流からはコンセントがない高台へ逃げる。高台へ、高台へ。
そうやって美しき玉のみをキャッチする者には玉座が用意される。だいたいやねえ、テレビで喋ってる電波賢者のご意見なんぞはそのほとんどが呪いの警鐘ですからね、村の中央にある火の見櫓に登ったやんちゃ坊主がカンカンカンと、オオカミがくるぞ〜!ってんで、次は線状降水帯ですよ〜!ってんで(線状降水帯って、戦場交戦隊みたいでなかなかの名コピー、危機を煽るには打って付け)、村人たちが呆れて、また言ってるよ、狼なんてのはとうの昔に絶滅してんだから来るはずないだろってんで、点で、転で、天で、てんで見向きもしなくなると、坊主は上手に屏風に書いてある金言を持ち出し叫び出す。王様の耳はロバの耳〜!王様は裸だ〜!と。村人たちは足止め、火の見櫓に目をやり話し出す。そうだ、ロバの耳だ、裸だよ裸、坊主よく言ったとやんやの喝采。それで気がおさっまった坊主はスナフキンを気取ってギターを持ち出し歌い出す。曲目は谷川俊太郎訳によるアザーグースの「黒い王様」。


おなかをすかせたこどもは
おなかがすいているのでかなしかった
おなかがいっぱいのおうさまは
おなかがいっぱいなのでかなしかった

こどもはかぜのおとをきいた
おうさまはおんがくをきいた
ふたりともめになみだをうかべて
おなじひとつほしのうえで



しばらく放ったらかしだった庭を、半日がかりでデトックス。
大汗かいて気分爽快。
そうかい?
そうですとも。
いつの間にやら溜まったドグマを取り除いたら、
さて秋に向けて何を植えるか意欲湧く。


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その坊主によるウディ・ガスリーのごとき清廉なる歌声が村人たちの心を癒し、お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に、若者は首タオルで畑仕事を、子供たちは忍者に変身してスイカ泥棒を企むという夏の日常を取り戻したのでありました、とさ。めでたしめでたし。
  



この国はあなたの国
この国はわたしの国
沖縄から北方の島々まで
白神の森から四万十の清流まで
この国はあなたとわたしのために創られたんだ

子どものわたしが歩いていたときに見たものは
あのリボンのような高速道路の下に広がる
稲穂が輝く魚沼平野
この国はあなたとわたしのために創られたんだ

わたしは都会へ出て歩き回った
上落合 新井薬師 中野ブロードウェイ
浅草 渋谷 勝鬨 押上 高円寺あたりも
明け方の歌舞伎町でカラスの声が聞こえてきた
この国はあなたとわたしのために創られたんだよって

日照りに喘ぎながら歩き続けたら
あの稲穂が波打つ 雲が渦巻く風景から
懐かしい声の仕事歌みたいに聞こえてきたんだよ
この国はあなたとわたしのために創られたんだよって

 歩いて歩いて歩いた先に警告看板
この先バブルにつき部外者の侵入を禁ず
でも他のところではバブルが弾けて行きたい放題
 空き缶が散らばる路上で誰かが叫んでいる
この国はあなたとわたしのために創られたんだよ!

公園の広場で
ビル群の陰で
集団接種の長い列で
わたしはわたしを見ているようだ
ある者はぶつぶつと不平を言い
ある者は訳がわからず困っている
この国はあなたとわたしのために創られたものなのかな

誰もわたしが生きてゆくことを止められない
呪いの祝祭が執り行われようとも関係ない
誰もわたしの来た道を巻き戻すことはできない
稲藁を焼く煙の香りから続くこの道を
この国はあなたとわたしのために創られたんだから



ウディ・ガスリーのことは、かなりのフォーク好きでも霧の中の人影だと思います。息子であるアーロ・ガスリーの曲を何度か聞いたことがあり、ボブ・ディランが彼に心酔して曲にしたり、文章を書いたりしていることくらいで、遠い世界の過去の人。なれど、発掘するに値する偉人なのであります。彼はチリのビクトル・ハラと同じく革命家的放浪の歌歌いで、その人生物語は、出自も本編もエンディングも両者共に悲惨を極めている。今の世では庶民階級の者が本当のことを言ってもいい、歌ってもいい、少なくとも我が国ではそうなりましたので、本音を排除する世間とのズレによってガスリーみたく精神病になることも、ハラのように命を奪われることもない。なんて自由で平和な世の中になったことだろう。万歳、だ。バンザ〜イ君に会えてよかった!とだって左右からの攻撃を恐れることなく叫べる世の中にまでなった。本当のことを誰もが語り歌うことが許されるんだから、万々歳です。しかし困ったことに本当のことが見えない。でしょ?肝心の要がひた隠しにされていおるのか、いやいや要が存在しないのかもしれません。王様の耳はどんなだっけ?・・・そういえば王冠がデカくて見えないね。民の声を聞く耳なんかついていないのかも。でですね、仮設ですけど、何もかもが虚構で、ほら、あの惑星の砂浜に突き出た自由の女神のようなエンディングが来たとして、さて続編は。もしかしてだけど〜、もしかしてだけど〜、そこで心を打つ詩を歌い上げる才能を持っているのは、大谷翔平と池江璃花子かもしれないなあ、などと。陛下が侍従を使って絞り出すように小さく呟いた一言を、かつて万歳万歳を叫んでいた世代と、それを総括して自らまで総括した世代の残党たちはどう受け取ったのだろうか。あるいは右から左へ受け流したのでしょうか。こだまでしょうか。馬鹿と言うと馬鹿と言われるから口をつぐんでいるのでしょうか。それも仕方なし、これだけ言葉が原因で百叩きに合う自称賢者、実は他称変者が立て続けば当然の自主的箝口令なり。





つまりはこれは時代のデトックス。人心を操ることに熱心で人の心を失った者たちの首が180度回って緑の毒がどくどくと。きゃーこわいー!いやいやまだまだこれからですよ。出して出して全部出して、もう出汁もとれねえスカスカのガラになったらそこからが復興の始まり始まり〜。廃墟に鳩が飛ぶ〜。
まあいいや、こちとら仕事が溜まりに溜まってそれどころじゃねえ。それどころじゃねえけど、ひとつだけ、言わせておくんなまし女将さん。戦争って、いつもこうやって起きるんですよね。居並ぶ賢者がそれぞれの立場を正当化するうちに、何かが失われてダッチロールが始まって、誰のせいでもなく開戦となってしまう。登場人物全員が正義の人のままで。女将さん、何が失われてしまったのでしょう。さあ女将さん、決め台詞を。さあ、さあ、女将、あの決め台詞を。え、さすがに照れくさい。そうですか。

いよいよというか、やっとというか、本日日本のオリンピックが始まりますね。あー、あー、本日は晴天なり。灼熱もひと段落し、晴天に心地いいそよ風。台風は左に逸れたしアマテラスは祝福しているご様子なれば、愛と平和の祭典を電波越しに心ゆくまで楽しませていただきます。もちろん最大の、愛ある声援を送りながら。実際、選手たちが子供や孫みたいに思えて仕方ないんですよね。これは歳のせいかもしれませんが、だとしたら健全なる老人力なり。
項垂れていた民を見上げさせる、希望と感動の青い稲妻は準備万端らしいけど、鳩は飛ぶのかな?なんてね。




真夏のフェアリーテール

体感気温とは面白いもので、気温計を手にしたリポーターが時たま数値化したりもしますが、数値化しきれない部分に体感があるわけです。陽射しは焼けるようでも日陰に入るとエアコンでは得られないエアコンの設定温度にはない涼風を感じる。よっこらしょっと、よっこいしょういちっと冷えたタイルの玄関ポーチに腰掛けて、水筒から氷水をごくごくと。ん〜〜〜甘露甘露。真夏は水が最高のご馳走なり。ん、この風は確かどこかで。どこかもここかもすぐに脳内のスクリーンには、夏休みの縁側風景が広がるのでありました。



芙蓉の花が目に涼しい。
酔芙蓉、不要の要は少年時代。
その心は。
傍目にボケーっとしている時間が少年の根っこを育てているのです。

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昨日大量に捕まえてきたサワガニが洗面器から脱走し、二匹しか残っていない。少年は残念さと安堵が半分半分。爺ちゃんご自慢の坪庭の先には畑があって、その向こうにはこないだまで蛍が飛んでいた小川がある。きっとそこで、大脱走に成功したカニたちも安堵していることだろう。逃亡犯の踏み台となって逃げ損なった二匹を、小川まで運んで放つ。



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友達と大川へ行って突き(カジカを突いて河原で焼いて食べる遊び)をする約束の時間まで、退屈とワクワクが半分半分のまま、宿題もしなきゃなあと面倒くささと責任感が半分半分で結局は先延ばしにする。毎日毎日先延ばし、不安とまだ平気だよという言い訳が半分半分。だいたい少年時代とはハーフ&ハーフで過ぎて行くものだ。 ただぼくの場合、ちょっと違っていたのは妄想癖。半々を繰り返す背後というか奥というかで、止むことのない蝉の声みたいに想像の世界が展開している。ゴジラやケムール人は常連で、アリが親友だったり、空が無限のカンヴァスだったり。



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その癖は少年が爺さんになっても変わらない。さてと、休憩終わり。庭の四隅に蚊取り線香を追加して、測量作業の再開だ。首タオルで顔を拭いつつ、現状を測りながら、脳内ではすでに仮想庭が仕上がってゆく。当たり前に過ぎる見解ながら、もう子供ではない。その証拠に、お客様の目から鱗がはらっと落ちる瞬間へのワクワクと、想像から湧き上がる創造欲求が半々ではなくひと塊で、金田正太郎くんが持つリモコンを操作して、まとわりつく体温よりも高い空気をかき分けかき分け、鉄人を動かしているのでありました。



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真夏日のひと休みは、脳が沸騰しているせいか濃厚にしてノスタルジックなり。つまり、だ、体感温度は記憶と癒着しているために、夏の日陰のそよ風はハックルベリーかスナフキンか、少年時代の幸福感。夏には夏の楽しみを。










 

真夏のルーベンス

パトラッシュ、疲れたろう。ぼくも疲れたんだ。何だかとても眠いんだ・・・パトラッシュ・・・



河口湖の夏。
今年は行けるかな。

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いやはや、これだけ急激に暑くなると、いかな夏好きであっても時々気が遠くなる。測量作業で汗を流している間はシャキッとしていても、店に帰って人心地ついた途端に睡魔が。そんな時には燃え尽きた矢吹ジョーとなってしばしぐったり意識不明を楽しみます。だいたい15分で復活。頭スッキリ、スイッチが切り替わって今度は設計に熱中症。



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この感じ、懐かしいのです。昭和の御世では大人も子供も昼寝をしていましたよね、「親が死んでも食休み」とか言っちゃって。子供心に、無理やり寝かされるのが嫌だったなあ。家人もご近所も、町中がシーンとするあの時間。それでも縁側でタオルケットを掛けられて横になっていると、いつの間にやら熟睡で、パッと起きて午後の作業に取り掛かっている大人たちの気配で目が覚める。オメザに冷蔵庫からシャービックを出してもらい、縁側から足をぶらぶらさせて食べたら、さあどこに遊びに行きましょう。



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今朝、ココの食欲がなくて少し心配しています。あの元気者がフードを食べず、好物のおやつにもそっぽを向く。時々ある事なので平気だとは思いますけど、やはり気になるので今日は早めに帰ろうと多います。昨日の夜の散歩がまだ暑かったからばてたのかも。そう言えば夜中にやたらにくっついて来て、顔をぺろぺろ舐めてたなあ。暑さで寝苦しく睡眠不足だったのかもしれないなあと、心配し出すと仕事が手につかず、やれやれ、皆様が首を長くしているのにこんなことではいけませんなあ。昼飯食ったら少し寝るか。

探しに来てくれたんだね、ありがとう。ぼくたちはいつまでも一緒だね。ずっと見たかった絵を見ることができて、すごく幸せなんだよ。

頬を寄せ、ルーベンスを見上げるネロとパトラッシュ。大聖堂の天井画から天使が舞い降りてきます。天使たちはネロとパトラッシュを抱き上げ、天空へと。美しい讃美歌とともに。





暑さは人を裸(ピュア)にする。だからでしょうか、夏は祈りの季節でもあります。灼熱の作用で愛情が煮えたぎって、やがて濃い味の恋味が抽出される。あ、あの物語は冬でしたね。夏来りなば冬思う。嵯峨のがばいばあちゃんが言いました。暑い暑いと文句を言うな。暑い夏には寒かった冬を思い出せ。



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さ、集中集中。そして早めに帰ってお爺さんは庭へ芝刈りに。紺屋の白袴、仕事仕事で芝も雑草も伸び放題になっています。スカッと仕立てた芝生でボールを追う、元気なココの姿を思い浮かべながら汗を流します。




 

はらたいらさんに全部

若いご夫婦がベランダガーデニングでしょうか、迷いに迷って花をひとつ選び植木鉢と土を買う、微笑ましい光景です。ただ不慣れなのでしょう植木鉢がとても小さい。育て方を聞きに来てくれるので、日当たり、水はけ、肥料、鉢底石のことなどを説明し、最後に「土の量は最低でも苗のポットの10倍は必要ですからもう少し大きな鉢の方がいいですよ」とアドバイスをします。皆さん「そんなに土がいるとは思いませんでした」と驚き鉢を選び直します。



夏野菜は水分ミネラル豊富。
バクバクと季節の旬を味わって、
いよいよ始まった灼熱を楽しみましょう。

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鉢植えは植物には過酷な環境で、水やりはもちろんのこと、根っこが気兼ねなくスイスイ伸びられるだけの土の量がないと早々に成長が止まってやがて枯れてしまうわけで、その体験にショックを受けて、ガーデニングは苦手と自分にレッテル貼りをしてしまうというのが、とてもよくある残念な現実。すべては最初の土不足が原因だとしたら、と思うと、売り場に立って「土はたっぷり目にして育ててください」とアナウンスしたい気持ちになるのです。



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花鉢の土だけではなく自然界は有り余ることが原則。例えば昆虫は蜜を食べ放題なだけの花の量があるから生きていられるし、鳥も食べ放題な数の昆虫がいるから雛を育てられるし、あらゆる動植物が飢えに怯えず食べたい時に存分に食べられる状況下でのみ伸び伸びと暮らせる、その状態が正常なバランス。それぞれの種族が食べ放題、飲み放題、寝放題、起き放題、遊び放題ができる生息域、ニッチ(隙間・あるまとまった範囲の理想の生態的地位)とはそういう場所で、そのニッチとニッチが影響し合って生態系が維持されているのが自然界の仕組み。故に、もしもあなたが暮らしに何らかの困難を感じているなら、もしかしたら、単純に居場所が適切じゃないのかも知れません。



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地球上で代をつないでいる生命の精鋭たちが、必要十分なエネルギー源なり環境が有り余る中で暮らしていて、それは適切なニッチにいるからである、という前提の上に成り立っているのだ、として、さてヒトはどうでしょう。有り余る食料と、有り余る便利な家電と、有り余る生活に関する快楽システムを手にしているわけです。その状態を維持するために思考し賢明に、懸命に働いている。ところが時たま落とし穴に落ちるが如く、何かの不足に陥り追い詰められることがあるわけで、それは主に心に関わること。孤独感とか・・・。そんな時に庭が役立ちます。いつも有り余りながらバランスを保っている庭世界と同調する、あるいはその世界の自然さに包まれることで自分の不自然さに気づく、それが癒し、ヒーリングなのです。



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巷間言われるヒーリング・ガーデンとは、ヒール(癒し)を必要とする状態、つまりバランスを欠いてしまった者にのみ存在価値を持つものである、と考えると、健全なる大多数の人には関係なさそうに思えますけどさにあらず。咲き誇る草花、そこに集まる昆虫たち、それを狙う野鳥、どの生物にもアクシデントや突如とした環境変化はつきもので、その度に傷つき、疲弊する。すると必ず草のアロマに包まれながら休息し、夜風の感触に安らぎ、朝露とフレッシュな光を浴びることで全身にパワーが漲って傷が癒え、食欲と元気が湧いてくる。



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庭は必要です。庭じゃなくても自然を感じる癒しの時が不可欠なのです。っていうか、そこにたどり着けたら人生は上々なり。コロナが始まって変わったことがあって、それは園芸売り場の主役が元気なガーデニング奥様から高齢者になりました。ベテラン顔で野菜苗を買うお爺さん、マリーゴールドをガゴいっぱいにしてレジに並んでいるチャーミーグリーンなご夫婦、娘さんに付き添われて花選びをしている車椅子のお婆さん。先程、開店と同時に駆け込んできた80半ばの男性が「ワイフが野菜をやってたんで、俺もやってみようと思ってね、お兄ちゃんに任せるから土と苗を選んでよ」と。連れ合いに先立たれた男は青菜に塩、ヘナヘナで立ち上がれなく場合が多いのに、その方はいたって元気で意欲的。ワイフって、お爺さん、仲良しだったんですね。



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いいぞいいぞ、サピエンス。縄文後期から1万5千年もそうやって、植物と交信しながら暮らしてきたんだから、コロナ禍の出口で先祖返りか赤ちゃん返りか、無邪気に畑で汗を流すなんてのは最高の復興ですよ。諸先輩方、そろそろ仕上げの時となりました。いち日いち日が貴重な余生ですので、ここはひとつ、改めて庭に意識を向けてみませんか。まだまだ先であるにしても終わりよければすべてよし。最終問題は「はらたいらさんに全部」ってんで、庭に賭けてみるのもご一興かと。ポツンと一軒家に登場する充実の最終楽章に、いつも平伏し見事なり!若い者に指針を残すは、いくつになっても夏休みを遊び尽くす、元気はつらつなる姿なり。



ワイフがねって、いやァ〜かっこいい爺さんだったなあ。
乗り越え乗り越え乗り越えて、
行ってみたいなあのニッチ。


 
 
朝んなると起きて仕事に出かけ
はした金のために体をこき使うのに
それなのにあの運のいいお日さまときたらなにもしねえで
ただ一日中天国をまわっていやがる

女房と罵りあい ガキにゃあ手を焼き
皺だらけで髪に白いものが混じるまで汗を流してるのに
その間あの運のいいお日さまときたらなにもしねえで
ただ一日中天国の周りをまわっていやがる

天の神様よ あんたにおいらの苦しみが分からねえだろ
おいらの目の涙があふれているのが
おいらを光輝く希望の雲にのせてくれよ
楽園につれてってくれよ
そこの川を見せてくれよ、川を渡って
おいらの苦しみをなにもかも洗い流して
あの運のいいお日さまみてえに
なにもしねえようになりてえんだ
ただ一日中天国をまわっているだけのお日さまに

 


 

夏夏夏夏ココナッツ

昨日は午前中に3組の熟年ご夫婦が来られて、驚くことに3組とも相談内容がほぼ同じでした。実家の雑草取りを楽にしたい。そのご実家とは、老境のご両親、あるいはどちらかがひとり暮らしをされていて、できるだけ楽に、安全に暮らせるよう、庭や通路を整備したいというものです。
なんの具合か、天候なのか、磁場の動きなのか、はたまた太陽の黒点の位置なのか、このように同種類の相談が立て続くという現象を、前々から不思議に思っていました。ある時は新築予定の方が、またある時は花いっぱいの暮らしをイメージしたガーデンリフォームをしたいという、同じ日に同じことを考えて「そうだ、あそこ、グレースランドに行ってみよう」ということでご来店くださる奇跡的なる合致というか神秘の現象。昨日は平日で、しかも午前中に3組ですから、人組目は丹念に、2組目も丁寧に、でも3組目となると先の2組と同じようなことを、口がイッツ・オートマチックに話しながら、脳内ではこの摩訶不思議をなんでだろう、なんでだろうと、そっちへばっかりシナプスが伸びちゃって、もしかしたら少しぼーっとした変な人と思われた可能性もあります。まあ失礼のないように、過不足のないアドバイスをお伝えしつつ現地調査をお受けしたので、大丈夫だったとは思うのですが。



夏夏夏夏ココナッツ、
愛愛愛愛アイランド。

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オリンピックまで1週間となりまして、
今日あたりが梅雨明けの予報なり。

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来週あたりで夏休みも始まるし、
さあてと、夏の高揚感にアフォードされて、
思いっきり灼熱を楽しみましょう!

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熱中症対策?
そんなの、年がら年中仕事に熱中症ですから大丈夫。

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基本、夏仕様のガーデンデザイナーなのであります。



このように、些細なことですけど、何か人智を超えた得体の知れない力が働いて起こる現象を、ぼくとしては大事にしたいと思っています。曰くシンクロニシティーとか、バタフライ効果とか、波動の法則とか、さらにはカルマの成せる技であるとか、いろんな解析が可能ではあるんですけど、それらはどれもオカルティックなものですから、宗教家か霊能者でない限り時間を労して詮索するに値しないと断じておいて、ですが、しかしその不思議なできごとそのものはちゃんと感じ取って、味わって、しかと記憶に刻んでおこうと思う次第。なぜか。これは実感として、それが起こる時とその後にはググッと調子が上がるから。必ずそうなんですよ。では逆に、悪しきことの偶然が重なることはあるのか。あなたはどうでしょう。ぼくの場合、そんな場面はなかった気がします。何かよくないことが起こると即座に身構えて気を引き締め、一刻も早いリカバリーを試みる。すると思いのほか早い段階で、幸運に恵まれ平常の暮らしに舞い戻ることができる。強運と申しましょうか、あるいは瞬発的な防衛本能が功を奏するんですかね。ありましたよ何度も、もうダメか、もはやこれまでかってこと。とは言っても命に関わるようなことじゃなくて、パソコンがフリーズしたとか、財布を無くしたとか、その程度のことですが。それにしてもなんでだろう、なんでだろう、なんでだなんでだろうと、まあいっか、仕事仕事と設計に集中していたら、午後3時、4組目の、同じ内容のお客様がご来店。おいおい、本当にこれは何かある。上がる上がるよ気分が上がる、を通り越して、いったい誰が仕組んでいるんだと。アマテラスか?大天使ミカエルか?まあいっか、とにかくひとつひとつのご相談はどれも親への愛情があってのことなれば、わたくしといたしましてはひとつひとつを丁寧に、最善の策を施すのみ。愛ある世界では庭を整えることがお作法なり。いつもながらの余計なお世話で、雑草取りを楽にすることにとどまらず、その庭が幸福な暮らしのステージとなるような提案を加味しながらの設計作業となります。「うちのお婆ちゃんは90だけど、あの調子だと100までは全然平気っぽいので、雑草のことを気にしないで暮らせるようにしてあげたくて」というお嫁さんの言葉を、隣りでニコニコしながら聞いていたご主人の顔、幸せそのものだったなあ。


やっぱね、存分に長生きせねばね。
それにしてもポール様、あなたという方はどこまで少年なのでしょう。
無礼にも老人性躁病質であるなどと揶揄する輩もおりますが、
あなた様は年齢なんぞは凌駕した、稀有なる永久不滅の音楽少年なのですね。
少年力と老人力は、一周回って同じものなり。

 


 


 

サボテンの花

人を外見で判断してはいけない、というのは平和で長閑な昭和時代のコモンセンス。魑魅魍魎が跋扈する、おっと、漢字が難字な感じなのでカタカナ変換、チミモウリョウがバッコする令和の御世においては、人であろうと物であろうとそのデザイン性から本質を探るは必須の能力。ことにマスク着用が常識となった昨今なればなおのこと、瞳の輝きやら目尻のシワやらでご機嫌を察知せねば生き残れませんぜ。というわけで、その男性は70代、身なりや姿勢や言葉使いから、大きな企業を勤め上げて今は悠々自適なのであろうと推測され、充実の人生を仕上げるにあたって庭をどうにかしたいのかと、ウェルカム・マイ・ワールドと、瞬時に、無礼のないように気構えました。ん、ただ一点、瞳が潤んでいることが気になって、あまりこちらから話しかけない方が良さそうだと判断して軽く微笑み、言葉を待ちました。

サボテンが枯れそうで、これは助かりますか? 

ジェントルメンは紙袋から小さな小さなサボテンを取り出して、ぼくに手渡しました。鉢は直径高さ共に5センチくらいで、その上にお供えみたいな球形のサボテン、直径3センチほどです。

これですね。どうでしょう、とても元気そうに見えますけど枯れそうなんですか?

はい。買った時より色が薄くなって、明らかに元気がないんです。

そうですかあ・・・

困った。そして同時に、またか、とも思いました。庭全体や草花に、あるいはペットに、多くの場合は妻や子に愛情をそそぐことが生きがいになっているのは、我が種族におけるごく普通の幸福なる習性なのですが、サボテンに限らず小さな植物に大きく感情移入している場合、そこには相当に深刻な背景があるということを何度も経験してきました。上等で正当なる身なりにそぐわない、抑揚を失った弱々しい声。どうやらそのようです。気になった瞳の潤みは眼病ではなく涙が溢れる寸前なのだと、繋がってほしくないところに繋がってしまいまして・・・困った。 もしもこの流れで70代の紳士に泣かれたら、60代の似非紳士エピキュリアンに成す術などあろうはずがない。せめて女性であれば、長年に渡り培ってきたヴィヨンの技量をフルに使って相手の笑顔を回復させられる可能性はあるのですが、いやはやどうしたものか。でもこうして後生大事に現物を持ってのご来店ですから、う〜ん・・・。
当方の困惑を察知してか、紳士が自ら裏事情を話し出しました。

一昨年父が他界いたしまして、大往生だったんでよかったんですけど、やはりショックというのはあるもので、父が世話をしていたシュロチクの鉢植えを大事にしようと毎日水をあげていたんです。そのシュロチクの元気がなくなってきて、妻が「もう枯れそうだから捨てますよ」って、私の制止は聞かずにバサバサ切って、引っこ抜いて処分してしまいました。それが悲しくて悲しくて、お恥ずかしいことですが、泣きました。父が切られて捨てられてしまったように思っちゃったんですかね、その瞬間に何かが壊れて、立っていられなくなったんですよ。初めてです、あんなのは。それからしばらく何も手につかなくて、やる気も出なくて寝てばかり。

そんなことがあったんですか。辛かったですね。わかります。それで、今はどうですか?とてもお元気そうに見えますけど。

ええ、物は考えようで、このサボテンを買ってから急にやる気が出ましてね。ところがこいつもだんだん元気がなくなってきて、あの時の、何かが壊れた時のことで頭が一杯になるんです。それでこちらに伺えば助かるかもと思って。お隣さんがこちらで庭をやられたそうで、時々話に出ていました。すごく綺麗な庭で、奥様は毎日庭にいて、よく声をかけてくださいます。

そうれはそれは。ところで、さっきお父様の鉢植えに毎日水をやっていたっておっしゃいましたよね。このサボテンにも毎日、ですか。

ええ、やり忘れたことはありません。

そうですかあ。真面目な性格なんですね。それと愛情深い。

男性はニコッと笑って、「とても真面目です」と。
脳内には古畑任三郎のテーマが流れました。はい、問題は解決。極力古畑のモノマネにならないように気をつけながらのアドバイスの開始です。

ご主人、原因がわかりました。チャラララララララララ〜♪ なぜお父様の鉢植えが枯れ、今度はサボテンの元気がなくなってきたのか。チャラララララララララ〜♪ 根腐れです。予想ですけど、受け皿にはいつも水が溜まっていますよね。植物は地中と地上で連動していますから、地上部分に元気がない場合は地中に原因があるものです。根っこはいつも手が届くところに水があると伸びる必要がないわけで、だから上の枝葉も伸びないし、常に水が溜まっている状態では根が腐って上も枯れてしまう。ご主人の来し方は仕事仕事で、園芸を楽しむことがなかったのでは?年齢的にも団塊ですし、そういう時代でしたから。

えっ、水のやり過ぎだったんですか。

十中八九それが原因です。

前のも?

そうです。

その方はへたり込むように椅子に腰掛け(それまでは座るのももどかしい感じで立って話していました)安堵のため息をひとつ吐いてから大笑い。

なああんだあ、そうだったんですね。そういえば妻にも何度か言われてました、そんなに水をやらなくていいのよって。でも私は、そう、ご指摘通り真面目な性格なもので、せっせと欠かすことなくあげていました。ははは、なあんだあ、そういうことですかあ。

先刻より、15メートル離れた場所からこちらを凝視しているご婦人の存在が気になっていました。腕組みをして、川崎麻世の前夫人か峰竜太の現婦人か、遠目にも鬼の形相を感じてこちらとしては恐くてチラ見しかできない。きっと奥様なんだろうなあ。シュロチクを捨てたくだりから察するに、頭には角が生えているに違いないと、我が女房とダブってビクビクだったのです。しかしこうしてご主人様の悩みと不安が消えて笑い声になったことで、さて反応は、とご婦人を見ると目が合いまして、鬼は腕を解いて軽く会釈してくださいました。そうかそうか、きっと生真面目にして女性脳には理解不能で、思いがけず繊細だったご主人をどう扱っていいのかわからなくて困っていたのでしょう。もしかしたら老人性うつを心配されていたのかもしれません。
仕事仕事で植物のことなど一切考えたことがなかったであろうご主人に、光合成の解説から始めて草花の育て方のコツを伝授いたしました。団塊世代の特徴で、メモを取りながら興味津々。やがて奥様が近づいてきて、そんなご主人の様子にほっとされたご様子で、「あなた、来てよかったわね」と。そこにはカエラや美どりではなく、木村多江が立っていたのでありました。めでたしめでたし。
ああよかった、一時はどうなることかと、お願いだから仲良くしてよと念じながら話していたもので。いろいろあるでしょうが夫婦は夫婦。なんであんなに酷い扱いをされて離婚しないのかしら、などと外野はおっしゃいますけど、なあに、様々なケースを見てきましたが、なんで離婚しないのかなあって言われてからが夫婦善哉に隠し味が効いておいしくなるのですよ。リン気や短気で食べ損なわないようにいたしましょう。それと、できることなら庭はふたりで楽しむようにしていただきたい。ふたり揃って植物の営みや自然の変化を感じ取れば、会話が減っても、言葉の本意が通じなくなっても問題なし。ひとつ屋根の下で、あの時同じ花を見て、美しいと言ったふたりの心と心に、適度に水やりすれば丈夫に育つから大丈夫。グッジョーブ。バッチグーですよ。



サボテンを地植えにする場合は雨の日に庭に降った水が流れてゆく先で、
かつ水捌けと日当たりがいい場所に。

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庭の盛り土を支えている石垣の隙間に根付いてくれれば、
一切世話することなく成長し、やがてたくさんの花をつけるようになります。

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多肉植物は基本的に放ったらかしがベスト。

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子育ての如く、手をかけるよりも設定が大事です。 

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懐かしき、ロマンティークで悲しい家庭崩壊の名曲は、
戒めのイマジネーションであり実存する円満家庭へのオマージュなり。
お若いうちならトライ&エラーが正解でありましょうが、
いい歳こいたら警鐘であると、そんな聴き方がよろしいようで。



振りでもいいから夫婦仲良くしときましょうよ。
暑さ寒さも彼岸まで。
恨みつらみも彼岸まで。
鬼の形相で「恨みはらさでおくべきか」などという結末は、
犬も食わないし、猫なんか素知らぬ顔で跨いで通るだけ。
あほらし。
互いに半分ボケちゃって、ハーフ&ハーフで一人前とばかりに手をつなぐ、
チャーミーグリーンが理想的。


 

一件が落着し、帰り際に交わした木村多江さんとのやりとりです。

あのお、亡くなったお父様は庭が好きだったんですか?

ぜんぜん。一切お母さん任せで草取りもしない。お母さんが亡くなってからは書斎から出ることもなくなって、ずうっと時代小説を読んでいました。池波正太郎と司馬遼太郎が大好きで、同じのを何回も読んでいたみたいです。庭の担当は私になって、腰に蚊取り線香ぶら下げて雑草と戦ってますよ。

ご主人は?

庭ですか?興味なし。時々は誘うとお茶を飲んだりしますけど、蚊がいるだけで大騒ぎするし、外が嫌いみたいです。

そうですか。この機にご主人に野菜作りをご指導願えませんか、一応のコツはさっき話してありますから。きっと食べきれないほど収穫するようになりますよ。

あら、それは面白そうね。あの人凝り性だから、やるとなったら凄いかもしれない。よかったあ機嫌を直してくれたみたいで。へそを曲げるとけっこう面倒でね。ありがとうございました。

ハハハ、こちらこそありがとうございました。今後ともご贔屓に。

ご主人はすでに少し離れた野菜苗売り場で、興味深げにラベルを読んでいます。やはりそうです。凝り性で愛情深い団塊世代は、場の設定次第で枯れもするし花も咲く。ゲバ棒・総括・アジテーション。いちご白書をもう一度。肩まで伸びた髪をバッサと切って、「もう若くないさ」と言い訳したかと思ったら、熱冷めやらずイージライダー・イージューライダー。仕事はやり手でバブルを闊歩し、稼いだ金で理想の住居を獲得して、さて老後となったら、あれ、庭ってどう楽しめばいいの?いいのいいの庭なんて楽しまなくたって。あなた方は人類史上最高に運のいい巡り合わせで幸福なる平和と成長の時代を生きたんですから、これ以上望んだらバチが当たりますよ。せいぜい奥様を大切に、正論を言いたがる口にチャックして、論争をしたがる癖も封印して、植物に倣って自然な気持ちで日々をお楽しみください。いやほんとにそう思うんですよ、時代を創った先輩諸氏に感謝を込めて。どうかどうか、昔の偏屈癖が抜けずに晩節を汚すことなかれ。兎にも角にも夫婦仲良く、それがあなた方が叫んでいた Love & Peace に他ならないんですから。ただあなたたちは、熱狂のあまりにゴール地点を見失っていたのかもしれません。メソメソ泣かないでくださいよ、お願いだから。反体制分子が幾星霜、ついに体制側となったと思ったら家庭内孤立、会話なし、友もなし、ついに熟年ならぬ老年離婚なんて結末は笑い話にもならない。あの日の熱狂がただの狂気で、そこに愛がなかったことの証明になってしまいますしね。かつて熱血左翼青年だった先輩諸氏よ、いよいよ念願だった仕上げの時が来ましたぜ。レッツラゴー!とオオ・モーレツに、奥様に愛の言葉をプレゼントしてみてはいかがでしょう。え、いまさら照れ臭い?んなこと言ってないで、ドンと行こうぜ、ドンとね。ドンガラガッタドンとドンと行きましょう。





このお話は、植物にまつわる3つの出来事を混ぜこぜにして仕立てたフィクションです。主軸となっているご夫婦とのエピソードはかれこれ1年前の出来事で、その後何度か園芸コーナーの人混みに、ふたり揃って植物を買い求める姿がありました。よかった、本当によかった。




 

一足早く梅雨明けをツー・ユー

昨日の午前中は設計に熱中症、昼にサプライズで孫たちがご来店、いつも通りにペット売り場を一巡りして、犬と猫とウサギと亀と爬虫類と鳥類と昆虫と魚類に挨拶および世間話をし、美空からの「ジイジくんとお寿司行きたい」という嬉しいお誘いに乗ってスシローへ。



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食べた食べた、あ、ぼくがですけど。孫たちは寿司はちょこっとで、フライドポテトとバニラアイスで「ごちそうさまでした」。午後はいざ鎌倉、常連さんにお買い求めいただいたファニチャーを組み立てに。工具は万全、15分もあれば出来上がるだろうと思って梱包を開けたら、これがやたらめったら複雑で、ボルトだけでも6種類あって1時間はかかりそう。さすがは常連さん、よく手入れされた気持ちのいい芝生にドッカと座って組み立て作業開始。すごかったでしょ、昨日の陽射し。やっと晴れたかと思ったらいきなり灼熱の夏日和で、セミは鳴いているし、汗は吹き出すし、お客様から頂戴したペットボトルのお茶を飲み飲み作業が完了したのは3時間後でした。帰り道でコンビニに寄って食べたガリガリ君の美味かったこと。太陽がいくらか西に傾き日陰になった谷戸のコンビニ駐車場に、六国見山から涼風が入ってくる。いい感じいい感じ。なんか、とてつもなくでっかい感じの1日だったなあと、幸せだなあ〜と思う瞬間でした。帰宅してからは脱水気味だったんでしょうね、やたらに牛乳が飲みたくて、ビールよりも先にアイスカフェオレと甘酒オーレをがぶ飲みして、満足度があまりに高く習慣のビールは無しで、庭で軽く食べてから読みかけの『菊地成孔の粋な夜電波 シーズン13〜16』を開いたものの、「ばっかじゃねえのこの人。やっぱ天才はどっかおかしいし、可笑しいものなのであ〜る」と笑いながら2ページで早々の寝落ち。真っ白くなったジョーのポーズだったもので、項垂れた首の痛みで目が覚めたのは2時間後。慌てて犬たちの食事を用意して、その後はゴミ出しついでに30分ほどの夜の散歩を完了。さて寝るか。ところがここで素晴らしかった今日を再度反芻したくなって再び庭へ。なぜ幸せだったのか。孫たちのサプライズか?スシローか?大汗かいた鎌倉での作業で心身が活性化したのか?今度はビールで。すぐに寝てしまいそうだから本は開かない。心は江ノ島方向からの涼風に開き切っている。そうか、わかったぞ。不幸にはいちいち満遍なく理由がつきまとうが、幸せの最中にいる者に理由などないのだ。っていうか、必要ないのだと、これでいいのだと、必要かどうかに関係なく、感謝は湧き上がってくる。ありがとう、美空ちゃん、結陽ちゃん、ふたりのお母さん、そして何より、孫たちの初々しい髪の毛を愛おしく汗で濡らしてくれた、しばらく続いた曇天で停滞していたぼくの水分と毒素をデトックスしてくれた真夏の気候に、心より感謝感謝でシズルなグラスを空に突き出した。さて悦楽の庭時間を彩る音楽は、迷うことなくこれ、コルトレーンの異色作にして名盤バラードの1曲目 Say It 。





脳内でアドレナリンが沸騰する夏の夜にお似合いのニュアンスがたまりません。コルトレーンによる潮焼けしたようなテナーと並走する涼風はマッコイ・タイナーのピアノ。遠く近く聞こえるさざ波ドラムはエルヴィン・ジョーンズ。1962年にどんな経緯で、どのような理由でこの録音がなされたのか、当時のコルトレーンは激しさの人であり、時代はモードジャズへの転換期にて、彼が唐突にこのようなバラードを打ち出すなんて世界で誰一人思っていなかったに違いない。もしかしたら本人も。この疑問符の故だろうか、批評家はこぞって批判した、「こんなのジャズビギナーに向けた小銭稼ぎである」と。違う。聴けば聴くほど絶対に違うのだ。村上春樹およびハルキストを批判するうるさ方と同じ構造で、表現者御当人は批判者とは異次元の、評論などという雑味成分が存在できないピュアな空気の時空にいるのです。世の中の理解など必要としない高みにいる者の音楽なり文学なり、絵画や映画や演劇や、だいたい20年もするとそれらだけが輝き続けて名作として生き残る。願わくば、音楽ではなく、文学でもなく、政治にそういう人物が出現しないものかと思ったりもしますが、せっかくの幸福な時間なので、まあそれは別の話として夜風に飛ばしてしまいましょう。とにかくこれで、気象庁とは関係なく宣言しますけど、梅雨は明けました。遅く入って早く抜ける、スローイン、クイックアウトなアマテラスの計らいに感謝感謝。あとはただ夏を楽しめばいい。夏のお楽しみに理由はいらない。アドレナリンが沸騰し、ドーパミンが目鼻から滲み出すほどの夏を。昨年の分を取り戻すなんてえケチくせえことに留まることなく、飲んで歌って踊って恋して、感動感動また感動、それが夏ですから。空が晴れれば気が晴れる。この際は徹底的に晴れ晴れと、大いに笑って大いに泣いて、大いに生きようではありませんか。ここまでたどり着くことができずに苦しみの中で命を終えた人たちに、お詫びやら、悔やみやら、感謝やら、誓いやら、複雑系を一絡げにして手を合わせ、生きている者が精一杯に今日を生きることでしか帳尻が合わない娑婆のシステムであることを肝に銘じてシャバダバシャバダバと、はっぱふみふみ、オリンピックもオオタニサ〜ンも大いに楽しませていただこうじゃあ〜りませんか。何、無観客?確か首相はムキャンキャクって言ってたからやけのやんぱちで早口言葉でも始めたのかと思っていました。ロウニャクナンニョヨリニジュウニツウチュウニジュッツウガジアイヲコメテムカンキャクジアイヲキボウチュウ(老若男女より22通中20通が慈愛を込めて無観客試合を希望中)とか。いいじゃないですか涼しい部屋でテレビ観戦の方が。ビールと枝豆とポテチで、灼熱の太陽の下で命懸けのプレーを繰り広げるアスリートに大いなる感動を頂戴いたしましょう。オリンピックの興奮が消える頃にはワクチンは行き渡るし、選挙もあるし、民衆が、皆の衆が、パンとサーカス、マスク2枚と10万円とオリンピック、弱気を挫き強き者が庇いあったこの騒動に沙汰を下す番ですよ。マジで、気づけば命の重みが失われて、随分と平気で軽く扱われるようになりましたよね。女将さ〜ん、時間ですよ〜。御隠居さ〜ん、出番ですよ〜。女将さんが言ってるじゃないですか、そこに愛はあるんかって。そこに愛はあるんか。愛は、愛は、愛ちゃんは離婚しちゃったけど愛は、愛はあるんか私には、あなたには。それが問われるコロナトンネルからの出口なのであります。ア〜イアイ、ア〜イアイ、果たしてお猿さんに愛ありや。愛なきアリアはうっせえうっせえだけですから、ここはひとつマリア・カラスに匹敵する歌姫に閉会式で愛を歌い上げて欲しいものですなあ。え、それは誰かって、そんなのあいみょんに決まってんじゃないですか。演奏は上原ひろみで。あ、すいません、今日も暑くて頭クラクラで、うまいことまとまりませんでした。まあまあ、とにかく夏来りなば灼熱を謳歌いたしましょう。



 




 

海を渡る蝶

ガーデンリフォームの打ち合わせに伺ったお客様の庭でのこと、何やら遠くでチラチラ動いているので近づいて行くと、それはそれは美しい蝶が夢中で蜜を吸っていました。記憶の扉とは摩訶不思議、長らく開けていなかったために錆びつき、存在も忘れていたひとつがいきなり飛び出すように開いたのであります。こいつとは40年ぶりの再会なのでした。



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場所は16から20歳頃まで、冬を除いて毎週のように通い詰めていた越後駒ヶ岳(標高2007m)の山頂まであと20分にある百草の池。森林限界ギリギリに位置して、ここから上は高木が生えておらず灌木と岩場になるため、昆虫や鳥や獣たちの憩いの場になっています。人も最後の急坂に挑む前の一休みで、登山者は必ずここで休憩してから頂きの山小屋へと向かうのです。
その日も単独行で、当時は体力満々ですから池をパスして一気に山頂を目指してもよかったのですが、何か縁起物みたいなルーティンでひと休みひと休み。するとやたらに顔にまとわりついてくるのがこの蝶でした。数匹が頭や腕や広げた手のひらにまで止まってひと休みひと休み。何か仙人になったような気分でカメラに収め、帰宅してから図鑑で調べたらアサギマダラ、海を渡る蝶とのこと。



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アサギマダラは高原を好み、初夏の気候を求めて移動する。寿命は羽化してから4〜5ヶ月で、その間に2000キロを飛ぶ。本州では夏になると平地から標高1500〜2000へ移動し、羽先にチラッと秋風を察知するや速攻で南を目指す。列島の背骨に当たる山岳を南へ、南へ。やがて四国、九州、沖縄、ついに台湾にまで到達するという。南の島の洞窟などで冬を越し、そこで羽化した新世代が今度は涼を求めて北上開始、関東の森へたどり着いて交尾、産卵、羽化、たっぷりの食事、そして山岳へ。



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こいつ、驚くほど警戒心がないのです。いくらレンズを近づけても平気だし、食事中なら簡単に指で捕まえられます。細かいことなど考えるいとまもなく雄大に移動する人生だと、そういう大らかな性格になるのでしょう。それも込みで、昆虫マニアに大人気だそうです。ステンドグラスみたいな羽模様も実に美しい。アサギマダラのアサギとが浅葱色、浅いネギの色、緑がかった薄い藍色。このように標高の低い住宅地で見かけるのは今だけで、梅雨明けには山梨へ向かい、河口湖あたりで遊んでから長野を目指すのでしょう。すごいですよねえ、こんなちっこい図体で、とても飛行に向いているとは思えない羽と柄を有して、生涯をかけて2000キロを飛ぶんだから。



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こちとら新潟→千葉→東京→横浜と、60年かけてもその都度都度に土着を目指す性質なもので、飛行距離はアサギマダラの一生である半年分2000キロの半分足らず。蝶の中でも特異なやつらと比較するのも変過ぎますけど、つい、こんなんでよかったのかなあ、などと思ってしまう再会でした。人生が移動ベースなのか、土着ベースなのか、ホモ・サピエンスは間違いなく、基本的に土着の猿です。されどその場所場所で必ず巻き起こる仲間同士の騒動、食糧難、災害などから逃げ惑って、止むなく住処を変える事の繰り返しで地球全体に生息域を広げた、つまり苦悩の末の生き残り移動作戦が功を奏して地球の覇者になったわけですから、まあ、これでいいのだ、ってことなんですけどね。



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そうそう、ウナギは移動距離8000キロの人生だそうです。かのジークムント・フロイトは当初ウナギの研究者だったそうで、しかし謎多きその生態を探るうち、もっと大きな人間の心という謎に興味が移って精神科医となったお方。フロイトは言いました。

チェスは二人でプレイするゲームだが、実際には4人で行っている。互いに「勝ちたい自分」と「負けたい自分」がいて、相手の「負けたい自分」を引きずり出した方が勝つのだ。

意識と無意識を端的に表現した言葉です。理想の庭の実現を阻止しているのはいつもその人の無意識。さて、では、相手の「勝ちたい自分」を引っ張り出して玉座へと導く負け方は・・・。そうか、無意識に従って海を渡る美しき蝶でいることではないかと思った次第。え、意味不?わからない?大丈夫、ぼくの意識では無意識領域を凌駕して、支配する、きっちりとスッキリした回答だったので。
では、そこそろ梅雨が明けますから、南へ。



蝶といえばこのお方です。
時は2015年8月、サントリーホールにて。
NHK交響楽団がスタンバイした静寂と緊張のステージに、
コンダクターに促されて登場するは本日の主役、アリス=紗良・オット。
なんと彼女は長いドレスを両手でちょこんとつまみ上げ、
裸足で、ドガの少女が踊るが如くにピアノへと向かってゆく。
その姿はまさしく可憐な輝きをキラキラさせて飛ぶ蝶そのもので、
会場は静寂から全員笑顔の歓声へ、そしてまた静寂へ。
演奏が始まるや、少女は会場を羽ばたき、うっとりする以外何もできない
オーディエンスを置き去りにして、遥かに海を渡って行くのでした。 
 


 

夜の庭でYouTubeをチクチクしてたらこれがタイムリーヒット。
そろそろ巷に流れるボカロっぽいのは耳障りで、
うっせえうっせえお年頃。
おじいさんは庭へ芝刈りに行き、
夜になったら百均グラスへお値打ちの
チリ産カベルネ・ソーヴィニヨンを注いでサウンド・オブ・サイレンス、
ただただ心穏やかに、梅雨の夜風とサティーをマリアージュ。
つまみは娘がくれたパルミジャーノと、
食品庫にしまっておいた生ハムならぬ魚肉ソーセージで。
紗良・オット様、海を渡ってまた来日してくれないかなあ。
再会を祈念して、星の見えない湿った空に、乾杯。




 
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