撮影途中で、奥様がお茶を入れてくださいました。


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一口飲んで「うまい!」と。ちょっと驚くほどの美味しさ。
そうでした。奥様は静岡出身なのでした。

ぼくの実家はいろんな商売をしていて、そのひとつがお茶の小売りなのです。
幼少時の記憶です。
静岡からやってくるお茶の問屋さんが、大きなカバンからいくつかのお茶のサンプルを差し出します。それを祖父が味見をするのです。一品ごとに丁寧に入れて味わう。そして気に入った銘柄を仕入れます。
祖父の隣りにちょこんと座ったぼくも、その味見の儀式に参加していました。さすがに意見を言うことはありませんでしたが、祖父がどのお茶を選ぶのかに興味津々。クイズ番組のようなものです。

味見の儀式では、そのお茶の特性を見極めるために、ぬるめの湯で、じっくりと、しっかりと出します。それは一般的には濃すぎるお茶。その方がお茶の味や香りや渋みを、的確に判別できるのです。
奥様が入れてくださった本場仕込みのお茶を一口すすった瞬間に、その儀式の時の濃いお茶、もう40年以上前の味の記憶がよみがえったのでした。「うまい!」と。

撮影を中断して、ご夫婦とひとしきりお茶飲みばなしになりました。


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冬なのにポカポカと暖かい陽射しの中で、設計から完成まで、何度もイメージしていたその場所の居心地の良さを実感するひと時でした。いろんなことがうまくいきました。オッケーです!


ちょっと鉄の味がする水道水が好物のご主人。
本場仕込みのとびきり美味しいお茶を入れる奥様。
柔らかく暖かい陽射し。
磯子の海から聴こえる汽笛。
おふたりに庭の出来映えをほめていただいて、誉れな気持で、冬の午後のティータイムを楽しみました。

いやあ、いい時間でした。