和ゾーンの植物をご覧いただきながら和の話を少しだけ。

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 日本にはもともと和風という概念は存在していなかったわけでして、日本人の暮らし方住い方が欧米的になったときに、いつの間にか消えてしまった昔の庭を、懐古的に和風の庭と称したのです。で、その現代人が懐古する和の庭は、今大半の人がイメージするより自由でかつ新しもん好きアバンギャルドでした。

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 例えば水戸藩の屋敷だった小石川後楽園などの大名庭園にはソテツやトウジュロやバショウ(バナナ)が植わっていて驚かされます。近年になって植えたとすればあまりに乱暴なことなので、おそらくは江戸時代にも植わっていたのでしょう。薩摩や奄美から船で運んできたのでしょうからこれはそうとうに酔狂なことです。

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 日本で一番有名な庭、京都の龍安寺の石庭はよく宇宙的とか言われますが、ガーデンデザインの視点で見ると洒落っけの宝庫、つくり手の山水河原者がにやっと笑っている様子が、数百年経った今でも目に浮かぶのです。どこに洒落っけがあるのかは長くなるのでまたいずれ。

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 後楽園や龍安寺に限らず、歴史的な古い庭を巡ると、必ず何か仕掛けがあります。そこを訪れた人を驚かせたり唸らせたり和ませたりする罠が、庭の随所にちりばめられているのです。
 いろんな方法で人の心を動かそうとする。これですこれ、観る人の気持ちを虜にして、揺すって、インスピレーションを与えること、これが古来からの日本の庭の主軸となる価値観なのです。そのために珍しい植物やガーデングッズがあれば取り寄せ、庭の仕立てに、縁側に座って語れるようなネタを潜ませておく。例えると猿之助歌舞伎や、テレビで言うと紳介やさんまのトーク番組みたいにエネルギッシュでフレッシュな場所が日本庭園なのです。

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 であれば、生活様式が洋になった今、本来日本人が持っていた庭の価値観を継承するならば、和をインスタレーションとして使うという感覚を持ってもいいんじゃないかと考えるのです。・・・つまり「和室の前だから和風に」という様式からの入り方じゃなくて、和を使うことで幼い日の記憶を呼び覚ましたり、歴史に思いを馳せるきっかけを作ったり、和テイストで何らかのインスピレーションを与えたり、そういう気持を動かし心に働きかけるために和を織り込むという使い方です。今は建物も庭もベースが洋ですから、かえって和は面白く使える。外国人が浅草で浴衣を買って帰って、リビングにタペストリーみたいに飾っている感じ、自由闊達に自由奔放に和を使いこなしましょう。