2021年09月

ヤマトタマムシ

旭区にある四季の森公園に近い住宅地で10年前に施工させていただいたお庭の手入れ作業中に、ヤマトタマムシに遭遇。こいつに会うのは数年ぶりで2回目。昆虫好きなら一生の内に一度はお目にかかってみたい、最も美しい甲虫と言われる希少種です(多くの県で絶滅危惧種に指定されている)。前回も四季の森公園をジョギング中の遭遇だったので、広大な森のどこかに生息地があるのでしょう。



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生態はケヤキやエノキなど、限られた樹種の朽木を食べながら2年間の幼虫期を過ごして、成虫になってからは普段人が目にすることのない高枝で飛び回り、葉を食べ後尾をし、たった2ヶ月で命を終えるとのこと。 



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虹色系の甲虫は、マニアにお馴染みのニジイロクワガタや、他もたくさんいます。タマムシだけでも日本に200種、世界では15000種が確認されているそうな。この不思議な色は異性を魅了するためと、鳥から狙われないため。短い期間に後尾を完了し産卵しなければならないので、派手派手な羽で盛んに飛び回って恋人を探しますからものすごく目立つわけです。ところが野鳥はこの色というか反射というかが大嫌いなため、無粋に近寄ってはこない。その習性を知った農民たちが、田んぼや畑にCDをぶら下げているというわけです。 



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サマー・オブ・ラブ、命をかけたひと夏の恋は、どんなにか情熱的で感動的なことでしょう。というわけで、こいつには警戒心がない。つまんでも突いても逃げるでもなく為すがまま。限られた時間にやるべきことがはっきりしているので、警戒して危機を回避しようとか、長生きしようとか、そういう思考を持ち合わせていないのでしょう。本能に従い、ひたすらに食事と交尾だけを目指す美しき昆虫。



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ひとしきり撮影をし、周辺にはケヤキどころか大きな木がない場所だったので、公園の奥の方まで行って、仲間がいそうな場所にリリースしてきました。命短し恋せよ虫ケラ、虹色の羽根褪せぬ間に。


さよならは、ほんの少しの間死ぬようなものだ。
フィリップ・マロウ

逆に言えば、死はほんの少しの間さよならをするようなものだ。
庭の手入れも、おいしい食事も、恋することも、
生きているうちのお楽しみ。
え、庭の手入れなんかしたくない?
そうですかあ〜、おっかしいなあ〜。
もしかしてその庭、庭になっていないのかも。
今すぐにご来店を。さして時間は残っておりませんぞ。






さらば愛しき人 信頼できる僕の友達
僕らは9つか10のときに知り合ったね
一緒に丘に登り木にも登った
愛のことと ABC も一緒に学んだ
心を通わせて 膝を突き合わせて

さよなら 僕の友達
そりゃあ死んでゆくのはつらいよ 
空にはたくさんの鳥の声が聞こえる
花の香りが立ち込めている
可愛い女の子たちもたくさん集まってくれた
 僕のことを思い出してね そしたらそこに行くから

みんなで笑い合ったね
すごく楽しかったよね
僕らは太陽をあびて四季を過ごした
でも僕らが登ったあの山は
残念ながら季節外れだったけど

さよなら父さん 僕のために祈ってよ
僕は一家の面汚しだったかな
父さんは何が良くて何が悪いのか
僕に教えようとしてくれた
たくさんのワインやお酒のことも教えてくれたね
ごめん 僕にはちょっと難しかったかも

さよなら父さん 消えてしまうのはつらい
たくさんの鳥が空で鳴いているよ
空気の中に季節を感じる
小さい子どもたちが僕を囲んでくれている
父さんがここに来られるなら 待っているからね

喜びがあった
愉しみもいっぱい
僕らは四季を太陽の下で過ごした
でもワインや歌も
季節が過ぎるように
みんななくなってしまったよ

さよならミッシェル 可愛い我が子よ
君は僕に愛をくれた
そして太陽を探すのを手伝ってくれた
僕が落ち込んでいるときにいつも
いつもそばにいてくれたね
 おかげで僕は何度もこの足で立ち上がれた

さよならミッシェル
ごめんね僕はもういなくなるよ 
鳥たちに囲まれて
素敵な季節の中で
花たちに囲まれて
二人でそこにいられたらよかったのにね

楽しかったよ
笑い合ったね
春夏秋冬 太陽が照らしてくれたね
でもおぼえてるかな 水に映る星に手を伸ばしたら
ははは それは浜辺のヒトデだったこと

喜びがあった
愉しみもいっぱい
僕らは四季を太陽の下で過ごした
でもワインや歌も
季節が過ぎるように
みんななくなってしまったよ・・・


 
 

コスモスはカオスの対義語

脳は疲れない、とは薬学博士で脳研究者の池谷裕二氏の言葉。アフリカの森にいたリスザルを神の化身にまで昇華させた偉大なるその臓器は、ちょっとやそっとで疲労するなど考えられないほどの容量を有する OS を備えているそうで、よく言われる「人は一生をかけて脳みその数%しか使わない」ということなのでしょう。でも、疲れますよね。設計に行き詰まって、粘って粘ってああでもないこうでもないと無数に存在するアイデアの引き出しを片っぱしから開けて、あの手この手で描き続けているとクタクタになる。慢性的にやりきれない量の設計の山が目の前にあり、それが自重によってガサッと崩れることもある。とにかくもう寝たい、庭でビールを飲んで寝てしまいたいと、そのクタクタは筋肉ではなく確かに脳の疲労であると自覚します。しかし違う、と池谷氏は言います。それは脳ではなく眼精疲労ですよと。



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う〜〜〜ん、そう言われればそんな気がしてくる。確かに目が疲れていて老眼鏡にハズキルーペを重ねてもピントが合わなくて、目の裏側に疲労感がある。昼寝をしたり、ゆっくりと湯船に浸かって血行をよくすると頭もスッキリしてまた設計に没頭できるのです。



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一応は納得。しかし目の疲れとは違うタイミングで脳機能が低下することもしばしばで、例えば目などほとんど使っていない朝からやる気が出なくて、浮かんできそうになる禁断の言葉、「今日はダメだ」を抑止できないような時。このことについて脳研究者は、「それは脳機能が低下しているのではなくて整理ができていないだけ。配線が絡み合っているか、どこかが外れている、つまりカオスなんですよ」と言います。その混迷状態を知らせる警報の意味で、脳が気分が暗くさせ、やる気を出なくさせるわけで、そのことも含めて正常に機能しているとのこと。そういう憂鬱を解消するためにはいけないお薬がとても効果的だそうで、それを摂取したらたちどころにやる気満々の躁状態になる。そして疲れ知らずで楽しく働いて、やがてオーバーヒートで脳の回線が焼け焦げてしまい、ついに修復不可能になってしまう。



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そうか、カオスか。確かに。スケジュール帳に空白が目立つとそうなりやすいし、スケジュール通りに進まなくて適当に文字を入れている時も同じくで、要するに段取り(イマジネーション)の問題なんですよね。カオス、カオス、カオス、カオスとは混迷、混乱のことであり、その言葉の出自はギリシャ語で、天地創造以前の状態を言う。混迷というよりもゼロの世界、意味を持たない世界を指す。カオスの対義語はコスモス。哲学者ピタゴラスは宇宙を秩序ある調和のシステムと捉え、コスモスと名付けました。コスモス、コスモス、コスモス、コスモスとは調和、秩序の意。



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秋の野原に調和し秩序だって群生する花を、人々はコスモスと名付けました。カオスからコスモスへ、混沌から調和へ。こじつけにも程がありますけど、だからファインダーでコスモスにピントを合わせていると思考が整うのかもしれません。あ、いや、ほんとにこじつけですけどこれは嘘ではない。やる気が失せたらカメラ担いで花探し、という習慣は正解だったのですね、ピタゴラス様。



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コスモスは秋晴れの花。もう暑くないし、半袖では少し冷えるけど寒くはない、そんな日和に揺れている花を目にすると、人は混沌とした心の整理を始める。薄紅のコスモスが秋の日の、何気ない陽だまりに揺れている・・・こんな小春日和の穏やかな日は、あなたの優しさが沁みてくる。明日嫁ぐ私に、苦労はしても笑い話に時が変えるよ、心配いらないと笑った。コスモスの花は今でも咲いていますか。あの日の二人をまだあなたは覚えてますか。・・・右は越後へ行く北の道、左は木曽まで行く中山道、続いてくコスモスの道が。



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脳は疲れない。疲れたと思っても、それは目の疲れかイマジネーションの不具合なのだ。そんな時にはカメラ担いで花探し。早い話、秋風に揺れる花を見つめて気分転換し、段取りの整理整頓をしなさいってことです。


『 コスモス 』加川良

あたい コスモス
 この身うらんだことはない
あたい コスモス
わきまえているつもり

冬に開く花あれば
夏の日射しにもえる花
垣根の中で咲く花や
野辺にゆれる花もある

小川の夢のささやきを
聞いて眠る花がある
海なりを見下ろして
震え祈る花もある

あたい コスモス
器量よしじゃないけれど
あたい コスモス
つたない香りと知りつつも

旅のお方の気まぐれに
おさな児のいたずらに
つんでもらえる日もあると
それをはげみに咲いてます

もしも生まれかわれたら
春に咲く花たちを
この目でながめたい
これもまた運命でしょう

あたい コスモス
この身うらんだことはない
あたい コスモス
わきまえてきたつもり 





ぼくにとってはコスモスの曲といえばこれ。若い頃からバキバキに強くて美しい人に憧れてきましたけど、加齢による華麗なる能力、老人力が強化されてきたのか、この頃では聡明だけど内気な、内面からほんわか光が透けて見えているような人に惹かれる傾向を自覚しています。例えば有働由美子さんとか。金曜日の午後にニッポン放送でやっている『うどうのらじお』、なかなかですよ。
なぜコスモスは群生するのかといえば、身を寄せ合い、互いが支え合うことで倒れないように、という天与のシステム。か細い茎で秋空に向かって咲き競う花、いいんだなあコスモス。

さ、今日の設計のポイントは「狭い庭を有効に使うアイデア」「植物に囲まれて過ごす庭」「リビングからの風景を描く」。この3点を点々繋がり線となすことに集中いたします。
お、いいぞいいぞ、こうして進行方向を言葉にすることで、スリープ状態だった OS が起動する。



 
 

米の旬

わたくし生まれも育ちも越後は魚沼盆地のど真ん中、言わずと知れた日本一の米どころにございます。だからでしょうか、農家でもないのに毎年この時期になると米の作柄が気になるのです。



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さて今年はどうでしょう。予測としては平年並みの出来となる。ただし農協による発表は気象庁発表と違い、各ある公共(半公共)団体の中でも飛び切り大本営体質ですから鵜呑みにはできないわけで、「平年並み」を日本語に翻訳すれば「あんまり良くなかった。天候不順でしたから、大きな声では言えないが味はそこそこで、冷蔵倉庫に玄米で保存してある古米の方が美味しいでしょう」となる気がして仕方なし。この夏を振り返れば、どう考えても良かったとは言えないでしょう。それでも新米は新米ですから、作柄の良し悪しを超えた旨さがあるのですが。



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平年並み、何事も例年通りに、というのが自由民主党の大票田である田園地帯の伝統的なしきたり。まあそんなもんです。売り上げに響くような発表を、農協も明るい農村の青年団も絶対にしない。しないでおいて、農協職員は色と形と味を吟味し、入念にして狡猾なる販売作戦を練った上で、幹部はなれない背広とネクタイ姿で上越新幹線に乗り込んで、地産品の手土産袋を下げ霞ヶ関へ詣でる。故郷の経済と農協繁栄のためのロビー活動に、汗や冷や汗を流す。あくまでもいい意味で、それが彼らの誠実なる仕事ぶりなのです。農家は何枚かあるうちの比較的出来のいい田んぼで収穫した米俵を、自宅と親戚用に納屋の奥の涼しい場所に確保してから出荷する。汗水流して得た収穫の内、最上の味わいを得る権利は当然のことですしね。こうして田園を離れて暮らしていると思うこと、米農家を親戚に持つ者は幸運なり。



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それはいいとして、問題なのはブレンドです。市場に出回っている米のほとんどはいくつかの品種をブレンドしているわけで、そうすることで味わいを上げていると、それが米穀業者の腕の見せ所なのであると言われています。問題というのは品種ではなく古米を混ぜている点にあって、数年前の安価な米であってもそこに何割かの新米を混入させれば、その袋に輝かしき『新米』のシールを貼っていいことになっている。これまた責められるいわれなどない、それぞれの立場の人による誠意に基づく営みなわけでして、やれやれ、かくして産地以外の民は、その仕組みの裏をかく手段を講じない限りあの新米の香りを味わうことはできないことになっている。



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コシヒカリの枕詞になっている地で育ったぼくは、実家から届く宅急便以外にはスーパーでも、米屋に行っても、混ざりっけのないごく普通の新米を入手する術がないことに驚くやら、いくらかこの現実を悲しく思ってしまったりします。まあ、たかが新米のこと、築地で一貫2000円の握りを食べたことがあるか否か、食べたことがなくても別段わが人生の幸福感には関係がない、というくらいのことですが。でもですね、どんな品種であっても新米は「混ぜるな危険」で、新米100%なら千葉の多古米でも、埼玉県産コシヒカリであっても、農林〇〇号とかの名もなき米であろうが、最上級であるところの魚沼産コシヒカリに匹敵する味。炊き上がりの香りと旨みはこの時期限定ですから何とかかんとか入手して、めしあがっていただきたい(飯だけに)。



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野菜はF-1品種が常識となり、温室栽培、水耕栽培、工場栽培が盛んで、もはや旬を感じることが困難となってしまった現状なれど、せめて子どもたちには主食であるお米の旬を伝えたい。お百姓さんが苦労して作っているんだから一粒も残してはいけないよ、という昭和時代の教えと共に。教えるまでもなく、新米だったらバクバク食らい付いてお替りをするでしょうけどね。比類なき至高の味わい。炊き立てご飯をそのままハホハホ食ってから、シャケ、塩辛、野沢菜、バターと醤油をタラっと。たまりませ〜〜〜ん。究極はやはり卵かけご飯ですかね。あああああ・・・天高くですなあ。


本日の出囃子はこれで。

 


続いて、やはりこれでしょ。









庭のことだま

調べが標べになる。 

起き抜けに庭へ。意識して耳を澄まさなくてもいろんな音が聞こえる。雨音、風が葉を揺らす音、虫の声、遠くを走る電車や車や、ご近所さんが朝食の支度をする音も。6時になればどこかのお寺からゴ〜〜〜ン、 ゴ〜〜〜ンと鐘の音。遠くの山陰で横を浮いている、大船の観音様に向かって合掌。6時半には公園からラジオ体操の音楽が。



ココもマリンもミーもぼくより早起きだ。
目覚めるのが楽しくてしょうがないらしい。

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新しい朝が来た、希望の朝だ。体操に参加したことはないが、その調べに気分が引っ張り上げられる、という遠巻きの参加者。軽くストレッチと筋トレをし、何本か雑草を抜き、室内へ。キッチンですぐさま朝の BGM を選曲する。クラシックだったり、ジャズだったり、懐かしの昭和歌謡だったりの雑食性哺乳類はおおむね直感で、少々は今日の出来栄えを期待して選び、やや大きめなボリュームで流す。



ぼくはさほどではないが、良き日にしようという気持ちは同じ。
夜明け前に、そんな気持ちにしてくれる家族たち。

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調べは道標になる。教科書でも哲学書でも賢者の習慣書でもなく、庭と音楽にアフォードされてかれこれ30年。あと何年かはわからねど、この習慣は変わらないし、変えようがないし、変えたくもないし。


今朝はこれでした。
秋だし、ロマンティークなひとり旅気分で。




さ、仕事仕事。
調べはこのままで。
加川良の手紙に導かれて、コツコツと歩を進めることにする。


 

他力本願の他は如来の意

毎年秋めいてくると思う蓮の不思議さと潔さ。なぜ決まってこの位置で茎が折れるのでしょう。



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その心は、熟した種を水面に撒き散らすため。普通に考えれば水中部分が腐って倒れるでしょうに、そうではなくて花の根元数センチでポキッと折れて項垂れる。すると種がぱらっと散らばってゆらゆら沈んでゆく。その多くは魚や水生生物の食料になり、いくつかは流され少し離れたところまで行って泥に埋まって根を生やす。食料となることも込みで、この方法が生存に適していることを、長い長い時間をかけて身につけたのでしょう。その長さたるや、何と1億年。その種の生命力は物凄く、3000年前の地層から出土した種が芽吹いたそうで、時空を超えたその姿を人々は古代蓮と名付け、埼玉県で今年も花を咲かせたそうです。



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もうひとつ不思議に思うことは蓮が持つ歴史というか、人との関係性。「一億年前から」や、「3000年前の種が」とか、そんなことなど知るよしもない古代インドの僧侶たちが、この花の特別感に気づいて極楽浄土に咲く花として仏像の台座にしたり、曼荼羅に描いたりしているということ。数ある草花の中で、人間の宗教観にまで入り込んで咲くのはハスだけじゃないですかね。



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そんな仏の花に、毎年こうして散歩道で出会えるありがたさ。聞けば近隣住民が丹精して咲かせているとのこと。その人、お爺さんかお婆さんかわかりませんけど、あるいはお若い方かもしれませんけど、必ずや極楽へ行けることでしょう。



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密教(小乗仏教)には『自益益他(じえきやくた)』 『自利利人(じりりにん)』『自業化他(じぎょうけた)』という教えがあり、意味は読んで字の如くです。ただし少々取っ付きにくい。それらを大乗仏教(誰でも乗れる大きな船)ではシンプルに『自利利他』としました。さらに庶民派である浄土真宗では『自利利他円満』、自らが悟りへ至り他者を導く姿勢が円満な人間関係を築きます、というふうに理解した上で、概念は『他力本願』へと広がってゆく。他力本願は一般解釈であるところの人任せ、他者に頼るということではありません。他力の『他』は阿弥陀如来のことで、凡人が悟りを求めて修行に入るよりも、悟った人(如来)を信仰し学びを恵ながら日常に励みなさい。懸命に、賢明に暮らしを紡いでゆく姿が他者と共鳴して、その響きがあなたを極楽へと導くのです、という意味です。



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折れたタバコの吸い殻で、あなたの嘘がわかるのに似て、折れた蓮の茎を見て、真理の探究へと寄り道をする酔狂など自分だけかと思ったら、おりましたおりました。幕末期の歌人で国学者、橘曙覧(たちばな あけみ)が、こんな和歌を残しています。

茎折れて 水にうつぶす 枯蓮の 葉うらたたきて 秋の雨ふる

やっぱ不思議に思えて目が止まったんでしょうね、この折れ方に。


早くもマツムシの声が盛りを過ぎ、
主役はコオロギとキリギリス。
秋本番ですね。
今日の設計 BGM はノーラ・ジョンズで。







 

 

天使の思考

天使は立体で思考する。

虚空とは何もないエリアで、そこに何かの意味を持たせることによって空間が生まれます。庭は地面ではなくその上に創造するもの。地面と空の間、建物と境界フェンスの間にある虚空をいかにすれば庭空間として獲得できるか、それは立体的なオセロゲーム。この発想を抜きししてタイルテラスやウッドデッキを作っても、そこは庭空間にはならない。アントニ・ガウディ曰く、人間は平面的に考えるが天使は立体的に考える。さすればガーデンデザインは天使の所業なり。かな?


羽が傷んだ蝶を目にすると、
がんばれがんばれ、と思うのです。
しかし当人は、そんなことなど気にする風でもなく、
ただ夢中で蜜を吸って花から花へ。
いいなあって思うんですよ、その姿。


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コバエは二十日程度、アゲハ蝶はひと月ちょっと、
オオクワガタは2〜3年、犬は12年、
パンダは20年、ゴリラは40年、
ホモ・サピエンスは64年、シーラカンスは100年、
ガラパゴスゾウガメは100年以上。
寿命に違いはあれど、その命が担う役割はほぼ同じ、
大河の一滴、循環の良きひと粒となれ。



自分を天使だなどと思うほどまでには狂ってはおりませぬ。ただ、「あなたの守護天使はミカエルです」とスピリチュアルな方から告げられたことがあります。
ミカエルとは4大天使のひとりで、大天使とは天使の階級最上位、天使の中の天使、キリスト世界に数多存在する天使たちを統率する立場の、つまり株式会社イエスの執行役員。いわゆるキューピットとかティンカーベルとか、羽を生やした可愛い妖精とは違い、仏教で言うと天(毘沙門天、帝釈天など)や明王(不動明王、愛染明王など)のようなポジションで、なかなかエグい役回り。ことにミカエルは重役(イエスと親族及び直系の弟子たち)の指令に従わない者あれば、有無を言わさず叩き切るという恐ろしい一面を持っており、信徒からは崇拝と共に畏怖の存在なのです。
では4人(4柱)の解説を。

ミカエル
全ての天使を統率する司令官。しばしば悪魔と戦い叩きのめして、神の真実を示し、民の信仰心を強化する。

ミカエル



ガブリエル
神の教えを人々に伝える大天使。その教えを実生活に生かす知恵を授け、迷いや苦悩から抜け出す手助けをする。

ガブリエル



ラファエル
癒しの大天使。人間と動物の健康を気遣いケアする役割を担っている。

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ウリエル
知恵者の大天使ウリエルは、人々が探究心を持って自身と他者の心を理解し、神について学ぶよう導く。

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あなたはどのタイプ?セナかプロストか、ジョンかポールか、信長か秀吉か家康か、というようなお遊びめいた分類ごっこなのでしょうけど、10年前にそれを言われてから何となくそうなのかと思っちゃて、任務を果たさねば、などという思考がこびりつくから面白い。大天使ミカエル、見返れば、確かにガブリエルでもラファエルでもウリエルでもいなく、大いにミカエル的性分ではあります(困ったことに)。
あなたはどのタイプでしょう。いずれにしても、世のため人のために命を使う行いは健全であると、例えば植物や昆虫の営みを見ていてそう思うのです。もちろん彼らにそんな意図はなく、ただ真っ当に生きているだけなんですが。だからこそ、花や昆虫の姿が天使に見えるのです。タイプ別守護天使の分類ともかく、限られた時間を夢中で飛んで蜜を吸い、季節が終われば静かに消えてゆくことを、理想的であると思える今が、たぶんですけど、幸福なんだろうと思うのです。


今日はこれを。
いいんじゃないかな、ふとこんな曲を口ずさんで過ぎてゆく人生。

 




 

お得情報

楽しいから笑っているんじゃなくて笑っているから楽しくなる、という理屈に賛同できる方は多いはず。この賢者の託宣を繰り返し繰り返し、これまで100人近くの賢者から忠告され、1000回ほどそれを思い出し、その度に1ミリも嫌気がさすことなく同意し、口角を上げてきました。天の川に流れている光の数ほどもある名言の類いの中でも秀逸と言える、的を射て芯を食った人生上の注意書きだと思っています。娘の子育てと暮らし振りを見ていると、賢いなあと感心しつつ、いつもこの理屈を思い出します。この賢者はいったい誰から学んだのか、普通はストレスになるであろうことを、常に楽観方向というか、とりあえず口角を上げて受け止め、その都度の冷静にして的確な判断、対応をしている。こんな嫁さんがいたらどんなにか幸せだろうと、わが娘ながら惚れ惚れするのです。そういえば、中坊の頃に「お父さん、天国言葉ってあるんだよ」とか言ってたなあ。ヤンキー揃いの御学友から学んだのかもしれません。その後イカれたヤンキーどもは通例通りに早々結婚をし、母になり、とても賢いイカした女性になっています。めでたしめでたし。



水辺の花は別格。
ことにこの季節には。


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楽しい→笑う:笑う→楽しい、この逆説思考は庭と人との関係においての重大なポイントでもあります。暮らしが荒れる→庭が荒れる:庭を整える→暮らしが整う。庭は人を映し出す姿見である。そしてそれは合せ鏡になっているので逆にも作用する。トイレの神様同様に、庭の神様はいつもあなたを見つめて「そろそろ雑草を抜いてくれよ」と、「肥料が欲しいなあ」と無言でメッセージをくれています。主人であるあなたのために。



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ではでは、ここでお得情報をひとつ。



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庭とあなたには濃密な相関関係があるので、時には自分を鼓舞してストイックに庭仕事へと向かうことになりますが、散歩道の草花は違います。こちらが一方的に美しさを見つけさえすれば、手軽に自分を美しく整えることができる。これがミラーニューロンの働きで、脳は五感から取り入れられる情報に同調・同期したがるという特性を持っているので、手入れ作業も、自分の尻を叩くこともないままただしゃがんで見つめるだけで、あなたは野に咲く花のようになってゆく。



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野に咲く花のように風に吹かれて、野に咲く花のように人を爽やかにして。花びらにピントを合わせてシャッターを押せば、あなたは蜜を求めてワクワクと飛ぶ蝶や蜂とも交信できる。
野に咲く花のように雨に打たれて、野に咲く花のように人を和やかにして。そんな風に僕たちも生きてゆけたら素晴らしい。時にはつらい人生も、雨のち曇りでまた晴れる。そんな時こそ野の花の、けなげな心を知るのです(ダ・カーポ)。



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晴れ間を狙って訪れた遊歩道には、曼珠沙華をお目当てにしたカメラマンが5人ほどピント合わせに集中していました。撮り鉄と違い、互いの写真世界を邪魔せぬように距離を取り、挨拶は見合ってわずかに口角を上げるだけ。各々が花と会話中ですから、相手のそれを邪魔しないように、決して話しかけたりしないノンバーバルのコミュニケーション。ふと、言葉を抜きで互いを思いやりつつ共鳴する、これが楽園のお作法なんだよなあ、などと、野に咲く花のように風に吹かれて独りごち。しばしの撮影散歩ですっかり整い、おまけに水面の乱反射は網膜に残像となって気分は逆光線 by 来生たかお。いいぞいいぞ、この感じのままで店へと戻り、設計設計また設計。


脳は五感から取り入れられる情報に同調・同期したがるという特性を持っている。
であるなら、今日の設計  BGM はレッド・ガーランドで。
彼の右手は野に咲く花が揺れているようで。






本日は晴天なり。本日はシルバーウィーク中日なり。本日午後四時までずっと店にいますので、よかったらふらっとご来店を。できればですけど、建築図面か庭の様子がわかるスマホ写真のご持参を。台風一過の爽やかな空気、庭のことを考えるには最適な日です。


 


マンジュシャカ

ヒガンバナ(サンスクリット語でmanjusaka)、別名「死人花(しびとばな)」「幽霊花(ゆうれいばな)」とも呼ばれていて、それは根に毒性があり、土葬の遺体にネズミやモグラを寄せ付けないためにと
墓地の周りに植えたからだと言われています。田んぼの畦道や川の土手に多いのもネズミなどが穴を掘るのを防ぐためだそうです。



激しく変化する天候の晴れ間を狙って撮影へ。
よかった、間に合った。


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ちょうど秋のお彼岸に咲く血の色をした毒花。その毒性を暮らしに役立てようと増やしていった人の営み。もしも誰も立ち入らないような山奥にヒガンバナを見つけたら、かつてそこに集落があって、弔った人に想いを馳せながらの愛情豊かな暮らしがあったことを示しています。



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この頃では群生をしつらえて観光資源とするのが大流行りで、彼岸花に限らずコキアの群生、コスモスの群生、我が故郷にある小出公園ではカタクリの群生と、訪れる人々に歓声を上げさせています。草花は人を笑顔にする、それに気づいた観光協会が予算をつける。公民館に集まった青年団が、村おこしの一環として「群生」を企てる。見渡す限りの土地を耕し、タネを撒き、間引きをし、雑草を駆除しながら均一に成長するよう配慮して、炎天下の水やり作業を繰り返して育ててゆく。とても健全で明るい努力。



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願わくば、そこに情緒を加味できないかなあ、などと思うこともありますが、まあ、自覚がある通りで、ぼくが少々捻くれているのでしょう。情緒とは見渡す限りに絵の具をぶちまけたような風景ではなく、足元の一輪から感じるもの。たった一輪に、悲しみも込みで、悔やみも、とうに癒えた傷跡の疼きも込みで、今日を良き日にせんとする決意のようなもの。



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ヒガンバナ、曼珠沙華、マンジュシャカ、毎年この花から阿木燿子の凄みを感じるのであります。

涙にならない悲しみのある事を知ったのは つい この頃
形にならない幸福が何故かしら重いのも そう この頃
あなたへの手紙
最後の一行 思いつかない
どこでけじめをつけましょ
窓辺の花が咲いた時 はかなく花が散った時
いいえ あなたに愛された時

マンジュシャカ 恋する女は
マンジュシャカ 罪作り
白い花さえ 真紅に染める

あてにはならない約束をひたすらに待ち続け そう 今でも
言葉にならない優しさをひたむきに追いかける そう 今でも
あなたへの想い
どこまで行ったら止まるのかしら
そんな自分を もて余す
机の花が揺れた時
ほのかに花が匂う時
いいえ あなたに愛された時

マンジュシャカ 恋する女は
マンジュシャカ 罪作り
命すべてを もやし尽すの

マンジュシャカ 恋する女は
マンジュシャカ 罪作り
白い夢さえ 真紅に染める

 悲しかあ、恐ろしかあ。でも、情緒があるよなあ。


っと、ここで百恵ちゃんだと
情念の沼にハマって仕事にならなくなってしまうので、
今日の設計 BGM はこれで。
同じ悲恋の歌でも、こういうのなら仕事が捗るのです。




男の頭脳はへなちょこでね、
情緒的だが情念にはすぐに羽交締めにされる。
痩せ我慢紳士の歌声で、えいやっと、背負い投げ〜。





 

朝の庭・二色の独楽

起き抜けに庭へ出る。真夏にはいきなり眩しい光で視交叉上核のマスター時計のズレが調整されて、腸内からセロトニンが噴き出ることを感じられたが、今の時期は、この朝のルーティンが太陽を追い越してしまってまだ薄暗い。専門家諸氏の統一見解として、本当は急激に光を浴びた方がいいらしい。しかしこうして庭の書斎に腰掛けて日の出を待ち、ゆっくりゆっくり全身が目覚めてゆく感覚も、季節に則したやり方のような気がして、あえて起床時間を遅らせることはしない。と言うか、季節に関係なく決まった時間になると、否応なしに猫が起しに来るのだ。ミャーミャー鳴きながら顔の上を往復されたら、誰だって心地よく目が覚めてしまう。祖先を辿れば夜行性で、疑り深さとやさしさが繊細に同居している猫の頭脳ならでは、一晩中ぼくの寝姿を観察し、夜明け前にレムとノンレムを見極めて起しにかかっているだろう。本来ならば夏には夏、冬には冬で生活パターンを太陽の動きに合わせるのが基本ではあるものの、主役は太陽ではなく自分なのだから、アマテラスに従属するよりも、大切な家族の生活に合わせて暮らす方に重きを置きたいのである。



今日最初の光に咲く姿を愛でる。

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早起きは三文の徳、得、特。
たった三文なれど、これが得難い感慨なのです。
日々三文銭を溜め込んで、六文銭を懐に、
あとは今日の糧とする。



庭に出たらしばしぼーっとしてから室内に戻って、犬と猫と魚の朝食を配膳する。ついでみたいに自分の朝食も手際よくこしらえて、それを持って再び庭へ。すでに曇天の日中ほどまで明るくなっているが朝日はまだだ。手際よくこしらえた朝食を手際よく食べる。手際と言うよりも早食いと言うべきか、2分で食べ終え台所へ行き食器を流し置いて三度び庭へ。芝生の雑草を、目立つやつだけ引っこ抜く。手を洗う。スケジュール帳を開く。今朝確認すべきことなど寝ているうちから脳内にこびりついているので、読み込んだり書き込むことなくすぐに閉じる。だいたい毎朝開いてすぐに閉じる。だったら開かなくてもよさそうなものだが、スケジュール帳はページを埋めている文字の意味よりも、開く行為に意義があるのだということに最近気がついた。洗濯物を干す時に、色の配列を気にしながら吊るすと気分が良くなることと同じく、合理的ではないが、弾み、のようなことなのだ。



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合理的ではないことが、そのスケジュール帳にある文字の半分を占めている。合理と非合理のハーフ&ハーフ、この割合が自分に適していることにも最近気がついた。60年ちょい生きていて、最近ようやく気がつくことが多い。チコちゃんに指摘されるまでもなく、ぼーっと生きてきたということなのだろう。専門家諸氏はこんなぼーっとしている自分に好意的見解を述べている。長い期間何とも思わなかった事柄に、ハッと気づくことが、脳の状態が良好であることの証であるとのこと。脳はハッとすることが大好きで、ドーパミンやらアドレナリンやらの脳内麻薬は、ハッとする刺激で吹き出すそうな。茂木健一郎はそのことを『アハ!体験』と称している。その「はっ」を外部刺激ではなく自分の脳内に発見する、これを気づきと言う。



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気づき、気づき、気づき。多くの人の脳内は、定期的にテレビでやっているゴミ屋敷の如くだと言う。適当にあしらっていた苦情の電話の主が、ついにテレビ局に告発してようやく行われる行政機関による強制執行以外に、その無秩序に積み上がったゴミをきれいさっぱり捨て去ることはできない。千日回峰行に挑む修行僧なら話は別だが、パンピーはそんな不可能への挑戦に人生を費やすよりも、ゴミに埋もれていることの安心感を享受する。ゴミ屋敷のゴミ袋の中にあるのは来し方で蓄積された記憶。まさしく玉成混淆で、恐怖や悲しみや辛さや、腐敗臭を放つ事柄や、開けてはいけないパンドラのゴミ袋もあれば、それに紛れて、一生の宝として自分を支えてくれている幸福な記憶や感動の瞬間もある。つまりこういうことだ。あ、朝日が。



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つまりこういうことだ。気づきとは、ポンコツゴミ屋敷頭の宝探し。気づくというのはすでにあるもの、かつて経験した健全にして幸福な出来事の記憶をトリガーとして、今に役立ち、今日を美しく燃焼させる何かを再発見することに他ならない。備わっていない、未経験な事柄に対して気づきは起こりようがないのだ。いいぞいいぞ、朝日を受けて二色のバラが、二色の独楽のように咲いている。まわれまわれ二色の独楽よ。今日もハーフ&ハーフをかき混ぜながら、悔いなき充実の時間を過ごせそうだ。それがいつかある日に気づきとなって甦る。今日が明日の糧になる。いいぞいいぞ、まわれまわれ二色の独楽よ。



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YouTube ってありがたいですね、
実家に帰らなくても、懐かしの LP が聴ける。
これ大好きだったなあ。
イントロダクションから時空が実家の四畳半へとワープします。






 

茹でガエル

先週からキンモクセイが香り出しました。お気づきでしょうか、香り方が例年とは明らかに違うことを。
秋のキンモクセイと春のキョウチクトウは、ある日突然、一斉に、横浜一帯をその香りで包み込みます。それが今回は香りはすれども微かで、花の在り処をすぐには探せないほど。そして翌日には消えてまた違う場所で微かに香るという、つまり、開花がばらついているのです。考えたらこの傾向は他の花、サルスベリやタチアオイや、夏の王様ハスの花もそうでした。それとわが家ではライムが3回に分けて咲いて、あれれと思っていたら、結果的にはその変則的な開花が実を結んで大豊作となりましたが。



開花がひと月にわたって3回。
あのフリオ・イグレシアスを思わせる甘く危険な香りも
今年は3分割でした。


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このばらつきは植物達の作戦なのか、はたまたもがいているのか真意の程は不明ながら、天候不順への対応であることに間違いはありません。心配なのは、ぼくら人間がその異変にほとんど気が付いていなかったということ。森田さんも木原さんもアマタツも、そんなことひと言も言わなかったでしょ。コロナとオリパラで天候どころではなかったんでしょうね。故に、ですけど、異常気象に気づかないままに調子を崩している人も多いのではないかと。単純に、いい天気なら気が晴れて、雨が降ったら気が滅入るということではなく、もう少し大きな気候のうねりが心身に与える影響はあなどれません。気づいていれば適応できますが、人の心身は、じわりじわりと来る変化にはとてももろくできている、これが有脳生物の弱点なのです。



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バブル後期の自己啓発本によく出てきたお話をひとつ。

茹でガエル

蛙を熱湯を注いだ桶に入れると驚いて飛び出します。ところが常温からじわりじわりと温度を上げてゆくと、異変に気づいた時には逃げる気力も体力も無くしていて、哀れ茹で上がってしまうのでした。


これを曰く『茹でガエル理論』と申します。
脳を持たない生物には起こらないこの悲劇は天候の異常だけでなく、お勤めの会社の経営方針や世の中の価値観の変化、もっと身近なことでは子供やパートナーの心身の状態が、日々変化していることに気づかないままで茹で上がることのないように、いやほんとに、くれぐれも、くれぐれも。



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変化についてもうひとつ。変化に気づくことと同等に大切なことは、変化させるということ。これは庭を楽しく美しく維持するための必須条件です。庭は常に変化します。雑草を抜き、剪定をし、掃除をるするという庭仕事は復旧作業で、変化前の状態を維持するもの。これを繰り返すだけだと、庭は整然とはしますが楽しさやトキメキは消えてゆく。お作法として庭を整えることは大切なれど、楽しくなかったら庭の価値は半減どころか、やがて手入れのための場所、つまり修行の場になってしまうことでしょう。
それを回避するたったひとつの方法が「変化させる」ということです。草取りのついでに次の季節の花を植えるとか、ペンキ塗りのついでにファンチャーを違う色にしてみるとか、ついででいいので何かを変えること。植木鉢の位置を変えるだけでも庭はイキイキとした輝きを取り戻します。



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変化です、変化。失敗したって構わないからとにかく変えてみる。いいんです失敗したって、どうせまたすぐに変化させるのですから。トライ&エラーの繰り返しが、不幸にして脳を有する生物に生まれついた者に課せられた掟なのであります。
変化に気づかず茹で上がらないこと。変化を止めて色褪せないこと。早い話が仕事であれ、家庭であれ、変化する環境に即して変化させよ、ということ。そうそう、庭ですよ庭。もしも見慣れた庭が輝きを失っているという変化に気づいたらご来店ください。何が原因なのか、ズバッと、スカッと、どこを変化させれば輝きを取り戻せるのか、あるいは変化させることが楽しくなるための、あっと驚くタメゴローな発想なんかをアドバイスいたしますので。例えばですねえ、庭に面した窓枠を額縁と捉えて、その巨大なカンヴァスにあなたはどんな絵を描くのか、とかね。あなたな〜らどうする、あなたな〜らどうする、泣くの歩くの死んじゃうの?あなたなら、あ・な・た・なあ〜ら〜(古すぎ?)。


今日は設計  BGM に変化を与えて、これで。
何十年ぶりかなあ。
油絵具の匂いが充満した西陽の入る四畳半が蘇ります。
夢中だったなあ、何だか知らないけど毎日夢中だった。
とにかく目の前のことに隙間を見つけてはこじ開けて、
中へは入ったら引きこもる性質、というか癖というか。
その癖のおかげで今日もニンニキニキニキ、夢中の宇宙へ旅立てます。


 

 



 

庭のことだま

怯えのトゲを取り除け。

食料を前にして警戒心を捨てる虫たちの潔さ。「野鳥に襲われることなど気にしている場合ではない。この蜜を吸うことの快楽を逃したら、生きている意味を失ってしまうのだよ」というのが彼らの人生観。
庭に蜜があることを察知したら、怯えの闇を突破して花に食らいつくべし。虫はそれができるし、できないと生き延びることができない。人はなかなかそれができないが、それでも生きていける。生きていけるが、感動を捨てた人生には花が咲かないのですよ。花が咲かない、ただそれだけのことではあるのですが。かまいませんよ別に、人工芝とプラスチックのデッキと香港フラワーの庭だって。伸びなくて葉っぱが落ちない木はありませんか?ありますよ。カタログをご用意しますね、本当にそれで感動できるなら。え、感動って?あ、いや、なんでもないんです。少々お待ちを。


無警戒は快楽の前提。
食事中は接写レンズでも逃げないのです。


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多くの人が庭に怯えている。正当性を持った理由はさまざまにあるのでそれはそれで致し方なし。世の中にはしばしば例外がある。ただその怯えは庭だけではなく、その人々はもっと大切な対象に怯えている。これには例外がない。夫は妻に怯え、妻は夫に怯え、怯えるが故に相手から安心の約束手形を取り付けようと刃物のような言葉で脅しにかかる。私を安心させなさい!もっと稼いで、もっとにこやかに、もっと私を気遣いなさい!片や何でもかんでも俺のせいにするな!愚痴ばかり聞かされたら嫌になるし、こんなに気を使って、こんなに苦労しているのにねぎらいの言葉もないのか!いやはやハリネズミ夫婦のなんと多いことか。くっついて、安心して甘えたいのに、つい全身の針が立ってしまう悲しさよ。互いにトゲトゲし、心を殴り合い、突き飛ばし、踏んづけて、ごく普通によくあることではありますが。ただそれだけのことですが、ほんとに余計なお世話も甚だしいのですが、人生はさほど長くないですぞ。

あれれ、これは何ですか? 見た目にはバラに似てるけどトゲがないし・・・。

ああそれ(笑)手入れするのに邪魔だからトゲを全部取っちゃったの。それでも毎年、盛大に咲いてくれますよ〜。

ガーデニング奥様、お見事でございます〜。


ヒア・カムズ・ザ・サン、ビコーズ、
ユー・ネヴァー・ギブ・ミー・ア・マネーから
コオロギの声で繋がれるB面の4曲目。
この時期に必ず聴きたくなります。



いかんいかん、これだけで満足などできるはずもないので、
今日の設計はこの甘露なる蜜を貪り食いながら。




昨日の「知性」の続きですけど、いい夫婦じゃないといい庭に辿り着けないことは確か。逆に、庭を整えることによって夫婦関係が整う現象もまた、世界的に知られている確かなこと。ほんとに、余計なお世話も甚だしいのですが。

 


 
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