ぼくらの世界と昆虫たちの世界は、同じ地上にありながら別世界のようであり、そこは観察すればするほど「楽園」のように思えてきます。
蜜を求めて夢中で花から花へと飛び回る姿に「生きる」ことの美しさを発見し、その瞬間に魂が彼らに乗り移って、自らがその世界を飛んでいたります。



昆虫は楽園の住人
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彼らには、いつもふんだんに食料があります。
自然とはそういうもので、季節のタイムスケジュールと多くの生物のライフサイクルを組み合わせて、それぞれの生物に、そのつど必要充分以上の糧を用意しているのです。
だから彼らは奪い合うことも、肥満するまで食べ続けることもありません。



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ぼくらにあって、彼らにはない概念があります。
それは「死」ということ。



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彼ら昆虫は死ぬということがわかっていないのです。わかっていないから恐れることもなく、明日への不安もなく、ひたすらに今を生きている。



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対してぼくら人間は、脳の発達によって「死」を知ってしまいました。
だから悩み、恐れおののき、むさぼり食い、奪ってまで蓄え、楽園とはほど遠い失楽園の世界を生み出してしまいました。



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悲しいことではありますが、でもその代わりに、楽園を失った代償として、人間は 「愛」を手に入れました。
命に限りがあることを知っているからこそ愛情が育まれ、今日という日を愛おしく思い、家族や隣人や動植物や自然を愛おしく思うのです。

失楽園に生きるぼくらの楽園は、愛情(心)の中にある。



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ぼくら脳が異常発達してしまったヒトという名のゴリラは、悩みながら、苦しみながら、愛情という糧を探して歩き続ける生き物なのです。
そして昆虫たちにふんだんに花の蜜が用意されているように、ぼくらの中にも周囲にも、有り余る愛情が存在しています。



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愛こそがすべて。
失楽園に生まれたゴリラとしては、脇目も振らずに、ただひたすらに愛に生きましょう。
それが最も人間らしい生き方であり、そうやって日々を送りながら人生を全うすることが、自然界にいい影響を与つつ自らも地球上に幸せな時間を刻める、ぼくらに与えられた唯一の道なのです。

花を撮影中に、ファインダーに飛び込んできたアブの姿に感動しつつ思ったことでした。