2021年12月

庭に仏の玉座あり

対象物を、それが有機生命体であろうと無機物であろうと擬人化して捉えることから収集や趣味の世界が始まります。ぼくの場合だと犬も猫も水槽の熱帯魚も、気がついたら相手を人格として捉えて話しかけたりハグしたり、それによってオキシトシンの分泌を自覚することもしばしばです。もちろん庭の植物もそうで、バラの姿と香りに理想の女性を感じ、芝生には無意識に自分自身を投影しています。森を歩きながら眺める木々や草原は普通に植物に見えるわけですけど、その中に雑草の花、今の時期ならツユクサ、アカマンマ、オオイヌノフグリなどを見つけた瞬間に擬人化モードとなって、しゃがんでファインダー越しに言葉を交わしながらピントを合わせ、呼吸を整えシャッターを押す。雑草って可愛らしいですよね、園芸品種とは違う、か弱さと強さが同居している姿に魅了されます。そんな雑草族の中で最も好きなのがこれ、ホトケノザ。葉っぱの形状が座席(蓮華座)のようで、そこに鎮座する花が仏様の姿に見えるという、これこそ昔の人の擬人化による命名と言えますから、古来から人と親しい存在だったのでしょう。



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この花、蜜が美味しいんですよ。サルビアなんかと同じで花を引き抜くと根元に蜜が溜まっています。このように唇を尖らせたような形状の花は、乱暴者の花アブからメシベとオシベを護りつつ、小さな虫や繊細に花に潜り込んでくれる小型のハチによって受粉する、つまりドレスコードのように来客を制限する方針であることを示しています。受粉機関がか細い可憐な花は、優しいお相手が好み、というわけです。



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いつも新年早々に野山に出現する仏様が、今年はわが家の庭に来てくれそうです。雑草取りの時に芝生の奥に一群を残しておきました。いかな姿を見せてくれるか楽しみ楽しみ。



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雑草は一般的に、肥料分が少なく水はけの悪い枯れ地を好みます。ところがホトケノザは、柔らかで適度に肥沃なふかふかとした土地を好む。だから校庭や砂利敷きの駐車場には見当たらず、花壇や畑や、人が触れた土を好んで生息しているのです。その性質によって人の暮らしと共生してきたわけで、可愛らしい花の姿もまた、昆虫だけでなく、地主である人間に対する生存戦略なのかもしれません。



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ちなみに春の七草に出てくるホトケノザはこれとは違う種類ですので、新春のお粥に入れても美味しくないそうな。ま、毒ではないのでかまいませんが。



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ホトケノザ、女優で言うなら石田ゆり子っぽい。あるいは木村多江。仏様をそんな風に見立てるのは罰当たりかもしれませんけど、どう見ても修行僧ゴータマ・シッダールタではなく女性、女神に見える気がして。仏教を遡って、ヒンドゥーやバラモン教における弁天様(弁財天/音楽と学問の女神)のイメージ。しかしその強かさを考えると、本性は恐ろしき鬼子母神なのかも。石田ゆり子も木村多江にもそんな感じが漂っていますよね。もちろん、秘められた強烈な母性というか女性特有のインテリジェンスと申しましょうか、そこが魅力なのですが。



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はっと我に返れば、路傍の草から思考はガンジス川の源流へ、仏教発祥の地へと時空を超えて飛んでゆく。明日から始まる2022年もこんな風に、庭で具にも付かない妄想世界に遊べる余裕を持って、造園界の異端児、つまりは雑草であるぼくですから、雑草は雑草らしく、雑草ならでは庭を思い描きながら、いち日いち日丁寧に過ごそうと思う大晦日。さてさてさすがに今日の仕事は半日で切り上げて、これから孫とカニパーティー。カニカニ〜!という歓声が聞こえるようです。



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それでは皆様、良いお年をお迎えください。鬼が笑うといけませんから新年の構想発表は控えつつ、やりたいことが山積みなので、早々からトップスピードでスタートします。よろしくお付き合いのほどを。
店の前にある園芸売り場の賑わいから、はっきりと人々の心の復興が成されたことを感じつつ、この間に力尽きた命のひとつひとつが抱いていたであろう悲しさと悔しさに想いを馳せ、冥福を祈り、生き残った者のゴージャスなる特権を無駄にせぬためにも、笑顔いっぱいでの年越しをイメージして、では、これにてドロンいたします。


走り続けた2021年、駆け抜けた師走の空は穏やかで、
 アマテラスからの声援のようでした。
歳の納めの BGM はこれ。
レッド・ガーランドの右手に調子を合わせ、
軽やかな歩調のままでゴールテープを切りまする。

 
 




 

転石苔生さず

ライク・ア・ローリングストーン、転がる石のように。ご存知ボブ・ディランの代表曲のひとつです。
日本では「転石苔生さず」と申しまして、ああ川の流れのように(美空ひばり)、あの川の流れのごとく何かに身を委ねて(吉田拓郎) 、サラサラと軽やかに行けよという意味。ところがこの「転がる石のように」という教示の解釈がアメリカとイギリスでは正反対だそうな。



昨日は少し早めに帰って、今年最後の雑草取り。
昨年よりも勢いのないバラに強めの追肥をあげて、
一角には良い具合に茂ったホトケノザを残し、
春に向けての植替えまではできなかったものの
これで新年を迎えられます。
あ、部屋の大掃除は来年ということで、
あと数日、設計設計また設計。


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どう違うか、アメリカでは「苔生さないように転がり続けよ」で、イギリスでは「いつまでも転がってたら綺麗な苔は生えないよ、地に足付けて暮らすべし」。面白いですよね、歴史の浅いイケイケ大国と伝統重視のお国柄によるこの違い。
さてさて日本では、ぼくの認識ではアメリカンスタイルでした。でももしかしたらこれからは、地に足つけたイギリス的解釈が正しきアフター・コロナの心構えなのかも、などと思った次第。庭を楽しむ賢者たちに共通することとして伝わってくる、きちっとした感じはまさしくこれで、ちょっとやそっとでは足元が揺るがない。そして自分を世界の中心に据えておいて、半径5メートルに意識を持っている。そのエリアを暮らしのお作法や幸福だった記憶に基づいて整え、降り注ぐ幸福な光を遮る雲がかかれば移動するし、危険の種が入り込んできたら弾き出す。



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年の瀬に、やっぱり来たかとつぶやいてしまう第六波の兆しはあれど、地に足付けて半径5メートルの充実を図りましょう。もう大丈夫、当たり前に家族を愛し、暮らしを整え、健全な気持ちをキープすることが何よりの予防策であることに気づいた人たちで、今日も園芸売り場は賑わっています。


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はあ、ようやく来ることができました。ご近所さん教えてもらって、こちらに来れば庭のことをあれこれ教えてくれるって聞いたもんだから。先月来ようとしたら転んで顔やら腕やら傷だらけになっちゃって、たんこぶはできるしで、見た目が悲惨すぎるから外出せずに大人しくしていたんですよ。

そのお爺さんは杖を突いて、でもシャンとして店に入ってこられました。年齢は80代後半でしょうか。良い仕立ての洋服をとてもカッコよく着こなしています。

ご来店ありがとうございます。ご近所ですか?

磯子区です。車で来ました。家族には免許を返上しろって言われているんだけど、お役所からは最高齢運転者だってんで表彰されてます。こないだ無事更新が済んだし、まだまだ乗れます。

いやほんとに、安全運転してくださいね。で、庭のことですか?

はいはい、そうなんですよ。

そこから始まったのは、相談と言うよりは、庭があることでいかに来し方の日々が楽しかったかという庭談義。あれれ、話の内容が楽しくて、いちいちぼく好みにできすぎている。もしかして・・・

孫にホームページの開き方を教わって、あなたのブログも。で、一度お会いしたかったんですよ。庭ってのは本当に素晴らしいものです。あなたの庭観に共感しました。

アッチャー、それはそれはありがとうございます。照れます。

庭は植物のためではなく、人が幸せに暮らすための場所。おっしゃる通り。これからもお元気で、良い庭を作ってくださいね。

いやほんとに、身の置き場がないとはこのこと。高齢の紳士から褒めちぎられながら1時間ほど、ぼくの方が庭についての知恵をたくさん頂戴して、恐縮しきりの時間を過ごしました。

ではそろそろおいとまいたしましょう。楽しかった。

こちらこそ、ありがとうございました。気をつけて帰ってくださいね。

帰り際、紳士は驚きの一言を。

私、いくつだと思います?

80代かとお見受けしますけど。

ふふ、ふふふ、102歳になりました。なかなか死なない。まあ急ぐことでもないし、神様にお任せしています。

驚愕。呆然。あんぐり。じゃ、また遊びに来ますね!と、後ろ手に、杖を突いていない方を2度振って駐車場へと歩いて行かれました。しばし、幻じゃないよな、と自問しつつ、とても心地良い気分に浸りつつ次の設計に着手しました。



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102歳って、冗談だったのかな?どうもそうは思えないし・・・、まあいっか。また来て欲しいなあ、お爺さん。あ、これも読んでるかも。ご来店ありがとうございました。とても嬉しい時間でした。ぜひまたのお越しをお願いします。できればお孫さんの運転で。
102歳・・・冗談か、いや・・・まあどっちでもいいけど、お爺さんが発する独特なオーラに包まれて、忘れられない出会いとなりました。左手に握っている杖は奥様の形見だそうで、とは言っても「捨てるのはもったいないから使ってます。無くても平気で歩けるんですけどね、ある物は使おうと思って」と、サバサバしたものです。どんな人生を送ってこられたのか、次の機会があれば根掘り葉掘り伺ってみようと思います。西芳寺の如く美しい苔が生えていますね、お爺様。



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半径5メートル、直径10メートル。たくさんの美しき円が縁としてリンクしながら、街が輝きを増してゆく、そんなイメージで、素晴らしき2022年となりますように。





《A rolling stone gathers no moss.》職業や住居を変えてばかりいる人は、地位も財産もできないの意の英国のことわざ。 転じて、活発な活動をしている人は時代に取り残されることがないの意でも用いる。 転がる石にはは付かない。


 

Merry Christmas


 


メリークリスマス。みんな、ありがとね。また一年、いち日いち日丁寧に、元気で。ありがとね。



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さ、ラストスパート。聖なる夜の舞台となる庭を思い描きます。


 

シャ・ラ・ラ

今年は大家さん(うちの店がテナントとして入っているホームセンター)の意向に従い、ハロウィンもクリスマスも飾り付けせずにいました。開店以来初めてのことながら、時世を鑑み心の中で鈴の音鳴らし、年末進行まっしぐら。昨日はイブイブ今日はイブ、駅前広場や街並みのイルミネーションも少ないけれど、ケンタと園芸売り場の賑わいに幸せを感じています。いいもんですよね、家族を思い、コロナとか、なんだかんだあっても切り抜けて、愛する人たちと一緒にたどり着いたハッピー・クリスマス。


後藤さんちのクリスマスをたっぷりと。

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さ、今夜は孫たちとジングルベル。その時間まで、設計設計また設計。 


テレビ・ラジオから流れるマライヤ、ワム、達郎、ジョンと、
いつもなら「もういいよ!」と突っ込みたくなるクリスマスソングも
今季は少なめでしたよね。
そんな中でハッとした一曲。
そうか、これもクリスマスソングだったんだ。
いい感じ、いい感じ。








 

母から贈られたバラード

12月20日、大掃除もせぬままに仕事仕事で駆け続ける日々。「年末年始の休日を仕事に充てれば何とかなる」という気持ちの逃げ道は、すでに目一杯に積み上がったスケジュールで塞がれてしまいました。
ええい、ままよ! とにかく今日1日を、ペースを落とさず駆け抜けるのみ。



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幸いにして天気予報は晴天続きで、対して故郷の越後は猛吹雪。雪国育ちなもので、この冬型気圧配置をゴージャスに捉えて、太平洋側にいることの幸運に感謝しながらいくらでも今日へのファイトが湧いてくる。越後人は働き者と言われるがそれは関東人の評価であって、越後にいたら除雪作業に文句を言う者などおらず、夜明け前からスノーダンプを押してひと汗かくのが普通のこと。それに比べたら雪を踏まずに過ごせる晴天なんだから、大概の仕事は悦楽なのです。



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当時はなんとも思わずやっていた吹雪の中での現場作業。もう一度あれができるか?多分できる。傍目には信じられないほどの過酷な寒さも、やってる当人はそんなことは感じず、逆に、降る雪に包まれながらの型枠組みやコンクリ打ちや測量は、自分にうっとりするほどカッコいい情熱の作業なのですよ。



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陽だまりの横浜であの感じを思い起こしてみれば、仕事とは最高の娯楽なり。だから越後出身者は暇さえあれば働いている。ワーカホリック?違います。人生ホリック。

行ってこい、どこへでも行ってきなさい。
母ちゃん、お前のごたあ息子がおらんごとなっても、何もさびしゅうなか。
が、言うとくがなあ、なまじ腰をおろして休もうなんて思ったらつまらんど。
死ぬ気で働いてみろ、テツヤ。
人間働いて、働いて、働き抜いて、もう遊びたいとか、休みたいとか思うたら、その時は、死ね。
それが人間ぞ。それが男ぞ。
おまえも故郷をすてて都へ出て行く限りは、帰ってくるときは輝く日本の星となって帰ってこい。
行ってこい。行ってこい。



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今となっては随分と乱暴な昭和の仕事観なれど、いいんだよなあ〜。良いも悪いもそういう時代に育ったんだから、そのように、昭和の教えに従って残り時間を突っ走ります。時々帰省するたびに、笠智衆似のお爺さんが言ってたなあ「秀敏、仕事はあるか?」って。おかげで忙しいよと答えると、そうか、それならいい、と。 
さ、設計設計また設計。


出囃子は海援隊、じゃなくて、
ノスタルジーを今日のパワーに変換してくれる昭和のディーバで。



 

 

今年も年末限定クリスチャン

雨の朝、いつも通りにミーに起こされ薄暗い庭へ。さほど寒くない。
春とは違い、一輪一輪がとても長持ちをしているバラに敬意と感謝を込めて撮影。光が足りないため絞りを開放にしたら 、背景の街の灯がイルミネーションのように玉ボケして、しばし見惚れる。



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脳内劇場にはシャンシャンシャンと鈴の音が鳴り、続いてクリスマスソングが次々と流れてくる。
部屋へ戻ってパソコンと熱々のカフェオレを持って再び庭へ。
神聖な雨音と荘厳な第九をマリアージュして、今年も年末限定クリスチャンの始まり始まり〜。


 


園芸売り場の賑わいを眺めつつ、思えば昨年の今頃に比べたら、随分と人々の気持ちは明るくなりましたよね。たくましさとはパワフルなことではなく、花を愛でる時にささやかに発芽し、やがて心に開花するやさしさ、消えない灯火、そういう、なんと言いますか、愛なんでしょうね、愛。
愛、愛、愛、ぼくの母の名前は岩渕愛。旧姓では山之内愛。当時としては思いっきりハイカラで、前衛的なネーミングだったんだろうなあ。親父は、きっと照れくさかったんでしょうねえ、ずっと愛子って呼んでました。



詩篇84「巡礼者の聖なる地へのあこがれ」

主よ、あなたの庭で過ごす一日は千日にまさる恵みです。

そう思うのであらば、今すぐ家に帰りなさい。
汝は妻のために、子供たちのために、自身のために、その庭を花で埋め尽くすがよい。 




 

早朝のメール

本日も晴天なり。
昨日、早朝6時に娘よりメールが入る。何事か!と思ったら「今日は美空のお弁当作りで早起きしたよ。寒いけどお父さんも頑張ってね」てな内容。欧米か!照れつつ少し不思議な気分になる。なんとよくできた娘であろうか。不思議な気分というのは、こういうメールを普通に送ってくれる娘の感覚をぼくら世代は持ち合わせていなかったから。言わなくたって伝わるだろう、一を聞いて十を知るのが大人であって、家族に対して気遣いの言葉などを発するのはとても西洋的で、どちらかというと空々しいような感じさえ持っていた。
若いお客様と話していると、こういうのは娘だけでなく、広く世代的なものらしい。大人の威厳、親子の葛藤、上昇志向、体制との闘争姿勢、論争好きな権威主義やら同調主義やら、昭和時代は焼け跡からの復興、そして成長拡大一辺倒で、家族のカタチが少々イビツだったのかもしれません。
こうしてあらゆることが、時間をかけてゆっくりと幸福方向へと整ってゆく。娘世代から吹き込んでくる愛情表現の風に、お爺さんお婆さんは素直に帆を張ってみるのが正しき役回り。元々そういう感じに憧れながら、不器用に「愛している」を言いあぐねて過ごしたことの後悔も込みで。



忙しいのは一年中、忙しくないようじゃ会社が成り立たないよ。
そんな戯言も言えないほど12月は慌ただしく、
呑気に散歩をすることもなく仕事仕事で過ぎて行く。
だったらと、早起きをしてひと歩きと、
まだ薄暗い里山の森を行く。

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寒い。つべたい。

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歩く、歩く、歩く。

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明るくなってきて、リスの食事時間となる。
見回せば10匹ほどが木から木へ。

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やがて陽が射し霜が解け、葉っぱも体も血がめぐる。

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さ、仕事仕事。

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午前は現場回りと次の設計の測量作業。
午後は頭を切り替えて、設計設計また設計。

 
出囃子はこれ、Return To Innocenceで。

 


-献身

感情-想い

 

弱者たることに怖じけず

強者たることに奢らず

友よ 己の心を見つめるのです

それこそが自己への回帰

無垢への回帰


己が欲する時に 笑い

己が欲する時に 泣く

自己を偽ることなく

運命を信じるのみ

 

他人が何をどう言おうと

己の道を進みなさい

諦めず 機会に乗じ

無垢への回帰を図るのです

 

 それは終末の始まりではなく

自己への回帰

 無垢への回帰 
 


 

サークルゲーム

久しぶりの雨の朝、空気は湿気があるせいか冷たくはない。パジャマに上っ張りを羽織って庭へ。
天気予報では明日からまたしばらく穏やかな晴天が続くとのこと。



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まだ薄暗い庭の書斎に腰掛けて、パソコンを繋いで音楽を決める。師走だし、今年をちらっと振り返るのもいいかと思い、しばし目を閉じて黙考。ちらっとだけ、天気のことだけにしておこう。朝の庭時間は短いので。



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今年の空模様は、人を励まし続けていたような。夏が少々短くて、それに対応した植物たちの姿も込みで。熱海の土石流を人災に仕分けすれば、悪天候による自然災害はなかった。台風は何度もギリギリ逸れて、これも被害は出なかった。



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天気とは因果なもので、荒れればこぞって恐れられ、穏やかな時には誰も話題にすらしない。意識に入らないような静かな陽射しの日に、感謝するのは農家と、外仕事の職人さんと、庭ずきの人たちくらいのもの。平和とはそういう、意識の外にある、空気のようなものなのだろう。



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普通に、ごくごく普通に、安全で、不安なく、ご飯がおいしくて、家族が愛おしくて、どこも痛くない。その人を照らす太陽光と優しい空気の流れが「それでいいんだよ。それが大事なんだよ」と、今日もご無事で行ってらっしゃいと送り出し、お帰りなさい、いい日だったね、と迎えてくれるありがたさよ。



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長い長いコロナトルネードの末に、お天道様に感謝するような心持ちに行き着いた方々よ、よかった、本当によかった。もしも台風が荒れ狂っていたら、夏が灼熱で人がバタバタ倒れるようだったら、心の行き場を失うところでした。だから、ですね、今年の天気はぼくらを見守り励まし続けてくれたのだ、などと思う次第です。



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さ、今日は雨音を楽しみながら、設計設計また設計。明日から数日続く現場作業も、きっと天は我に味方してくれることでしょう。


 今朝選んだのは、映画『いちご白書』のテーマソング。
アップテンポでヒットしたバッフィー・セント・メリーもいいけど、
あえて作者のジョニ・ミッチェルで。
まるで別の曲みたいに歌詞が沁みてきます。


 


The Circle Game

ひとりの子供が好奇心と出会ったのは、ついこの間のこと

捕まえたトンボはビンの中

雷がとどろく空に怯え

流れ星に涙したのです


そして季節は何度もめぐっていきます

ペンキで塗られた子馬は上がったり下がったり

私たちは時という回転木馬に乗った捕われ人

戻ることなどできません

ただ、私たちが通ってきた足跡から、後ろを振り返るだけ

季節はめぐりめぐっては回り続けるのです

サークルゲームの中で


それから少年は10回の季節を駆け抜けて

その間に同じ数の清らかな氷の小川を滑りました

「大人になったらね」って言葉になだめられて

いつかきっと夢をかなえようと誓うのです


16回の春と16回の夏が過ぎていきました

おもちゃのカートは町を走る本物の車になります

季節たちが彼に言うのです

「ゆっくりと時間を楽しむのさ。今のうちだからね」

そのうちに足を引きずるようになるから

時の流れを遅くするためにね


そして月日は流れ、あの少年はもう20になりました

実現させようと抱いていた夢は少し輝きを失ってしまったけれど

新しい夢が、たぶんもっと素晴らしくて豊かな夢が

生まれるでしょう

最後の年が回転し終わる前に


そして季節は何度もめぐっていきます

ペンキで塗られた子馬は上がったり下がったり

私たちは時という回転木馬に乗った捕われ人

戻ることなどできません

私たちが通ってきた足跡から、後ろを振り返るだけ

季節はめぐりめぐっては回り続けるのです

サークルゲームの中で


 

夫婦漫才

ルージュピエール。一年中ぽつりぽつりと咲いてくれる庭のバイプレイヤー。昨夜の北風でさすがに葉の色が抜けて冬枯れに入ったニチニチソウと、真っ赤なルージュとのコントラストが素晴らしき朝でした。



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一般的にバラはある時期限定で壮絶に咲くイメージがあり、ぼくもそうだったので、最初の数年はこの花の咲き方物足りなさを感じていました。おまけに春はつぼみが鈴生りになるものの摘花をしないと開く前に腐ってしまうし、でっかいトゲで腕が傷だらけになるしで 、何度か、引っこ抜いて他のバラを植えようかなどと思ったこともありました。



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今はそんなことは思いません。毎朝毎晩、気まぐれにして奔放に咲く真紅の花がうれしくて。



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花は長く付き合うことで、気づかなかった魅力が膨らんでくるものですね。



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ご本人は大女優気取りを崩さずに、寒風の中でも誇らしげに真紅のルージュを引く。お付きの人(ぼく)は気を使いまくって、せっせと枝を整え寒肥を施す。



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こういう夫婦って多いですよね。うちもまさにこれでありまして、それは別に卑下することではなくて誇りです。大看板の座を譲ることのない大女優を咲かせ続ける名脇役が自分で、主役は歳を重ねて気づけば庭の、我が人生劇場の名脇役となっている。主役と脇役はメビウスの輪かウロボロスか、はたまた懐かしき昭和時代の夫婦漫才か。



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昔のお客様にお会いすると必ず「奥さんは元気?」と言われます。元気すぎて困りますよ、少し弱ってくれると助かるんですけど、と返して笑われる幸せよ。








 

冬の庭

晴天が続き、風も穏やか、コロナは沈静化、人々は師走ということもあって活性化、なかなかいい感じですよね。ひとつだけ困り事をあげるとしたら、相も変わらず、愛も変わらず仕事が溜まっており、しかも遅れ気味であるということ。以前なら打開のイメージとして「ああ、自分があと5人いたらなあ」などと思うことがしばしばでしたけど、この頃では思考が現実的になりまして、せめてあとひとり自分が存在していたらどんなに楽か、となりにけり。あとひとりということは自分が倍速で考え倍速で動けばクリアできるじゃないかと、それくらいならやれそうだ、などと思ってしまう。で、結局のところ慌ただしき師走の既定路線にはまり込むのであります。それはそれは朝から晩まで駆けっこしているような(実際にはほとんど座りっぱなし)気分で目まぐるしく日にちが過ぎてゆく。まあ、これでいいんですけど、突っ走ると転ける年齢ですから、庭にいる時間だけは時を忘れて過ごそうと心がけています。空気が澄んでいて、気持ちいいですよ、庭。


冬の光はイルミネーションのよう。

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ファインダー越しに、目から入って鼻に抜ける清々しさ。

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視覚を凝らすと嗅覚や味覚や触覚までもついてくる。

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冷たく澄んだ空気と陽だまりの温もりのマリアージュに、
せっかくなのでおでんの仕込み。

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冬の庭は格別なり。
 


焦らず騒がず穏やかに。
ブックエンドのように腰掛ける旧友同士みたいな庭時間。



 

さ、午後もひとっ走り、夜の庭まで。



 

脱出する言葉

明け方の強風でイチョウの葉が落ち道路には黄色い絨毯が。これで冬景色になるのかあ・・・そうだよなあ、今日から12月だもんなあ、などと焦り混じりの干渉、焦燥感ってやつですかね、胸がキューっとしました。いかんいかん、仕事が山積みなのに感傷的になってはいかん。これがぼくの弱点で、季節の変化にいちいち立ち止まってしまう。つまり移ろいに対して遅れ気味に、後追いで味わってしまうのです。振られた女性のことが忘れられないダメ男の典型のように。仕事はもっとドライに、クールに、シャープにこなさなくては社会の動きに遅れてしまうわけでして、過去に何度も何度も、この長すぎる休憩みたいなロスを楽しんでしまう悪い癖に抵抗してきたのです。
脱出せねば。さっさと抜け出しかけ出せる言葉を探します。もう残りひと月か、まだひと月あると思うのかという例のコップの水理論が浮かんだものの、ちょっと違うかな、気分回復に役立ちそうもないので中断。ここはひとつマハトマ・ガンジーで。明日死ぬかのように生き、永遠に死なないかのように学べ。これだこれだ。今日に全集中し、存分に師走のスタートを楽しむのだ。
ザクザクとイチョウの葉を蹴散らし歩きつつ、ふとモミジはどうかな、と少し遠回りをして数カ所をチェックしたところ、今が盛りと色づいた葉はしぶとく踏ん張って、我が世の秋を謳歌していました。永遠に落ちないかのような鮮やかさで。



毎年思う、なぜ散る前に燃え立つように色づくのか。
人智を超えた確かな理由があるに違いない。
或いは、人や動物にそう思わせることが生存に役立っているのかも。
不思議さを身につけ醸し出すことは、
自然界においては必須の能力ですからね。

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嵐はとうに過ぎ去り雲間から青空も見えています。さあ嵐のような仕事時間の始まり始まり〜。小さな設計が3つ、現場周り2箇所、夕方は訪問しての打ち合わせ。では早速設計から。



BGM はお気に入りのダンスナンバー、
チャーリー・パーカーによるビギン・ザ・ビギンで。

 





 
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