ドーナツの穴。どう、夏のあなた。
世の中には「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」を大真面目に研究している人たちがおるそうな。哲学?物理学?あるいは神学の範ちゅうだろうか。よくわからないが、確かに存在しているのに実体がないというもののはある。ある?ある。ドーナツの穴は確かにあるのだ。
漠然とした不安、合理的理由なき憂うつ、改善する意思のない、つまりは不満を抱くために存在させている庭への不満など、それらは不在によって存在の定型を規定しているドーナツの穴。本質主義もしくは現実主義と実存主義とをつなぐあなどれない穴の正体を解き明かそうという試みこそが、ドーナツの穴であるとも言えるのだが、その手の探求は学者各位に委ねておくのが良かろう。穴は人を文学的にする。穴を見つめ続けていると本来的に娯楽であるところの文学を哲学化するという脳の病に侵され、創作と自己の捜索が倒錯を起こしてわけわからなくなって、芥川龍之介や太宰治や三島由紀夫がそうだったように、大方は銀河鉄道でカンパネルラが指差した漆黒の穴へと身を投じたい衝動が抑えきれなくなるからだ。
その危険な穴を消すにはそこを穴埋めするか、外輪を食べてしまうかのいずれかだ。あ、ドーナツの穴だけ残して食べる方法は存在しないという立場をとればだが。
穴埋めするためには、まずしっかりとした底を設けなければならない。まな板か皿の上に置いてからじゃないと、いくら詰め物をしても底抜けになってしまって切りがなく散らかるばかり。底とは足元に広がっている今日というフィールドであり、掛け値も悲観もなしに現実が見えているということなのだが、ある人にとってはいとも簡単でありあって当たり前だから考えたことすらない底の存在が、大概はその楽観主義者と同居している悲観論者にはかいもく理解できないということが起こりうる。夫婦とはそのように、対極に陣取りたがるからだ。明けても暮れてもいつまで経っても文句を言いつづけている状態、心配性とか不安症とか不満性とかは、生真面目でやさしい性質の女性に起こりやすい。 だからぼくは庭を不満のための場所にしていることの不満を相談に来られた方には外輪を食べてしまうことをお勧めしている。理由は単純明快で、ドーナツはおいしくいただくために存在しているのだから。そして庭は、人生の意義であるところの幸福感を高めるために存在せしめない限り価値を持たない場所なのだから。
テレフォン人生相談の豪傑名物解答者、三石由起子がよくこんなことを言う。
あなたねえ、頭悪いのよ。そんなに明日のこと心配したってしょうがないでしょ。明日なんてね、今日の向こうにあるもので永遠にやって来ない。やって来ないことを不安がってたら今日が楽しくないでしょ。明日は来ない。絶対に来ない。うだうだ考えるのをやめにして、今日を楽しんでください。おいしいものでも食べて、笑って過ごしましょう。
こんなことも言う。
あなたねえ、頭悪いのよ。そんな過ぎたことをくよくよしててもしょうがないでしょ。いっくら悔やんだって過去には戻れないんだから。戻れないことを悔やんでいたら今日が楽しくないでしょ。過去には戻れない。絶対に戻れない。うだうだ考えるのをやめにして、今日を楽しんでください。おいしいものでも食べて、笑って過ごしましょう。
どちらも同じ論拠、すっかり穴に魅了されて外輪が見えなくなり、実態を持たぬ穴に棲みついている悪魔によって羽交い締めにされている人の、幽霊のように浮き足立ったその足を地につけるために「頭悪いのよ」と強めの言葉を用いて上から地面へと押さえつけているのだ。
そしてこれも定番のお言葉。
君子は豹変す。知ってる?賢い人ってのはコロコロ変わるんだから。悔い改めようと思ったらすぐに変わりなさい。もうコロッコロ変わって、なりたい自分になってください。昨日もない、明日もない、どんなに不遇でも笑ってる人は笑ってるでしょ。今日が幸せなら幸せな人生です。
三石先生、ステキ。一体どんな魅惑的なお方なのかとググってみたら、とっても福々しい、ドーナツをパクパク食べまくっていることが明らかな恵比寿顔の方でした。
世の中には「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」を大真面目に研究している人たちがおるそうな。哲学?物理学?あるいは神学の範ちゅうだろうか。よくわからないが、確かに存在しているのに実体がないというもののはある。ある?ある。ドーナツの穴は確かにあるのだ。
漠然とした不安、合理的理由なき憂うつ、改善する意思のない、つまりは不満を抱くために存在させている庭への不満など、それらは不在によって存在の定型を規定しているドーナツの穴。本質主義もしくは現実主義と実存主義とをつなぐあなどれない穴の正体を解き明かそうという試みこそが、ドーナツの穴であるとも言えるのだが、その手の探求は学者各位に委ねておくのが良かろう。穴は人を文学的にする。穴を見つめ続けていると本来的に娯楽であるところの文学を哲学化するという脳の病に侵され、創作と自己の捜索が倒錯を起こしてわけわからなくなって、芥川龍之介や太宰治や三島由紀夫がそうだったように、大方は銀河鉄道でカンパネルラが指差した漆黒の穴へと身を投じたい衝動が抑えきれなくなるからだ。
その危険な穴を消すにはそこを穴埋めするか、外輪を食べてしまうかのいずれかだ。あ、ドーナツの穴だけ残して食べる方法は存在しないという立場をとればだが。
穴埋めするためには、まずしっかりとした底を設けなければならない。まな板か皿の上に置いてからじゃないと、いくら詰め物をしても底抜けになってしまって切りがなく散らかるばかり。底とは足元に広がっている今日というフィールドであり、掛け値も悲観もなしに現実が見えているということなのだが、ある人にとってはいとも簡単でありあって当たり前だから考えたことすらない底の存在が、大概はその楽観主義者と同居している悲観論者にはかいもく理解できないということが起こりうる。夫婦とはそのように、対極に陣取りたがるからだ。明けても暮れてもいつまで経っても文句を言いつづけている状態、心配性とか不安症とか不満性とかは、生真面目でやさしい性質の女性に起こりやすい。 だからぼくは庭を不満のための場所にしていることの不満を相談に来られた方には外輪を食べてしまうことをお勧めしている。理由は単純明快で、ドーナツはおいしくいただくために存在しているのだから。そして庭は、人生の意義であるところの幸福感を高めるために存在せしめない限り価値を持たない場所なのだから。
テレフォン人生相談の豪傑名物解答者、三石由起子がよくこんなことを言う。
あなたねえ、頭悪いのよ。そんなに明日のこと心配したってしょうがないでしょ。明日なんてね、今日の向こうにあるもので永遠にやって来ない。やって来ないことを不安がってたら今日が楽しくないでしょ。明日は来ない。絶対に来ない。うだうだ考えるのをやめにして、今日を楽しんでください。おいしいものでも食べて、笑って過ごしましょう。
こんなことも言う。
あなたねえ、頭悪いのよ。そんな過ぎたことをくよくよしててもしょうがないでしょ。いっくら悔やんだって過去には戻れないんだから。戻れないことを悔やんでいたら今日が楽しくないでしょ。過去には戻れない。絶対に戻れない。うだうだ考えるのをやめにして、今日を楽しんでください。おいしいものでも食べて、笑って過ごしましょう。
どちらも同じ論拠、すっかり穴に魅了されて外輪が見えなくなり、実態を持たぬ穴に棲みついている悪魔によって羽交い締めにされている人の、幽霊のように浮き足立ったその足を地につけるために「頭悪いのよ」と強めの言葉を用いて上から地面へと押さえつけているのだ。
そしてこれも定番のお言葉。
君子は豹変す。知ってる?賢い人ってのはコロコロ変わるんだから。悔い改めようと思ったらすぐに変わりなさい。もうコロッコロ変わって、なりたい自分になってください。昨日もない、明日もない、どんなに不遇でも笑ってる人は笑ってるでしょ。今日が幸せなら幸せな人生です。
三石先生、ステキ。一体どんな魅惑的なお方なのかとググってみたら、とっても福々しい、ドーナツをパクパク食べまくっていることが明らかな恵比寿顔の方でした。
エルヴィスの死因は心筋梗塞とされています。
どう見ても肥満によるものだったわけですが、
その原因を、当時マスコミはドーナツの食べ過ぎだと喧伝流布しました。
でもそれは違います。
実際はピーナッツバターの食べ過ぎだったのです(これ、ほんと)。
そんなのどちらでもいいとお思いでしょうけど、
ファンにとっては重大なことだった。
王様が汗を滲ませ息絶え絶えに歌う羽目になった原因を
ドーナツと結びつけるなんて、
ドーナツファンは黙っちゃいられかなったのです。
あ、ぼくはエルヴィスファンでもあるので、
あの日から一度もピーナッツバターを口にしていません。
享年42。月並みに過ぎる言葉ですが、早すぎましたよね。
気づけば、ぼくはすでにエルヴィスよりも16年も丸儲けしている。
夜の庭でドーナツパクパク食べながら。
寝る前の甘いもの、やめられまへ〜ん。
どう見ても肥満によるものだったわけですが、
その原因を、当時マスコミはドーナツの食べ過ぎだと喧伝流布しました。
でもそれは違います。
実際はピーナッツバターの食べ過ぎだったのです(これ、ほんと)。
そんなのどちらでもいいとお思いでしょうけど、
ファンにとっては重大なことだった。
王様が汗を滲ませ息絶え絶えに歌う羽目になった原因を
ドーナツと結びつけるなんて、
ドーナツファンは黙っちゃいられかなったのです。
あ、ぼくはエルヴィスファンでもあるので、
あの日から一度もピーナッツバターを口にしていません。
享年42。月並みに過ぎる言葉ですが、早すぎましたよね。
気づけば、ぼくはすでにエルヴィスよりも16年も丸儲けしている。
夜の庭でドーナツパクパク食べながら。
寝る前の甘いもの、やめられまへ〜ん。
今日は港南台店にいます。