いつまでも秋めかなくて「今日も暑いですねえ」が挨拶の定型句。ところが散歩道で見上げれば、イチョウは例年以上に実を付け、実りの秋の準備万端なのです。



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 農協にお勤めのお客様によれば、今年は茄子の出来がとても良かったとのこと。稲刈りが始まった故郷魚沼のコシヒカリも、今年は最高の出来だったそうです。



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 ぼくらは天候不順をついつい気候変動と結びつけてイメージしがちなだけで、植物にとってはあの猛暑も、終わらない夏も平気の平左、ごくごく普通のことと捉えているのでしょう。つまり、状況の変動に対する対処の幅がぼくらよりも大きいんですよね。アマテラスの尺度と申しましょうか。「ちょっと暑いくらいで、何をオタオタしとるのだ人間どもよ」と、草花に笑われているかもしれません。



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 気候がどうであれ、ぼくらにできることはその変化に適応することだけ。散歩道ですれ違う顔馴染みの奥様が「これが普通の夏になるんですかねえ」と声をかけてきました。「うちらは死んじゃうんだからどうでもいいけど、子どもたちに悪いことした気がして・・・」。奥様、素敵!何という美しい見解でしょう。全くその通りです。ぼくら世代がしでかしたこと、あるいは修正できなかった(しなかった)ことなんですよね。それでも今さら何ができるわけじゃなく、ただ賢くこのタイプの夏を楽しむ姿を子どもたちに見せておかなければ、という結論で、じゃ、と、それぞれの方向に歩きました。



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 縁側で食べたスイカ、素麺、シャービック。蚊帳を吊って、夜風を入れて寝たお盆の頃の記憶・・・孫たちに夏の情緒を伝えたい、などと思うは昭和生まれのノスタルジー。彼女たちには今風の、夏の幸せな記憶が積み重なってゆくのでしょう。ただ、その演出くらいはしてあげたいなあと、折々に夏野菜を届けたり、外遊びに誘い出すジイジくんなのであります。



ノスタルジーとは、個人的な幸福の記憶。
その貴重さが、年々重みを増してゆく。