「人は草原を駆け回るシマウマではなくて、森に棲むサルなんです」
常連さんには「またその話か」という感じかもしれませんね。しょっちゅう使ってますからねこのネタ。

パーゴラって、昔、20年くらい前は意味が分からなかったんです。何のために必要なのかが。植物をからめる藤棚としてというのが一般的ですよね。だけど神保町で買いあさったヨーロッパの庭の本には、植物と関係なく使われているパーゴラが随所に出て来て、そのたびに「これは屋根でもないし、日よけでもないし、どういう意味があるんだろう」と、何年もそのことは未解決のままだったのです。

aba05e0c.jpg


そんなある日、テラスにパーゴラをつけたいという依頼がありまして、施工しました。今回と同じでリビングの外に椅子テーブルを置くスペースがあって、建物からそこにかぶるようにパーゴラを取付けました。作業が終わって、奥様がコーヒーを出してくださって、パーゴラの下の椅子に腰掛けて一口飲んだ瞬間に、パーッと長年の謎が解けたんです。「これなのか!」と。落ち着くんですよ。自分より高いところに何かがあると、とっても落ち着くんです。思いましたよ「ぼくはサルなんだなあ」。
空間構成的にいうと、自分がいる空中に壁と屋根の骨組みだけを設置することで、空間が仕切られて、まるで室内にいるような居心地のよさが生まれる。ということなんですね。


1db11780.jpg


草原で暮らすシマウマは物陰からライオンが襲ってくることをさけるために、360度見渡せる場所で暮らしています。サルは草原にはいませんよね、森の中で暮らしています。木のほこらや岩陰や、そういう隠った場所で身を寄せ合うようにして生きています。『家』があるんですよね。そして人間はシマウマじゃなくてサルなんですねえ。隠るのが好きなんですよ人間って。
庭の居心地をよくするためにこの習性を利用します。頭上に枝がかぶってくるような木を植えたり、背丈より高い塀やトレリスを配置したり、パーゴラもそういう効果を狙ったものなんです。

隠る、物陰に隠れる、自分より背の高い何かがある、すると居心地がよくなってそこに人が集まってくる。これを庭に当てはめて考えれば、「眺めるだけだった庭」が「人が集う庭」に変わりますよ。

67845327.jpg


そうやってできあがった落ち着ける空間に、シエスタベンチ。

852e137c.jpg


いいでしょうこれ。ここで昼寝したら、気持ちいいだろうなあ。

09a27b08.jpg


テラスの左右に設置したマリンライトが情緒たっぷりに灯る頃まで、春の空気を感じながら昼寝がしてみたい。そうしたら全身の疲れが消えてなくなると思うんですよね。いいですよね昼寝。何年もしてないなあ。

268814d8.jpg

db6df9e9.jpg


夕暮れから夜のテラスの様子も撮影してありますので、後日ご覧いただきます。夜もまたいいですよ。