この頃、10年以上前に庭をやらせていただいたお客様からの連絡が立て続いています。古びて不具合が生じ出した庭のメンテナンス、リフォーム、リニューアル。壊れかけのファニチャーを新調したり、シエスタベンチを補修し塗装をしたり、大掛かりにウッドデッキを取り壊して、当方お得意のタイル張りバーベキューテラスに大改造したり。



夏、始まりました。
庭仕事が楽しい楽しい!


DSC08615



 十年一昔、年月の記憶が刻まれた懐かしき庭との再会。そこには積み重ねられた幸福な時間が刻まれています。それを感じる度合いは、きっとお客様よりもぼくの方が何倍も大きいに違いない。かつてゼロから、その空間に理想の庭を思い描いて、現実に出現させた者に与えられたご褒美のようなものです。



DSC04260



 ゼロから生み出すこと。音楽家にしろ画家にしろ、後年に渡って高い評価を受けているアーティストは例外なく、それまで現世に存在していなかった何かを生み出した人たち。ラベルのボレロがそうだったように、発表時は賛辞と非難の大嵐だったのが、時を経るほどに「崇高なる領域に誕生した奇跡の芸術である」と評される。その生き様は、かの聖者となったカモメ、ジョナサン・リヴィングストンのごときなり。



DSC08373



 純粋無垢に、自分に正直に、ひたすら生きることの意味を追求し続けた変人カモメのジョナサンは、その奇異なる行動で群れから追放されました。彼は流刑地から遥か遠くまで飛び続けて天国へと至るのです、が、物語上ではどこからが天国なのか、つまり死の描写がないのです。年月が流れ、かつて仲間たちから非難された彼の飛行術が持つ「生きる意味」に気づいたカモメたちは、ジョナサン・リヴィングストンを神格化します。これによって彼は、聖なるカモメとして永遠の命を与えられたのでした。ただし、当人はそんなことなど気にかけることもなく、天国で、若き日と何も変わらずに、より高度な飛行法を学び続けて四苦八苦しているわけですが。つまりは、天国とはボケーッと過ごす安住の地ではなく、人生理念に基づく修行を継続する場所。そのように解釈すれば、ひたすらに生きる、生き切ることができる気がするのです。



DSC08389



 夏まゆみ、ジョナサン的なる夏の旅立ちに敬服しきり。創造者の人生に終わりなし。