庭を楽しく美しく維持するために必要な、いくつかの事柄を示せ。
 このような何らかの事象に至る要因を列挙せよ、という設問には、並べれば百も二百も出てくるし、YouTubeで流行りの「〇〇を実現するたったひとつの方法」みたいに、ズバリ言うわよ!と、象徴的に結論めいた一言を掲げることもできる。だが前者はピントがぼやけて本質を表せなくなり、後者の場合はその後に誠実にして丁寧な解説を添えない限り、詐欺師お得意の騙りのような印象を与えてしまう。
 バブル後に起こった社会的価値観及び個人的人生理念の崩壊と、再生への彷徨い。善良なる人の群れは、羊に似て、ただただリーダーを求めて、いまだに安全を確保さえれた柵の中でぐるぐると渦を巻いている。彼らは越し方で「ブルーオーシャン戦略」や「100匹目の猿」といった書物など読む機会がなかったのかもしれない。もしかしたら聖書すら手に取ったことがない可能性がある。
 あ、それでいいのです。それは幸いなること。バイブルを熟読して得られる幸福感は、背景として、土台として「人生とは辛く悲しく虚しく儚い時間のことなのだ」という世界で救済を求める民を心地よく折伏するために、イエズス会が仕立てた寓話の類いなのだから(古事記・日本書紀と同じく)。背景がそうである限り、民はそのように、辛く悲しく虚しく儚いと定義された世界から一歩も抜け出せない。ただそこで無闇に己を鼓舞し、家族で気分を励ましながら生きて、静かに人生を終えるしかないのである。アーメン。賢者に神の祝福あれ。
 現世・・・善良にして神聖なる羊の群れは、こと庭に関して言えば、だが、今も混乱しながら行き先の見当がつかないままで彷徨いを続けている。待てど暮らせど現れないモーゼ。だったら・・・
 

春雨混じりの散歩道、
なんとなんとユキヤナギが咲いていました。
ということは、一週間後にサクラ咲く。
ちまちまとした人の思惑をよそに、季節はダイナミックに巡っておりますなあ。
豆粒ほどに小さい花が、威風堂々と咲く姿たるや。


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 朝からそんな愚にもつかないことをつらつら考えながら、ぼくは本日64歳になったのです。なったのです?そうですか。そうなんですか、本当に?「なったんだそうです」という言い方の方がしっくりくるほどリアルな実感を伴わないわけでして、まあ、こんなものなのでしょう。こんなものであってもなくても、63歳として過ごした時間が有意義なものであってもなくても、着実に年齢はカウントされてゆく。弱気な自分はトホホと嘆き、強気な自分は「急がねばなるまい!」と気合いをいれる。



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 強気な自分を励ますのが正解であることは明らかなのである。



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 弱気界と強気界を行きつ戻りつ、数年単位で俯瞰するなら弱気な自分が優勢だったことは否めない。エエカゲンニセナアカンヤロ。「庭を楽しく美しく維持するために必要な、いくつかの事柄を示せ」という自問・設問・オブジェクションに対して、即座に澱みなく三つの回答を並べることができるのが強気で前向きで有能感に満ちた自分の状態だったのだ。だから、今日、そこを目指してギアをリバースに入れる。そしてアクセルを踏み込みハンドルを切って、元気いっぱいだった自分の追跡を開始するのだ。そして必ず、ヤツを追い抜いてみせる。



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 ちなみに今夜は、孫の美空の卒園祝いとな兼ねて、ぼくのバースデイ・パーティーをやってくれるとのこと。感謝。電チャリでハングリータイガーの急坂を漕いで馳せ参じる。楽しみだなあ。 
 
本日の出囃子は、音大生の習作(なのかな?)で、気に入って繰り返し聴いていたこれを。
彼のインタビューも。若さいっぱいなマエストロに励まされる64歳最初の朝。





橋口 幸寿 (はしぐち ゆきひさ) [大3年]

東京都出身。 作曲を久木山直氏、高木洋氏、渡辺俊幸氏、松浦真沙氏の各氏に師事。 劇伴音楽、歌モノ、エレクトロニカ他、様々なジャンルの作曲を好む。 好きな作曲家はジョン・ウィリアムズ、トーマス・ニューマン。 好きなアーティストはBUMP OF CHICKEN、古川本舗、i am robot and proud。 趣味はゲーム、散歩中の音楽鑑賞。

 

——今回の音デオケは”未来”というテーマですが、どのように連想して作曲しましたか?

橋口「未来って言ったら”明るい未来”というイメージがあると思うんですけど、それと同時に、恐らく誰もが感じるであろう”不確かな未来への不安”っていうのもあるじゃないですか。この曲は、突如として襲い来る不安感という実態のない敵に追いかけ回されるも、最後には打ち勝ち、見事に脱するというストーリーとなっています。」

——曲を聴いて凄い未来感を感じたのですが、何か工夫などはありますか?

橋口「僕自身、スターウォーズを見たり音楽を聴いたりしているんですけど、ジョン・ウィリアムズの曲ってやっぱ未来感を感じるんですよね。例えば、低音でCのコードを鳴らして高音でDのコードを鳴らすポリコードとか、sus4のコードなどを使ったりとか。そういう、自分が未来だなと思うコードを取り入れましたね。」

——曲に疾走感があったり、壮大さがあるの良いですよね。

橋口「そうですね、さっきのスターウォーズの影響もあるんですけど、宇宙船が飛行していたり、敵と戦うシーンがあるじゃないですか。そういう情景も書きたかったし、例えば最初の弦楽器の刻みとかの工夫も、そういう疾走感や浮遊感に繋がってきますね。」

——ダークな展開って、どのように作られているのですか?

橋口「よく映画音楽の作曲であるんですけど、クラスターハーモニーと呼ばれる半音のぶつかりや、短3度という不安定な音程を使ったりなど、人が聴いて怖いと思うような音使いにしました。」

——この曲の聞き所はどこですか?

橋口「全体的な情景はそうですし、”先に進むような未来さ”と”敵と戦うようなダークさ”の二面性を楽しんで頂きたいですね。」

——作曲活動はいつから始めているのですか?

橋口「高校の時、DTMゼミみたいなのがありまして、最初は打ち込みでインスト曲を作っていたんですよね。作曲を進めていく中でいろいろな音楽を聴いてきて、大学2年生からオーケストラを作りたいと思って、こういう劇伴の方向に行きました。」