飼っていたハムスターが思いがけず病死し、数日間悲嘆に暮れている夫婦がいる。ペットロスのダメージは、それが犬であろうと猫であろうと、小鳥や爬虫類でも同じで、家族を失った等しい深さと重さで心を支配し、それが去るのには時間の経過を中腰で凌ぐしかないものです。ぼくはその、悲しみの傷口がまだヒリヒリしているご夫婦と庭の話をしながら、なんて普通な精神を持った人たちであろうかと、普通であることはなんと美しいのだろうと、小さな命の灯火が消えてしまった悲しみをふたりで分かち合うことで癒そうとしている姿から、清々しい感動を得たのでした。



雨に負けぬ花、カシワバアジサイの清らかさたるや。
梅雨って癒やされますよね。


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録画しておいた『 ホンマでっか!?TV 』からの情報。10年前の離婚理由は、1位が性格の不一致で、2位が異性問題だったそうです。そして現在は、1位は同じく性格の不一致でした。性格の不一致、分かったような分からないような。でも世の中に単純な離婚などなく、それぞれに分かったような分からないような苦難の末に導き出した選択なのでしょう。問題は2位です。かつては不倫だの浮気だのということがトラブルの原因だったのが、なんとなんと、今時の離婚理由第2位は、妻のモラハラだそうです。



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妻のモラハラ。モラハラ、モラルハラスメント。モラル(独自の狭義的正論)を盾に相手を責め立てる奥様と、その情け容赦のない非人道的空爆を避けることに必死で、日々柔らかく微笑みながら、気配を消すように暮らしているご主人、というパターンはとても多い。あまりに多くて、まるでそれが普通のことであるかの如くに、男は家庭内で、常に妻の現在地と機嫌を気にしながら忍び足で家事をこなし、ゴミ出しをしをする。たまの妻の不在時にはスーッと胃の辺りが楽になって、嬉々として子どもやペットとの幸福なるひと時を味わう。



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かつて19世紀中頃のフランスにて、ペストの流行と政情不安から画壇にバルビゾン派が興りました。ルソー、ミレー、コローなどが、それまでの浪漫主義へのカウンターカルチャーとして、現実主義と呼ばれる、田園風景や地道な農民の祈りの姿を描いたことに似て、家庭が戦火に編みれた後には落ち穂拾いをする男どもの姿が涙を誘う。男のロマン、男の枕詞であったロマン。恋愛、成功、生きがい、その中心に幸運の女神として据えたはずの妻からスタボロに傷付けられる現実。めぐるめぐるよ時代はめぐる。一周回って、何周も回って、現在は男たるもの現実に呆然としつつバルビゾン派となり、庭で自然に癒されるのがスタンダードとなりました。



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人の夢と書いて儚い。昭和の男どもが抱いていたロマン主義とは儚いものなのか。否である。女性たちよ、そろそろいい加減に目を覚ますがよかろう。今は時代の巡りでこのようなことになっているだけであって、その忌まわしき依存的敵意なんぞを振り回している限り、あなたに幸福はやってこないのです。損ですよ、損。お得が大好きなあなたが大損覚悟で亭主を責め立てているとは思えず、ただの時代的狂気ウイルス、ジェンダー平等の呪いに羽交締めにされているだけのこと。昭和の女が大っ嫌いだった概念、良妻賢母こそが、今こそ幸福行きの片道切符だと思うのですが。



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ごく普通に、小動物の命に愛おしさを感じ、悲しみにはごく普通に慰め合い、ごく普通に愛し合う夫婦がスタンダードになるような時代の巡りを待っているのです。そんな日が来たら、間違ってもあのような戦争など起こらない。夫婦円満は最良の平和運動であり、あらゆる幸福実現の大前提ですから。どうです、この理屈。女性達がテレビから仕入れたであろうモラルという正論、主義主張、それを武器にして家庭を破壊する愚かしさよ。一番大事にすべき者を仮想敵に仕立て上げてバランスを保とうとする、それはプーチンや北のミサイル将軍と同じ、狂気の領域であることを自覚してほしい。



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「誰のおかげで食えてると思ってんだ」昭和男の典型的なモラルハラスメントでした。現在の離婚理由の2位が妻のモラハラ、これが昭和男への復讐であるとすれば、やはり戦争と同じ構図になってしまいます。復讐することの結末はいつの世も同じこと。だからキリストは言ったのです、あなたは決して復讐などに手を染めてはいけない。復讐するは我にあり、と。正論と正論で泥沼化する戦争は、実はいとも簡単に終わらせることができる。その方法は、ごく普通に愛し合う夫婦が、笑顔が溢れる花いっぱいの庭が、幸福に満ちた家庭が常識(モラル)になること。


この曲に燃えた少年時代。
今聴くと、これ、軍歌ですよね。
馴染まない、っていうか、微妙に嫌な気持ちにまで。



梶原一騎、大好きだったけど、
今思うとですね、ある意味異常な人でした。
これまた青春の入り口で心酔した、三島由紀夫もそうだったなあ。
つまり突出したヒーローはどこか病んでいて、
時代もまた常に少しだけ病んでいて、
その中で正常を保つ者だけが幸福に至るのです。
 行け行け飛雄馬、どんと行け。
ただし、勝利の栄光ではなく、ごく普通の幸せ実現に向かって。
狂気の空爆をかわし生き延びて、
雨に打たれて咲き誇る花の如くに清らかに咲け。
それが戦時下に必要な愛情ですよ、愛情。